「わからなければ盗聴されてないのと同じ。別に聞かれて困ることは話していないし」
とはいえ、やはり不愉快だし不気味です。
K美の場合
最近ひとり暮らしを始めた20歳の専門学校生K美は、ボーイフレンドのY伸が嫉妬深く、ちょっとうっとうしいな、と思いながらもつき合っていた。ある夜、Y伸には内緒で女友達と合コンに行き居酒屋で盛り上がって、気に入った男の子に自宅近くまで送ってもらった。話も合うし、Y伸よりハンサムでいい感じだ。携帯電話の番号を交換して帰ったところ、早速、電話がきた。ワンルームの室内でクッションに寄りかかり、ぬいぐるみを抱きかかえながら話していた。
すると
「ピンポーン」
と誰かが来た様子。
「ちょっと待ってて」
と、玄関に行くとY伸が立っている。
驚いてためらっていると、ずかずかと室内に入って来た。
「ごめん、友達が来たからまた電話して」
と携帯電話を切った。
「誰と電話してたの」
Y伸がじっとK美を見る。
「あ、友達。R子よ、知ってるでしょ」
と何気ない風を装ったが、Y伸が急に怒鳴った。
「ウソをつくなよ。男だろ!わかってんだよっ」
「何言ってるのよ!」
「じゃあ、着信記録を見せろよ」
「そこまで言う権利ないでしょっ!」
2人でにらみ合ったまま立ちつくしていた。
「どうしてウソをつくんだ。今日は男との合コンでそこで会った男と帰ってきたんだろ」
なぜ、知っているのか? K美が呆然としていると、突然やさしい口調に変わった。
「おまえのことが好きだから、心配なんだ。おれを捨てないでくれ」
と哀願するので、つい仲直りしてしまった。
盗聴器?
次の日、前日に一緒だった友人らにY伸に合コンの話をしたか聞いて回ったが、もちろん誰も話していないという。また話すわけもなかった。では、なぜY伸は自分の行動を知っていたのか?
なぜ、男と電話していた最中に家に来たのか? 考えてもわからなかった。
しっかり者のR子に相談すると
「Y伸くんてさ、かなり嫉妬深いじゃん? 案外、盗聴器でもしかけているのかもよ」
と言う。