自分の身は自分で守る
昨年末のインド洋津波発生後には、互いに無事を確認をしあった現地在住者の間で、「在留届を出しているのに、今の時点で大使館や領事館から連絡が入らないのはどうして?」という疑問の声があちこちで飛び交っていました。行方不明者の家族の中には、あまりの情報の少なさに独自に被災地に足を運んだ人もいて、外務省が行き届いた対応ができなかったことを認めるコメントを出したり、問題があったことを認める文書を一部の家族に郵送したりしたことも報道されています。
そもそも海外で災害や事件、事故などが発生した場合、まず最初にテレビや新聞で報道される日本人の安否の大半は、旅行会社を通してパッケージ・ツアーに参加している旅行者、それから外交官や駐在員ら、政府や会社、団体など日本社会での所属がはっきりしている人たちです。私費留学生をはじめ、永住者や現地採用の長期滞在者、個人手配の旅行者の情報は、時間がたってからもかなり曖昧な扱いになることを経験的に認識している海外長期在住者の多くは、「自分の身は自分で守るしかない」という心構えを持っています。
在留邦人数=在留届を提出している日本人
それでもやっぱり邦人保護は外務省の重要任務のひとつ。外務省設置法にも、所掌事務として「海外における邦人の生命及び身体の保護その他の安全に関すること」が明記されています。在留届を出していれば、とりあえず「在留邦人」としてカウントはしてもらえます。留守宅の家族から問い合わせが入れば、記載された情報をもとに安否確認はしてくれるはず。
在留届が提出されていない場合は、ちょっと話が違います。ニューヨークのテロ事件では、在留届を提出する義務のないフリーの短期旅行者や、在留届未提出の留学生や現地採用の会社員は、「存在しないも同然」の扱いだったとか。インド洋津波の際は、半月以上たった1月12日のニュース記事で、「インドネシアを除く被災地5ヵ国で在留届が提出されている約2,250人全員の所在が確認できたことを外務省が発表」と報道されました。言い換えると、「事前に外務省が把握していた在留邦人」については、たとえ時間がたってからであれ、確認作業が行われたということになります。
在留邦人の安否確認が困難な理由として、外務省は在留届が提出されていなかったり、変更や帰国の届出をせずに移転したり、といったことをあげています。その原因はどこにあるのでしょうか。