シンプルライフ/シンプルライフの達人

『何もなくて豊かな島』の暮らし 崎山克彦さんの講演より(前)(2ページ目)

『何もなくて豊かな島』(新潮社)の著者崎山さんは、フィリピン・セブ島沖の小島カオハガン島で、シンプルかつスローな生活を営んでいます。その暮らしぶりは‥‥?

金子 由紀子

執筆者:金子 由紀子

シンプルライフガイド

島の人たちの暮らし

「島には現在約400名の人が暮らしており、自給自足に近い暮らしを営んでいます。島の人たちは、バケツを持って海に出てはおかずの魚や海老を取ってきて、島に生えている植物のうちおいしいものを野菜として食事にしています。必要なものは何でも、家や舟さえ、自分で作ります。水は雨水を利用しますが、とてもきれいです。水がなくなれば、近隣の島へ買いに行かなければなりません。そのため人々は水をとても大切にし、一家5人の一日の水消費量は20リットル程度、それですべてをまかないます」



ここで島の人のお宅のスライドが映し出されました。椰子の木を利用した高床式の家で、壁も床もスカスカ、通気性抜群に見えます。ベッドとテーブル、あとはジャグとわずかな食器以外に、何もありません。ほんとうに簡素なお住まいです。
「大きな台風が来れば、これらの家は簡単に壊れてしまいます。しかし、台風が過ぎると島の人々は数日で家を建て直してしまう。人々はきれい好きで、しょっちゅうほうきで家の周辺を掃除しています」
住宅ローンに縛り付けられ、モノであふれた家の中を片付けられずイライラ――の対極にある生活ですね。スライドの女性の表情もとても明るくさわやかです。

「近隣のセブ島でギターの生産が盛んなためか、島の人はギターが大好き。子供も大半が弾くことができます。ドラム缶やオイル缶を利用したドラムセットもあり、歌ったり演奏したり、みんな音楽を楽しんでいます」
高価なオーディオ・セットや楽器を、子供でも持っている。でも、ピアノの練習ひとつにも身をすくませるような都会の生活。デパートでもコンビニでもレストランでも 、音楽はひっきりなしにかかっている。街の中に静けさはありません。切れ目のない、空白を許さない、スポンサー付きの音楽の垂れ流し。それはほんとうに豊かな音楽なのでしょうか‥‥。
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