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日野社長が語る企業ファンサイトの作り方

株式会社ハーストーリィ代表取締役、日野佳恵子さんへのインタビュー、第一回の今回は企業が運営するコミュニティサイトの意義、重要性から、ビジネスとして行う際の注意点などに関して伺っていきます。

水上 浩一

執筆者:水上 浩一

インターネットサービスガイド

ビデオリサーチインタラクティブが2月19日に発表したブログとSNSサイトの2006年の視聴動向の 結果によると、ブログ、SNSの年間訪問者数はブログは2,687万人、SNSは 1,104万人、併用ユーザーは1,057万人となっており、これらをCGMとしてまとめてみると、年間訪問者数は2,734万人規模になっています。

今回と次回の2回に渡って、CGMという言葉が一般的になる以前より、ネットにおける口コミ、コミュニティの重要性を説き、 「おしゃべりnet」などの口コミサイトの運営もされている、 株式会社ハー・ストーリィの代表取締役、日野佳恵子さんに企業が行うコミュニティ、そして女性の口コミを誘発するための仕掛けなどについて伺っ ていきます。

企業がコミュニティサイトを持つことの意味

企業がコミュニティサイトを運営するための豊富な事例とアイディアが満載の「ファンサイトマーケティング」
ガイド:
現在のネットの世界では口コミを利用した企業のマーケティングというのは当たり前となっていますが、日野さんが書かれた「ファンサイト マーケティング」では2年以上前に既に口コミの重要性に関して語られています。現在の状況に関してどうお考えですか?

日野:
そうですね。この本を出した当時はまだCGMなどを使った口コミの重要性が今ほど語られていなかったと思うのですが、「企業が仕掛けるの ではなく、企業がコミュニティサイトにおいて、商品やブランドのイメージを伝えることによって、コミュニティに参加している、もしくは見ている ユーザーが口コミを広げ、それがコンテンツになっていくというのが主流になるであろう」考えていました。

そして今では、コンテンツはユーザー側に移ってしまっていますよね。土俵は企業が提供していますが、その土俵を使って情報を発信して いるのは企業ではなく、ユーザーです。ブログもそうですし、SNSもそうですが、コンテンツはユーザーが作っていくものになってきている といえるのではないでしょうか。

ただ、口コミの一番怖いのは、いい意味でも悪い意味でも一方に偏ってしまいがちだということです。だからこそ余計に企業は自分達の存在 価値、イメージなど考え方の発信力というのが、今まで以上に重要になってくるのではないかと思います。

ガイド:
単に企業対ユーザーということではなく、その企業を通してユーザー同士が情報を発信していくという形になっているということですね。

日野:
はい。ただ企業の目的がどこにあるかによっても違ってくるとは思います。つまり人と人を主役にしたいのか、それともモノに焦点を当てたいのかという ことです。

CGMというのはコミュニティというものを中心に見がちですが、そこにビジネスが存在したとき、企業の最終的な目的は自社の商品、サービ スを売りたいということになります。その目的を達成するために、よりどっちに偏らせたいのかということです。

商品、サービスに関して口コミしていって欲しいのか、それとも企業全体のイメージを伝えていきたいのか、つまり販売なのか認知活動なの かでコミュニティサイトのスタイルは変わってくるのだろうと思います。

小さな企業こそ、有利なファンサイトマーケティング

ガイド:
「ファンサイトマーケティング」では、いくつかの企業サイトを例としていくつか紹介されていますが、そのほとんどが既に有名になって いるブランドがある企業です。やはり知名度がなく、Webにそれほど予算をかけられない中小の企業がこれからネットを利用して自社のファン を増やしていくというのは難しいのでしょうか?

日野:
この本の中で紹介しているサイトは実はどれもそれほどお金はかかっていません。何故かというと、実はお金がかかるのはシステム、つま りデータベースの維持、管理にかかるコストが一番大きいのです。ところが企業のブランドイメージサイトは、データベースを持たせてい ないのでお金がかからないんです。

ですから、Webにあまり予算をかけられない中小企業の方がファンサイトマーケティングには向いています。私がこの本の中で言いたかった のは、大企業が個に向かって、お金をかけずにコミュニケーションを始めたということがすごいことだということです。大企業でさえ、そ ういった方向へ向かっているのだから、小さな企業はもっと有利だよ、と言いたかったのです。

ガイド:
しかしやはり知名度があるとないとでは、集客という点でかなり差が出ると思うのですが?

日野:
それはあるかもしれません。ただ、例えば仮にAという会社が知名度がある会社だとしても、その会社のサイトに頻繁に行きますか?という ことなんです。知名度があるということとアクティブユーザーの関係性って決してイコールではないんです。

さらにこの本で紹介しているサイトはどれもその企業ということではなく、その企業の中の1つの商品、サービスのファンサイトなんです。 つまりAという会社は知っているけど、その会社のBという商品はそれほど知られていないわけです。そういった意味で、集客という点では 知名度のない小さな企業と同じようなパワーがかかっているんですよ。

もちろん、誰もが知っている企業と誰も知らない企業では安心感は違います。ですから、知名度のない企業は集客したお客様に安心感を与 える仕組み作りは重要になります。

知名度のない企業がお客様に安心感を与えるためには

ガイド:
お客様に安心感を与えるためには信用が必要になります。信用というのは、長い年月、歴史を経て初めて得られるものですよね。そういった 歴史のない中小企業がお客様に安心感を与えるためには何が重要だと思われますか?

日野:
無名の時には、存在を出すということから始めるべきではないでしょうか。大企業のブランド価値というのは、高まれば高まるほど、社名 に認知度がきて、人の姿は見えなくなっていくんですね。ですから、小さい会社ほど、まずはやっている人間の逃げも隠れもしないという 姿から入るべきだと私は思っています。

人というのは最初は人につきますので、無名のところほど、まずは顔写真であったり、仕事をしている姿勢であったり、素材に対するこだわ りであったりという部分を、お客様に対して提示していくべきです。

ガイド:
確かに歴史もなく、全く無名の中小企業のネットショップで店長の顔もわからなければお客様は不安になるばかりで安心感を持つことはでき ませんね。

<次ページでは、コミュニティにおける広告事業についてお伺いしていきます。>
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