老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給のどちらを選ぶべきか迷っている方からの質問です。専門家に質問がある人はコメント欄に書き込みをお願いします。
Q:年金は繰り上げと繰り下げ、どちらを選べばいい? 判断するときのポイントは?
「1971年7月生まれの男性です。年金について調べていますが、早く受け取る繰り上げ受給がよいという人もいれば、金額が増える繰り下げ受給がよいという人もいて、よく分かりません。人によって条件も違うと思いますが、繰り上げと繰り下げを選ぶときは、どのような点を考えればよいのでしょうか?」(でんすけ)

A:どちらがよいかは一概にはいえません。年金額だけでなく、手元資金や健康状態、今後の働き方なども含めて考えましょう
でんすけさんは1971年7月生まれですので、現行制度では、原則として65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることができます。
ただし、希望すれば60歳から65歳になる前までの間に年金を早く受け取る「繰り上げ受給」や、66歳から75歳までの間に受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を選ぶこともできます。
現行制度での年金額の増減率は、次のとおりです。
- 繰り上げ受給:1カ月早めるごとに0.4%減額。60歳から受け取る場合は最大24%減額されます。
- 繰り下げ受給:1カ月遅らせるごとに0.7%増額。70歳まで繰り下げると42%、75歳まで繰り下げると最大84%増額されます。
いずれも、繰り上げによる減額率や繰り下げによる増額率は生涯変わりません。
繰り上げと繰り下げ、何を基準に選べばいい?
どちらがよいかは、単に何歳まで生きれば得になるかという「損益分岐点」だけでなく、生活費や貯蓄額、健康状態、今後の働き方などを含めて考えることが大切です。
例えば、60歳以降に給与収入がなく、65歳までの生活費を貯蓄だけで賄うことが難しい人は、繰り上げ受給を検討するのも1つの方法です。また、健康状態に不安があり、早めに年金を受け取って生活や趣味などに使いたいと考える人もいるでしょう。
一方、65歳以降も働いて十分な収入がある人や、当面の生活費を貯蓄などで賄える人は、繰り下げ受給を検討することもできます。繰り下げによって毎月の年金額を増やすことは、長生きした場合の生活費に備える方法の1つです。
ただし、繰り上げ受給を一度請求すると、後から取り消すことはできません。年金額が生涯減額されるほか、障害年金の請求などにも影響する場合があるため、慎重に判断する必要があります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることもできる
繰り上げ受給は、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に請求する必要があります。
一方、繰り下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に選ぶことができます。例えば、老齢厚生年金は65歳から受け取り、老齢基礎年金だけを繰り下げて増額する方法もあります。
また、一定の要件を満たして配偶者加給年金額を受け取れる人は、老齢厚生年金を繰り下げている間、加給年金額を受け取れない点にも注意が必要です。加給年金額は繰り下げ受給による増額の対象にもなりません。老齢厚生年金を65歳から受け取り、老齢基礎年金だけを繰り下げれば、要件を満たす間は加給年金額を受け取ることができます。
なお、65歳以降も厚生年金に加入して働く場合、在職老齢年金の仕組みによって支給停止となる老齢厚生年金の額は、繰り下げによる増額の対象にはなりません。支給停止となった老齢厚生年金額は、後からもらうこともできません。
さらに、繰り下げによって年金額が増えると、税金や社会保険料などに影響する場合もあります。年金の額面だけでなく、実際に使えるお金についても考えておくとよいでしょう。
でんすけさんが年金を受け取る年齢になるまでには、まだ時間があります。今後の制度改正によって条件が変わる可能性もありますので、受給開始が近づいた段階で最新の制度や年金見込額を確認し、ご自身の生活設計に合った受け取り方を検討してみてください。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)






