
「ミニマリスト」「断捨離」「シンプルライフ」……。身の回りのものを必要最小限にとどめる暮らしが、かっこいいものとして受け入れられるようになってきています。
クローゼットを開けると、いつか着るつもりの服がぎっしり。食器棚には、来客用に買ったまま出番のないユニークな形のお皿。
「場所取ってるよねえ。捨てても問題ないじゃない」と思ったとき、見直したいのは持ちものだけでしょうか。
夫婦間にも、長年ため込んだ「夫婦独特の習慣」があります。
夕食はいつも一緒に。寝室はもちろん一緒。休日は夫婦で出掛ける。個の自由を認める夫婦も増えて来ていますが、いまだ過去の夫婦像をなんとなく持ち続けている人もいるのではないでしょうか。
30代の頃は自然にできていたことでも、今はちょっとしんどい。その違和感を「夫婦なんだからこんなもんよ」で押し込めていませんか。
アラフィフからの「夫婦関係の捨て活」は、そんな習慣を二人で見直すこと。人生100年時代。「100歳―現年齢」はいくつですか? 100歳になるまで気持ちよく暮らすために、夫婦の習慣を更新したっていいではありませんか。
「寝室は一緒」「夕食は毎日一緒」を手放した夫婦

ヒサミさん(48歳)とタカトシさん(52歳)は、同じ寝室で眠り、夕食も一緒にとる生活を続けていました。
ヒサミさんは早朝ヨガをしているので、早めに寝たい。タカトシさんは、ベッドに入ってからスマホを見たい。ヒサミさんが電気を消すと、隣で動画の音がイヤホンから漏れてくる。
「音漏れ、気になるんだけど」
「もう終わるから」
その「もう」が、なかなか終わらない。ヒサミさんがため息をつくと、タカトシさんも「寝室では自由にしたい」と不機嫌になります。
夕食にも、似たようなズレがあります。
ヒサミさんは午後7時には食べたいのに、タカトシさんの帰宅は日によってまちまち。作った料理にラップをかけ、自分は煎餅をつまんで待つ。ようやく帰ってきた夫が「今日、昼が遅かったからサラダだけでいい」と言うと、思わず声が尖ります。
「それ、もっと早くLINEしてよ……」
「毎日いらつく」と話していたヒサミさんに、私は「夫婦の習慣を見直して」とアドバイスしました。
その後、二人が話し合って手放したのは、まず「寝室は一緒」という決まりでした。夫婦別寝の開始です。空いていた部屋を片づけ、それぞれ好きな時間に眠ることに。寝る前にリビングで会話してから、「おやすみ」と言って各自の部屋へ向かう。音漏れ地獄はなくなりました。
さらに、夕食は週3回曜日を決めて、それぞれで済ませることにしました。その日は、料理と後片づけまで各自で担当。一人で勝手に食べる。ヒサミさんが夫の分だけ作り置きする、という形にはしません。一人で外食してもOK。テイクアウトもOK。互いに干渉しない。
ヒサミさんは、好きなパンとスープで早めの夕食を終え、夜の読書を楽しむ。タカトシさんも、食べたかったラーメン屋に行ったり、スーパーで好きな総菜を1人分買って来て気楽につまめるように。
「夫の帰宅を待ちながら、時計を見る時間がなくなったんです」
一緒に食べる日は、「何食べたい? 腕を振るうわよ」と相談する余裕も生まれました。ヒサミさんにとって、夕食が毎日の待機業務ではなく、二人で楽しむ時間に変化しました。
手放してみるのもアリ! 「夫婦の習慣」5つ

1.パートナーの「身の回り係」を引き受けること
「黒い靴下どこ?」「明日のシャツ、アイロンかかってる?」
相手の問い掛けに、家事の手を止めて答える。脱ぎっぱなしの服を拾い、出張の荷物までそろえる。いつの間にか、相手の準備優先になっていませんか。
まず、自分でできる身支度は少しずつ移行させる。
「シャツはこの引き出しにあるよ。自分で選んでね」
置き場所を共有したら、選ぶ、用意する、足りなければ買うところまで本人に任せる。毎回こちらが確認していたら、「係」の仕事は終わりません。
2.「きちんとした家庭」のイメージにこだわること
夕食はバランスのよいメニューを並べる。洗濯ものはその日のうちにたたむ。夫婦で出掛けるときは、身なりを整える。
一つひとつは小さくても、毎日続けば重い荷物です。
「今日は冷凍餃子にしよう」
「洗濯物は、それぞれ自分の分を片づけよう」
このように、二人で暮らしの合格点を決め直してみる。
ただし、一方が「気にしなければいい」と言い、もう一方が結局片づけているなら、負担は減っていません。何を省くか、残る仕事は誰がするかまで話すことが必要です。「気になる」基準を下げてゆくと楽になります。
食卓の品数を減らして生まれた30分で、お茶を飲みながら笑えたら。その時間にも、十分価値があります。
3.休日は必ず「夫婦セット」で行動すること
夫は家でスポーツ番組を見たい。妻は友人と映画へ行きたい。それぞれの希望を優先すればいいのです。一方が興味のない場所についていくと、帰宅後、「せっかく付き合ったのに、全然楽しそうじゃなかった」と、別の不満まで生まれることがあります。
「土曜の午後は別々に過ごして、夜は一緒に食べよう」
といったフレキシブルな組み方もできます。一人の時間を、相手への拒絶と受け取らないために、帰宅予定や一緒に過ごす時間を先に共有するのがコツです。
相手とのつながりと、自分の意思で行動できる感覚の両立が、対立したときの建設的な対応にもつながるのです。
別々に過ごして「今日、おもしろい人に会ったよ」と笑顔で話せる。そんな休日も楽しいではないですか。
4.相手に気を使って先回りすること
夫が無言だと「何か怒ってる?」と考える。妻の返事が短いと、慌ててご機嫌をとる。機嫌を損ねないよう、相手の表情を読み続けていると、自宅でも休まらない。そんなことはありませんか。
自分が疲れている日には「怒っているわけじゃないよ。疲れたから少し一人で休ませて」と伝えればいいのです。
察してもらうより、先に短い言葉で状態を知らせる。その習慣があれば、相手も必要以上に身構えずに済みます。
5.今日のケンカに「過去の恨み」を全部持ち込むこと
洗いものの順番の話をしていたはずが、「あなたは結婚してすぐのときから洗いものが下手だった」となり、「あのときも」「あの日だって」「子育ては私ばかりワンオペで……」と続いてしまう。
昔の悔しさが残っているからこそ、今日の小さな出来事にも腹が立つのでしょう。ただ、今の洗い物と過去のいらだちを一度に話すと、何を変えればよいのか、二人とも見失ってしまいます。
手放したいのは、傷ついた記憶そのものと、目の前の不満を並べることです。
1つ手放して、二人の暮らしを試してみる

夫婦関係の捨て活は、「今日からコレもコレもやめます」と宣言するより、小さく1つずつ試すのが正解です。
「帰宅を待つのが疲れるから、火曜と木曜は各自での夕食にしてみたい」
「毎月4日間、単独外出する日がほしい」
負担になっていることと、希望する形を具体的に伝え、まずは2週間ほど試してみる。楽になったか、寂しさが増えていないか、片方に家事が偏っていないかを確かめます。
ヒサミさんとタカトシさんも、長年の習慣を二人で見直したことで、無理なく一緒に過ごせる時間をつくりました。
「昔はできた」ことでも、今は負担になる。そこを認め合える夫婦なら、暮らし方は何度でも更新できます。
アラフィフからの夫婦生活に、これまでの決まりを全部持っていく必要はありません。いろいろ捨ててみる。不具合があれば復活する。捨て活が楽しいイベントに思えればしめたものです。







