法律の整備が進み環境へ配慮した製品が注目されている。ノートパソコンユーザのほとんどはこの件を重視していないが、一般家庭向けから企業向けまで様々な分野で使われシェアを伸ばし続けているノートパソコンでも、設計から梱包、廃棄に至るまでの全ての分野で工夫が進みつつある。
ノートパソコンに限らず電気製品は、部品を基板に取り付けるために半田を使用している。従来使われていたのは錫と鉛からなるSn-Pb系はんだであるが、鉛は環境に悪い影響を与えるため、鉛フリーはんだの導入が進んでいる。鉛フリーはんだはSn-Pb系はんだに比べると、高い実装技術が要求されるので、今のところ一部の大手メーカーでしか採用されていないが、今後、材料や実装技術が進歩することで、鉛フリーはんだへ置き換わることが予想される。
そのはんだを実装する基板やIC、各種ケーブル、外装に使われるプラスチック類には難燃剤等として、ハロゲン系の材料が、電源ケーブルには塩化ビニルが使われているが、これらも焼却した時にダイオキシンなどの有毒ガスが発生するため、オレフィン系プラスチックの採用やハロゲンフリー化が進んでいる。
ハロゲンフリーのプラスチック以外では生分解性プラスチックを採用したノートパソコンも登場した。通常のプラスチックとは違い微生物で分解する生分解性プラスチックは廃棄した後の、埋め立て時などに効果を発揮する。
製品に使われる材料面では上記のハロゲンフリーや鉛フリー化が代表的で、それらの部品には材料名を記入したり、分解しやすくする等、各社それぞれ工夫しているが、本体の材料面以外でも各社工夫を凝らしている。
鉛フリーはんだを採用したNECのノートパソコンプレスリリース
ハロゲンアンチモンフリーを採用した東芝のノートパソコンプレスリリース
生分解性プラスチックを採用した富士通のノートパソコンプレスリリース
● 材料以外の環境配慮
パソコンは通常段ボールに入れて販売されている。最近はその緩衝剤に発泡スチロールではなく、段ボール自体を折り曲げて緩衝剤に使用することが進んでいるが、個別に販売されるパソコンならまだしも、企業向けに大量販売される製品の場合、段ボールからの取り出し、段ボールの後処理が問題となる。このため企業向けなどの販売が多いDELLは一つのケースに複数のパソコンを梱包し、そのケースからパソコンを取り出したらそのケースを回収する「マルチパック」サービスを展開している。
大量に紙を使用するマニュアル、初心者を除けば基本的な説明以外のマニュアルは読まない事が多いし、無駄なだけの場合もある、最近ではPDFファイルなどに電子化されており、検索なども可能だ。
1ケースに複数のPCを梱包するDELLのマルチパックサービス
パソコンは当然の事ながら使用中は電気を使用する。真夏の昼頃は電力使用量がピークに達するが、バッテリを搭載しているノートパソコンの場合、電源管理をすることで、昼間の電力使用量を押さえることが可能だ。IBMの一部製品には「ピークシフト」という昼間は内蔵バッテリーで使用し、ピーク時の電力使用量を抑え、バッテリが無くなる夕方頃にAC電源に切り替え、電源OFF時に充電という電力使用の平準化に配慮した機能が備わっている。
最近のノートパソコンにはインテルの高クロック戦略によりモバイルPentium 4-Mが搭載され、消費電力が上昇しているが、トランスメタのCrusoeはバッテリ駆動時間を重視するミニノートなどに搭載されている事などからわかるように消費電力が小さい。Crusoeを使ったA4ノートパソコンは、今のところ存在していないが、環境へ配慮した製品選びが一般化すれば、デスクトップパソコンに比べれば、消費電力の低いノートパソコンでも、さらに低くすることが可能なCrusoe等の低消費電力ノートパソコンが一般化する可能性もある。
古いノートパソコンを売ったとしても二束三文だし、まだ使えるのならソフトの工夫で活用することは可能だ。例えばIBMのWebBoyはリサイクルウェアとして古いMS-DOSを使用したパソコンでも、Webサイトを見たりメールの読み書きを出来るようにするソフトである。このソフトを使わなくとも、小規模のサーバとして使うなら数年前のノートパソコンはUNIX系のOSを使うのに問題ないスペックで、学習用としても活用可能だろう。
古い製品は、ソフトだけではなくHDD等の陳腐化しやすく故障の多い部品が簡単に交換できるようになっているIBM等の製品は、それ以外のメーカー品と比べると本体の製品寿命を長くすることが可能だ。