昭和30年代って、どんな時代?
昭和30年代は、西暦にして1955~64年。つまり、第二次世界大戦後10~20年経った頃。そう、アニメ『となりのトトロ』に描かれた、サツキとメイの子供時代です。戦後の混乱と復興も一段落し、世の中はようやく落ち着きを取り戻してきました。アメリカからは洋風の生活様式の影響を受け始め、次々に現れる家電や新製品に、誰もが胸を躍らせ、活気に満ちています。
しかし一方では、まだまだ自然環境は豊かで、人々の暮らしぶりは、今に比べてのんびりしたものでした。
昭和30年代のライフスタイル
半世紀近く前とはいえ、すでに当時テレビもあれば冷蔵庫も洗濯機もあったんですよ! 昭和30年代は、現在の私たちの生活の原型ができた時代と言ってもいいかもしれません。ただ、家電の普及率は今ほど高くはありません。ですから、暮らしはこんな風でした‥。
お宅にあります? これが「タライ」(c)「はすぴー倶楽部」はすぴーさん(昭和の日常博物館) |
・冷蔵庫は電気式よりも、氷を使って冷やす「氷冷却方式」(アイスボックス)が主。夏のスイカは、縄で縛って井戸の中に吊るしたり、ビールは桶やタライに水を張って冷やした。タライは、洗濯にも使えば行水にも使う、大活躍の生活ツール。
実はちゃぶ台は丸より四角が多かった(c)「はすぴー倶楽部」はすぴーさん(大宮博物館特別展) |
・電気釜もガスコンロも登場していたけど、ファストフードはまだなく、インスタント食品もあまり馴染みがなかった。食事は低脂肪の和食=「粗(素)食」がメイン。生活習慣病とも肥満とも無縁だった。
・30年代初頭は、テレビがない家庭の方が多く、テレビのある家庭で見せてもらったり、食堂などのテレビには人々が群がった。テレビゲームもビデオもそして進学塾もなく、子供は自動車の入ってこない路地裏で、メンコやベーゴマといった素朴な遊びを、日が暮れるまで楽しんだ。隣近所の大人の目が光っている路地裏は、「不審者」もまた無縁だった。
レジャーではなく日常にあった銭湯(c)「はすぴー倶楽部」はすぴーさん(江戸東京建物園) |
・内風呂(自家用風呂)の普及率はまだ低く、都市部では銭湯が一般的。文字通り「裸の付き合い」の中で、他人の子でも叱り、面倒をみるのが当たり前。子供は銭湯でマナーを学んだ。
モノがない時代、時間はたくさんあった
家は狭かったけれど、家財道具もまた少なく、引越しは大八車やダイハツミゼットで十分でした。週休二日なんて、優良企業でもまだ実現しているところはなかったけれど、携帯で呼び出されることも、「大阪まで日帰り出張」なんて過密スケジュールもありません。欲しいモノはたくさんあるけれど、まだまだ手が出ないこの時代、時間と空間に「余白」がたくさんあったのでしょうね。2005年の老若男女が昭和30年代を愛する理由は、その辺にあるような気がします。
~~次回は、「日本の家庭にモノが増えたワケ」をお送りします~~
※今回の写真は、昭和レトロならお任せ! のサイト、「はすぴー倶楽部~昭和の思い出」管理人「はすぴー」さんにご協力いただきました。ありがとうございました!
※07年5月14日、読者様からのご指摘により、本文中の「三菱ミゼット」の誤りを「ダイハツミゼット」に訂正させていただきました。不勉強誠に申し訳ありません。ご指摘いただきましたN様、有難うございました。
*関連リンク*