定年を迎えた後、家計の見直しを考える人は多いものです。その中でも意外と手つかずになりがちなのが「保険」です。現役時代のままの保障内容を続けているケースも少なくありませんが、保障を見直すと家計にはどれくらいの差が生まれるのでしょうか。死亡保障額の一例を挙げて、試算してみました。
さらに、ファイナンシャル・プランナーでAll Aboutマネーガイドの舟本美子さんに、保険見直しのアドバイスをもらいました。
現役時代に加入した保険をそのまま継続する場合
今回は、現役時代に加入した保険をそのまま継続しており、死亡保障や特約を含めて月1万5000円程度の保険料を支払っているケースを想定します。
死亡保障:2000万円
タイプ:定期保険特約付の終身保険
医療保障:セットの特約(70歳で終了)
保険料(月額):1万5000円
保険見直しの一例
次に、65歳以降、子どもの独立やローン完済などの負担がなくなったケースを想定し、必要最低限の死亡保障(300万円程度)に絞った場合の保険料を一例として見てみましょう。
死亡保障:300万円
タイプ:終身保険(払い済み分)のみ残す
医療保障:単独の終身医療保険などに見直し
保険料(月額):6000円
見直し前と後を比べると、月9000円、年間にすると10万8000円、85歳までの20年間で浮くお金は216万円にものぼります。
この見直しは、単に支出を削るわけではありません。「毎月支払っていた保険料」を貯蓄にまわすことで、「いつでも使える現金」として持ち替えるという選択です。
もちろん、減額することや保障内容をシンプルにすることが必ずしも正解とは限りません。保険には商品ごとの特性があり、個々の健康状態や、保障の優先順位といった個別事情にあわせて備えることが大切です。
専門家のアドバイス
保険料は、一度見直すと効果がずっと続く家計管理の要です。特に定年後は、現役時代のような「子どもの教育費や家族の生活費」としての大きな死亡保障から、「自分の葬儀代や身辺整理費用」へと、保険の役割が変化する時期でもあります。
公益財団法人 生命保険文化センターによる「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」では、60代の死亡保障額の平均は男性で1010万円、女性で546万円となっています。70代になるとさらに下がり、男性618万円、女性438万円です。
このように、年齢とともに保障額を整理していくのは、以下のようなライフステージの変化があるからです。
- 子どもが独立し、教育費や生活費をカバーする必要がなくなった
- 住宅ローンを完済し、住まいの大きなリスクが解消された
- 公的な遺族年金や退職金、これまでの貯蓄で生活基盤が整った
これらの条件に当てはまるなら、平均値を参考にしつつ、ご自身の葬儀代や片付け費用をカバーできる程度まで減額しても問題ないケースが多いでしょう。
無理をして大きな保障を維持するよりも、浮いた分を自由に動かせる貯蓄に回すほうが、不測の事態への備えとして有効な場合もあります。
ただし、収入が限られる中で、浮いたお金をそのまま生活費として使い切ってしまわないよう注意も必要です。優先順位を見極め、納得のいく形で家計全体を整えることが、穏やかな老後への近道となります。







