
定年後の生活設計では、「いつ退職するか」も大切なポイントです。退職するタイミングによって、受け取れる給付や年金に差が生じることもあります。制度を正しく知れば、老後資金を増やせる可能性もあります。
この記事は、社労士みなみさんの著書『もらう×増やす×出費を減らす 年金最大化生活』(アスコム)より一部抜粋・編集し、失業手当を活用して老後資金を増やす方法や、退職前に知っておきたい制度について紹介します。
定年後にひと休みしたい人は「受給期間延長制度」を活用
定年後も働くのがお勧めですが、その前に定年まで働き続けた体を癒やしたいと思う人もいるでしょう。体調が優れないのであれば、いったん休んで体調を整えてから、その先を考える。
そんなときに助かるのが、失業手当の受給期間の延長申請制度です。失業手当の受給期間には期限があり、退職した翌日から1年以内です。
60歳以上(65歳未満)で定年退職した場合、最長1年間延長できます。これにより、焦らずに体調を整え、次のステップに進むための余裕が生まれます。退職日の翌日から2カ月以内にハローワークで申請してください。
失業手当は、定年後も働く意思があればもらえます。そして、できるなら年金と一緒にもらいたいなと思いますよね。本来ならば同時にもらうことはできませんが、ある方法で同時にもらうことができるのです。すごくお得なのにうまく活用していない人が多いと思います。
失業手当は年金と同時にもらえる?
失業手当は、65歳を境にガラリと変わります。
高年齢求職者給付金にもメリットはありますが、もらえる額が大きいのが64歳で退職した人が対象となる基本手当です。できるなら年金と一緒にもらいたいと思いませんか?
しかし、年金と失業手当には次のようなルールがあります。
例えば、特別支給の老齢厚生年金を受給していると、年金と失業手当の2つを同時にもらえません。年金が停止されてしまいます。
また、年金の繰上げ受給をしている場合も、失業手当が支給されている間は、国民年金は受け取れますが、厚生年金が支給停止となります。
退職日は「64歳11カ月」がポイント
それではどうするか? 64歳11カ月で退職することです。64歳11カ月で退職すると、失業手当と年金の同時受給が可能です。
雇用保険法では、65歳になる2日前までが64歳とみなされます。例えば、4月2日生まれの場合、誕生日の前前日3月31日に退職した場合は64歳、誕生日の前日4月1日に退職をすると法律上では65歳です。
たった1日の違いで、基本手当になるか、高年齢求職者給付金になるかが決まります。
つまり、誕生日の前前日までに退職して、65歳以降にハローワークで求職の申込みをすることによって、65歳になっても手続き上は64歳なので失業手当を請求できるというわけです。
最大109万円受け取れる可能性も。手続きは早めに
失業手当だと、60歳~64歳までの1日あたり上限7830円(毎年8月に改訂)が支給されます。定年が理由の場合は自己都合退職となり受け取れる日数は
・1年未満の被保険者期間・・・90日
・1年以上5年未満・・・90日
・5年以上10年未満・・・120日
・10年以上20年未満・・・150日
最大だと、117万円ほど受け取れる可能性があるのです。(令和8年8月現在)
ただし、64歳11カ月で退職すると、自己都合による退職が多くなるため、失業手当の受給期間が1年になります。
求職の申込みが遅くなってしまうと、受給期間からはみ出した給付日数分は受け取れなくなるので注意してください。(※編集部注:2025年4月より、自己都合退職の給付制限期間が2カ月から「1カ月」に短縮されました)
そんなもったいないことをしないように、退職したらできるだけ早くハローワークで手続きすることをお勧めします。
この書籍の著者:社労士みなみ プロフィール
社労士YouTuberとして、年金をはじめとする「定年前後・老後のお金」をテーマに情報発信。YouTube登録者29万人。開業社労士として、企業型DC(企業型確定拠出年金)の導入支援、従業員向け投資教育、企業研修などを行い、企業と個人の両面から「老後のお金」の課題解決をサポートしている。専門的で難しい年金・社会保険・資産形成の制度を、生活者目線でわかりやすく伝えることを大切にしている。著書4冊。FP・社労士。






