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燃料電池の将来は ノートパソコンに燃料電池

開発が進む燃料電池。そもそも燃料電池とは何か? ノートパソコンにはどんな方式の燃料電池が使われるのか? そもそも使い物になるのか?

上倉 賢

執筆者:上倉 賢

ノートパソコンガイド

燃料電池の開発は急速に進んでいるようだ。近い将来ノートパソコン用燃料電池が実用化されるだろうが、そもそも燃料電池とは何なのか、本当にノートパソコンに使える物なのか考えてみたい。

燃料電池とは

燃料電池に関するサイトは多数存在しているため、ここであえて原理を説明する必要は無さそうだが、一応簡単に書いておくと、水素と酸素を反応させたときに発生する電気を利用するのが燃料電池だ。電池と言うより発電機と呼んだ方がいいのかもしれない。

燃料電池の原理がわかるサイト
家庭用燃料電池コージェネレーションシステム/燃料電池について 東京ガス
燃料電池 ナノエレクトロニクス

燃料電池の燃料
燃料電池は水素と酸素を使うが、酸素は大気中に約20%含まれているので、これを使えばいいとして問題は水素だ。

水素をどうするか
水素をそのまま扱えれば良いが、水素の爆発限界は4~75[vol%]と広く、空気中での最小発火エネルギーは0.02mJで静電気が着火源になり、ボンベから高速で噴出した場合にも危険。運用方法にもよるが、携帯用機器に直接水素法の燃料電池を搭載するのは危険なため他の方法を選んだ方が無難だ。
そこで登場するのが、水素以外の燃料を改質して水素を取り出す方法。

水素
水素ガスの基準・法規・ガイドライン-日本
WE-NET

水素を改質して取り出す
都市ガス会社が開発を進めているのが、都市ガスの主成分であるメタンガスを改質する方式。石油会社が現在の利権を守るために、自動車用燃料電池向け等に開発しているのが、ガソリンを改質する方式。
どの方式も改質器が必要で、自動車や家庭用燃料電池には使えるが、少しでもサイズを小さくする必要のある携帯機器用燃料電池としては現実的ではない。

そこで、最近開発が進んでいるのがメタノールを改質しないで利用する、直接メタノール型燃料電池(DMFC : Direct Methanol Fuel Cell)である。

燃料電池関連リンク
携帯機器に最適な小型高性能燃料電池の研究開発に成功 カシオ計算機
カーボンナノチューブを電極に用いた携帯機器用の小型燃料電池を世界で初めて開発 NEC
日立グループの環境活動 日立
ノートパソコン用小型メタノール燃料電池の開発について 東芝
Motorola Researchers Report Progress in Miniaturizing Fuel Cell Power Source for Consumer Electronic Devices モトローラ

DMFC
DMFCは開発しなければならない課題が多く、それらを解決しない限り実用化は遠いだろうが、東芝、NEC、日立、モトローラ等が開発を進めており、早ければ2004年中には登場するようだ。

モバイルの明日を支える燃料電池 (9) モバイル機器への応用 PWM
ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)について 信州大学 山田研究室ホームページ

ノートパソコン用燃料電池の問題点

このまま他の燃料などでのブレークスルーが無ければDMFCが、ノートパソコン等の携帯用機器向け燃料電池になりそうだが、問題点も多い。

ガイドが考える代表的な問題点

1.カートリッジ形状の統一は?
ノートパソコンのメーカーはもちろん機種毎にバッテリ形状が統一されていない現状で、燃料電池のメタノールカートリッジ形状が統一されるのかどうか不安。

2.メタノール濃度
DMFCでは、メタノールの濃度は高ければ高いほど電力を使える時間が長くなる。現状では各社の方式によりメタノール濃度が違うため、形状が統一されたとしても、濃度の問題で、それぞれ違うカートリッジを選ばなければいけなくなり、流通等で問題になる。

3.メタノールの危険性
メタノール自体は消防法で第四類の引火性液体に分類される危険物であり、水素に比べれば危険性は低いが、毒性もあるため、万が一漏れたりした場合の事も考える必要がある。

参考 製品安全データシート 旭テクノグラス株式会社

4.カートリッジの流通
先ほども述べたようにメタノール自体は危険物なため、流通がどうなるのかという問題もある。ここが全世界で解決しないことには、燃料が入手できなくなり燃料電池がただの箱になる可能性もある。

参考 消防危第72号 メタノールを含有する自動車用燃料の取扱いについて 消防庁

最大の問題点が、一般ユーザーがそもそも燃料電池を使うのかという点だ。
バッテリ駆動時間の長いバッテリという目的で使用する場合は、現状のリチウムイオンバッテリでも5時間前後の駆動時間は確保できており、予備バッテリを持ち歩けば、丸一日の使用も問題ないだろう。
それでも燃料電池を使わなければならない用途で考えられるのは、電気のないところでの使用だ。例えば、山の中や砂漠、海上等の特殊な用途だろう。そういった場所での使用では燃料切れにさえ注意すれば、永遠に使用可能だ。個人的には太陽電池との併用して、燃料の使用量を減らす方向になるのではないかと思っている。

燃料電池を利用した例
ユアサ 堀江謙一さんの愛艇MALT'Sマーメイド3号に当社製「直接メタノール燃料電池」を搭載

また、環境のことを考えると、燃料電池コージェネレーションシステム等で発電した電力を、リチウムイオン電池などに充電して使用することでも目的は達成するため、機種毎に燃料電池を搭載する必要はない。また、メタノール等を改質して使う燃料電池は二酸化炭素などが発生するため、水素を直接使用する場合に比べて環境には優しくない。
そもそも環境のことも考える場合は、水素やメタノールなどを工業的に生産する際のエネルギー等も考慮する必要があり、燃料電池自体はこれからの物だが、開発がすすめば燃料電池自体が今以上に面白くなる事は間違いない。

燃料電池FAQ 溶融炭酸塩形燃料電池連携研究体

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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