睡眠の質が劇的に変わる!? 効果が確認された3つの運動とは
睡眠には、日中に疲れた脳や体を休ませ、傷ついた細胞を修復し、免疫機能を整える重要な役割があります。さらに、日中に得た記憶や学習内容を整理し、脳に定着させることも、睡眠の大切な働きの1つです。そして睡眠の質は、運動をして自律神経のバランスを整えることで上げられることが、これまでも多くの研究で示されてきました。
しかし現実的には、運動習慣をつけるハードルは高いものです。「忙しくて運動する時間が取れない」「ストイックな筋トレや、ジムでのトレーニングは続けられそうにない」と感じる人が大半でしょう。
実は、最新の研究で、私たちの想像以上に手軽な運動こそが、睡眠の質を劇的に変えてくれることが分かってきたのです。詳しくご紹介します。
最新研究で分かった、睡眠の質を劇的に改善した手軽な3つの運動とは
不眠症は、放置するとうつ病や心血管疾患、さらにはアルツハイマー病のリスクを高めることが知られています。薬による治療もありますが、副作用を心配する声も少なくありません。そこで、より安全で手軽な治療法として運動が注目されてきました。しかしこれまでの研究では「運動が睡眠にいい」とは言うものの、「どの運動が最も効果的なのか」については、はっきりとした比較がされていませんでした。
2025年に発表された最新の論文では、不眠症の人を対象に複数の運動を網羅的に比較し、「不眠症に最も効果的な選択肢」が報告されています。
その結果、特に効果が高いと示された運動が次の3つです。
- ヨガ
- 太極拳
- ウオーキング(散歩)やジョギング
それぞれの運動が睡眠にどのような違いをもたらしたのか、具体的に見ていきましょう。
「ヨガ」の睡眠改善効果:睡眠時間と深さの両方が改善
ヨガは、睡眠の「量」と「質」の両方において、最も高い効果が確認されました。■ぐっすり眠れ、睡眠時間が大幅に延びた
通常の生活を送っていた人と比べ、ヨガを取り入れたグループの1日の睡眠時間は約111分長くなりました
■夜中に目が覚めにくくなった
夜中に目覚め、再び眠りにくくなる「中途覚醒」の時間が約56分短縮しました
■寝付きが早くなった
布団に入ってから眠りにつくまでの時間が約30分短くなりました
「なかなか寝付けない」「夜中に何度も目が覚める」というタイプの不眠に悩んでいる方に、特に向いている運動と言えそうです。
「太極拳」の睡眠改善効果:眠りのリズムが整い、年単位で安定
太極拳にも、睡眠の質を安定して高める効果が認められました。■ぐっすり眠れるようになった
ヨガには及びませんが、1時間弱の睡眠時間の延長が確認されました
■夜中に目が覚めにくくなった
夜中に目が覚めてしまう時間が36分ほど減り、目が覚めてもすぐに寝付きやすくなりました
太極拳で特筆すべき興味深い特徴は、効果が短期的で終わらなかったことです。継続することで、1~2年にわたり良好な睡眠状態が維持されたと報告されています。
「睡眠リズムそのものを整えたい」「一時的ではなく、根本的に改善したい」人に適していると言えそうです。
「ウオーキング・ジョギング」の睡眠改善効果:日中のだるさの軽減
「よく眠れないせいで、昼間に頭がぼーっとする」「夜だけでなく日中もつらい」という人に最も効果的だったのが、散歩を含むウオーキングやジョギングなどの有酸素運動です。実際に不眠がどれくらい日中の活動に支障をきたしているかを、だるさ、集中力低下、気分の落ち込みなどを数値化した「ISI(不眠重症度質問票)」という指標で、9.57点という大きな改善が見られました。
夜の眠りだけでなく、日中のパフォーマンスまで底上げするのが特徴です。
なぜ手軽な運動が不眠に効果的なのか? 13種類の運動と比較して見えた共通点
今回の研究では、世界中の信頼性の高い22件の研究(参加者合計1348名)を対象に、「ネットワークメタ解析」という高度な手法を用いて、13種類の運動が比較されました。結果として効果が高いと分かった、ヨガ・太極拳・ウオーキングの共通点は何でしょうか?
まず、これらの運動は、ゆっくりしたリズムの動きと呼吸を組み合わせることで、高ぶった神経を鎮める効果があります。そのため、自然と入眠しやすい環境が整いやすくなるのでしょう。
ヨガは脳内のリラックス物質であるGABAの働きを促し、不安を感じやすい脳の領域(扁桃体)の過剰な活動を穏やかにすることが分かっています。また、ウオーキングなどの運動は、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げ、睡眠を促すメラトニンの分泌を助けます。いずれも乱れた睡眠リズムを整える効果が期待できます。
「頑張らない手軽な運動」こそが、良質な睡眠につながる「最適な運動」だったのです。
【まとめ】最新研究を活用した、睡眠タイプ別の最適な運動の選び方
本研究の結果を踏まえると、次のように整理できます。- とにかく睡眠時間を確保したい→「ヨガ」
- ぐっすり深く眠り、効果を定着させたい→「太極拳」
- 昼間の眠気や疲れを解消し、勉強や仕事に集中したい→「30分程度の散歩」
睡眠の質を上げるために「頑張って運動しなくては」と身構える必要はありません。一駅分歩いてみたり、寝る前に少しだけヨガのポーズをしてみたりといった小さな習慣で大丈夫です。ほんの少しの変化が、未来の「快眠」への第一歩になるでしょう。
■参考文献
Zhi-Jun Bu,Feng-Shuang Liu,Md Shahjalal,et al.Effects of various exercise interventions in insomnia patients: a systematic review and network meta-analysis.BMJ Evid Based Med.2025 Jul 15:bmjebm-2024-113512.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40664502/
https://ebm.bmj.com/content/early/2025/07/09/bmjebm-2024-113512







