
大人ばかりで暮らしているなら、少なくともみんなが家庭のことを考え、家族にほんの少しでもいいから敬意を抱き、協力し合わないとうまくはいかない。親子や義理関係のクッションとなる小さな子がいないと、大人同士はすぐに反目し合うものなのかもしれない。
同居前はうまくいっていたのに
「義母とは近距離で住んでいるときはうまくいっていました。義父が亡くなり、私たちが夫の実家で同居するようになってから、ギクシャクしはじめて。義母は『同居させてやっている』と思い、私は『面倒を見てやっている』という気持ちがある。だからギスギスしちゃうんでしょうね。分かってはいるけど、わがままな義母につきあいきれないことが増えてきました」
アカリさん(54歳)は、同い年の夫と自宅から通勤している26歳の娘、72歳の義母との4人暮らしだ。2年前に同居するようになってから、家計も気持ちも余裕がなくなっていると語る。
「義父が亡くなったとき夫が調べたら、貯金はほとんどなくて、年金は2カ月で8万円程度。義父は70歳でも仕事をしていたのですが、生活のためにやむを得ず働いていたようです。一軒家はありますが借地なので、資産価値はほとんどない。というか本来なら、そろそろリフォームしたいような家です」
アカリさん一家は賃貸マンションで暮らしていたので、家賃が出なくなったのは確かにありがたいという。だが、義母の生活は丸抱えしなければならなくなった。
「義母は年金から月2万円よこします。私の食費と生活費といって。でも月に2度ほどの通院にかかる費用はこちらもち。義母が手元に残す2万円はあくまで彼女の小遣いです」
週に5回ほど行っていたパートの仕事も、同居以降は週3回に減らした。夫と娘との3人暮らしのときは、それぞれ忙しいし夕食も家族そろうことはなかったので、ほとんど夕食の用意をしなかった。自分の食べる分は自分で作ったり買ってきたりしていたのだ。義母はまだ元気なので、同居後もそうしたかったのだが夫と義母に大反対された。
「あなたがパートを減らせば、毎日、夕飯くらい作れるでしょうと義母が言ったんです。夫もそれに同調して……。ちょうど夫も出向になって早く帰れるようになった。それは収入が減ることでもあるから、こちらとしても節約するためには夕飯を作るしかないかなと思いました。もちろん当時、義母は『私ができるときはやるから』と言っていました」
「私は高齢者だから」
ところが義母が料理しているのは同居以降、見たことがない。それどころか、パートから帰ってくるアカリさんを待ち構えていて家事をやらせることも増えている。
「うち、食材を毎週1回、宅配してもらっているんです。曜日が決まっているし時間もだいたい決まっている。その日は私はパートなので、義母に受け取りだけ頼んでいるんですが、3回に1回くらいしか受け取ってくれないんです」
電話をしていて出られなかったとか、ちょうど近所の家に行っていたとか、いろいろ理由はつけるのだが、玄関前に宅配の箱がいくつも重なっているのをパート帰りに見つけると気分が重くなる。
「冷凍や冷蔵の箱を開けて中身を出して、冷凍庫や冷蔵庫に入れていく。直接手渡しで受け取れば、箱は持ち帰ってくれるし、そのまますぐ冷凍庫に入れられるのに。どうやら義母はいても出ないこともあるようです」
せめて受け取って冷凍庫と冷蔵庫には入れてもらえないかと言ったこともあるのだが、「私は高齢者だから」と意味不明な拒絶の言葉が返ってきた。
家事はしないのに嫌みは言う
義母は家事はほとんどしない。そして帰宅したアカリさんに、ほぼ毎回、何かしら嫌みを言うという。
「先日、どうしても職場で残業してほしいと言われ、夫と義母に家族LINEで連絡をしました。夫は了解と返事が返ってきたけど、私が帰ると夫はまだ帰っていなかった。義母は私の顔を見るなり『あーら、やっとお帰りですね。どこで何をしていたのやら』と嫌みを言う。本当に疲れていたのですが、食事はと聞くと『ご飯と梅干しで食べた』と。そういうときのための作り置きもしてあるのですが、『だってレンジでチンなんて面倒だもの』と言うんです。その日は宅配の日だったので、ため息をつきながら食材を整理しました。冷蔵庫に入れておいてくれてもいいのにと思わずつぶやきましたが義母は無視していましたね」
それだけではない。決して余裕のある生活ではないのに、義母は不必要なほどティッシュやペーパータオルを使う。ペーパータオルを高速で5、6枚とり、テーブルを拭いているのも見たことがある。乾いたペーパーで拭いてもきれいにはならないのだが……。
「シャンプーなどもなくなるのが早いんですよ。義母はそういうものはなぜか大量に使う。洗面所においてあった私の化粧水も勝手に、しかも大量に使っているのが分かって洗面所から引きあげました。ケチくさいと文句を言われたけど、彼女はまったく家計を考えていないので、そうするしかなかった」
義母がいなければ楽になれるのに……
夫に、いろいろなものを大量に使うのをやめてと言ってほしいと頼んだのだが、夫はおそらく義母には伝えていない。
「夫は義母には何も言えないんですよ。遠慮しているのか揉めるのが嫌なのか。『ボケかかっている高齢者相手に怒ってもしょうがない』と言うけど、あんな嫌みを言えるのは頭の回転が速いからで、義母はまったくボケてなんていない。夫は逃げているだけ」
家では食事をしない娘は、家計を気遣って3万円ほど入れてくれているが、そのお金にだけは娘のために手をつけないでおこうとアカリさんは決めている。
「不謹慎だけど正直言って、義母がいなければもう少し楽になれるのにと思うことはあります。そしてそう思う自分に嫌悪感を覚えるんです」
義親と暮らすことで我慢を強いられる日々が理不尽だと、アカリさんは思う。だが、そんな生活から抜けられないのもまた事実なのだ。







