エアパージという作業
これまでのR22フロンを使用していたエアコンでは、単純にパイプを接続、室外機にあらかじめ充填されているフロンガスのガス圧で空気を押し出す手法が使われてきました。
この方法なら複雑な工具も時間も要らず、簡単に空気を抜くことができるのですが、ガス圧に頼る上に、不必要にフロンを放出するわけにもいかず、どうしても多少の空気や水分が残ってしまいます。
しかし、現在の代替フロンを使用したエアコンでは、それらの不純物に非常にシビアなため、故障の原因や性能低下の可能性もあり、メーカー各社はこの方法を推奨していません。一台の室外機を共有するマルチエアコンタイプの機種などでは如実に性能が落ちるとも言われています。
また、この方法では大なり小なりフロンが大気中に放出されますから、代替フロンでもR22フロンでも(というかなおさら)道義的には問題がある方法と言えます。
正規となるのは、いわゆる「真空引き」や「真空ポンプ方式」と呼ばれ、パイプを接続後、真空ポンプを使用して配管内の空気を可能な限り取り除いてから冷媒を充填させる手法です。
この方法は、必要な機材と、ポンプによる真空化のため、ようするに手間と時間がかかります。
(ちなみに、エアコンの取り付けをDIYでする方法の解説を載せているホームページがいくつかありますが、これも同様で、基本的に現状では×です)
ところが、実際には、ほとんどの量販店での取り付けが依然として前者のガス圧方式によるエアパージにより行われているといわれています。
何しろ、真空ポンプをきちんと回すだけでも20~30分、重い機材の設置取り付けなどでトータルで1時間前後
作業時間に違いが出るそうです。
真空ポンプも安価な機械ではありませんから、場合によっては自転車の空気ポンプのような手動のポンプで大汗かきながら空気をくみ出さねばならないケースもあります。
一日に何軒もの設置作業をこなすことを考えると、これだけで人件費が1万円前後の上昇となってしまうため、ここ数年で激しい価格下落とマージンの低下に悩まされている業界としては、おいそれと受け入れることはできず、暗黙の了解的に黙殺されているのが現状なのです。
特に、価格を前面に押し出したようなディスカウント系の量販店や、「エアコン取り付け費用無料!」などと謳っている販売店などは、かなりの確率で真空引きを行っていないといわれます。
代替フロンを採用した家庭向けのエアコンがメインストリームとなったのが昨年からと言われていますから、過渡期にあると言えなくもないですが、後述するようにエアコンの設置に関する手抜きに近い工事は、これだけでなく多々行われているとのことで、これも過度の価格競争やデフレの悪影響と言えそうです。