買い換え需要にハマった機能
日本におけるデジタルカメラの世帯普及率は50%を大きく超えており、フィルムカメラ全盛の時代よりもはるかに気軽に写真を楽しめるようになっている。デジタルカメラというもので撮影をはじめたというユーザーも少なくないだろう。
といったわけで現在では需要は一巡してしまい、買い換え需要が本格的に立ち上がってきている、というのが昨今の情勢だ。
そこでこれまでコンパクトスタイルのデジタルカメラを使ってきたユーザーが、買い換えのターゲットにデジタル一眼レフを選択肢として挙げるようになってきた。
その選択肢の第1候補にD40はうまくハマるよう、デジタル一眼レフにステップアップするユーザーの受け皿となるために作り上げられた製品であるのだ。
1・低価格化
まず、もっとも大きな要素は価格だ。
レンズキットが発売当初で6万円台という価格づけをされていたため、多くのユーザーにとって敷居が低かったことが挙げられる。
現在ではD40のレンズキットは5万円台前半で販売されているほどだ。
ライバルと目されているEOS Kiss デジタルXのレンズキットが7万円台前半であることを考えると、大きなアドバンテージであるといえるだろう。
2・クラス最高(発売時)の小型軽量化
E-410が発売されるまでD40は最軽量のデジタル一眼レフであった。
やはり、コンパクトスタイルからのステップアップであるのなら、より小さいほうが受け入れやすいのは言うまでもない。
また、レンズキットに付属してくる標準ズームも同様にかなり軽量である。
デジタル一眼レフへの拒否感として、もっとも大きいのがその図体の大きさにある。ここを解消できたのはヒットの大きな原因だろう。
▲バッテリーも一回り小型のものが採用されている。 |
3・SDカードの採用
次にSDカードが利用できることも要因のひとつといえる。
コンパクトスタイルのデジタルカメラを持っているユーザーの多くがSDカードを使用している。
これまで購入してきたSDカードが使い回せるもの……というように購入対象を絞ることはなんら不思議な話ではない。むしろ、消費者としては当然の選択だろう。
▲これまで使ってきたSDカードがムダにならないということも大きい。 |
4・制約の中でも高性能
低価格なデジタル一眼レフという制約がある中でも、必要な性能は確保されていることにも注目したい。
たとえば2.5枚/秒という連写性能はデジタル一眼レフという括りの中では高いとはいえないが、コンパクトスタイルからのステップアップであれば充分にアピールポイントとなる。
その他にも起動時間が0.18秒とニコンの他機種に劣らず高速なところなども、単純に機能を割り切っただけのものではないことが理解できる。
これらの理由によって、コンパクトスタイルのデジタルカメラからのステップアップとしてデジタル一眼レフというジャンルに踏み込ませることができたというわけだ。
特に理由の1と2が大きいといえるだろう。
前述の「モーターを搭載していないレンズではオートフォーカスが利用できない」という割り切りは、低価格化と小型軽量化というふたつの理由を実現させるために行われている。
メーカーにとってはかなりの英断となったはずだが、大成功を収めたわけだ。
また、このレンズへの制約は意外とユーザーにとっては大きな弱点と受け止められていないようである。
かなり多くのユーザーが標準レンズ1本だけで満足してしまっているからだ。
最初の囲い込みはまず大成功……
ニコンとしては、とにかくユーザーをデジタル一眼レフを選択させてしまおうというコンセプトであったのだろう。とりあえずD40という製品でその目論見は成功した。
これからのレンズ展開などで、D40による囲い込みが成功するかどうかが問われていくこととなるだろう。