公文式やそろばんなどの早期学習で計算力を磨いてきたお子さんでも、この図形分野で壁にぶつかり、保護者の方が頭を抱えるケースは後を絶ちません。なぜ、小学生向けの図形問題がこれほどまでに解けないのでしょうか?
実はその原因は、センスの有無ではなく「学習内容のレベル設定」にあります。
結論から言うと、中学受験生は小学生でありながら、中学・高校数学の幾何分野を解いているのです。この「敵の正体」を正しく把握せずに、やみくもに問題を解いても成果は上がりません。
そこで今回は、長年にわたり中学受験の最前線で指導にあたる塾講師の視点から、図形問題を攻略するための第一歩として、中学受験のカリキュラムが学校教育の「どの学年」に相当するのかをひも解いていきます。
四谷大塚「予習シリーズ」と文部科学省の検定教科書を照らし合わせながら、その過酷な現実と対策のアプローチについて解説します。なお、SAPIXや日能研のカリキュラムも、四谷大塚と大きくは変わりませんので、併せて参考にしてください。
<目次>
センスは不要! 図形問題は「パターン」で攻略できる
結論から言えば、適切な類似問題を繰り返し演習すれば、誰でも図形問題で得点できるようになります。これは、絵を描くセンスがない人でも、きちんとコツを覚えればデッサンが上達するのと同じです。さらに、図形問題は「どこかで見たことのある」パターン(例えば数値が異なるだけなど)がよく出題されます。補助線の引き方や面積比など、典型的な解法パターンに慣れれば、図形問題を得意分野にすることも可能です。ぜひ頑張っていきましょう!
それでは、まず予習シリーズ小4上巻から順に解説します。
予習シリーズ小4:中学1・2年生の基礎内容を網羅
【予習シリーズ小4上巻と中学数学教科書の対応】第3回「角の性質」 → 中2「平行と合同(平行線と角)」
第8回「三角形の角」 → 中2「三角形と四角形」
第9回「いろいろな四角形」 → 中2「平行四辺形」
第11回「三角形の面積」 → 小5「三角形の面積」
第19回「立方体と直方体の性質」 → 中1「空間図形」
このように、予習シリーズ小4上巻で学ぶ内容の多くは、中学2年の教科書で扱う単元です。つまり、書店で販売されている中学2年向け数学問題集には、類似問題が多く掲載されています。ただし、中学生用の問題集にもレベル設定があるため、単元が同じでも難易度は違う点に注意が必要です。
次に、予習シリーズ小4下巻の内容を見てみましょう。
【予習シリーズ小4下巻と中学数学教科書の対応】
第4回「立方体と直方体の体積」 → 小5「立方体・直方体の体積」
第8回「多角形の性質」 → 中2「平行と合同(多角形と角)」
第9回「円とおうぎ形」 → 中1「おうぎ形」
第11回「角柱と円柱」 → 中1「空間図形」、小6「体積」
第16回「角すいと円すい」 → 中1「空間図形(体積・表面積)」
このように、小4下巻の内容は主に中学1年で学習する単元が中心です。
ちなみに、小学校で「円やおうぎ形」の計算に円周率3.14を使わせるのは、小数のかけ算を定着させるためです。日常生活で小数のかけ算が必要となる場面として、消費税の計算などが挙げられます。将来のために小数第2位までの計算になれておく必要があり、小学校ではあえて3.14を用いて学ぶのです。
一方、中学ではπ(パイ)を使うため、計算そのものは小学生より楽になります。つまり中学受験の図形問題は、中学の内容のうち「3.14」を使って答えるタイプ、ということになります。
次は、予習シリーズ小4上下で学習した単元をより深く複合的に学ぶ予習シリーズ小5上巻について解説します。
予習シリーズ小5:「比」と「相似」で難易度は高校数学レベルへ
【予習シリーズ小5上巻と中学数学教科書の対応】第2回「いろいろな図形の面積」 → 中1「平面図形」
第8回「多角形の回転・転がり移動」 → 中1「図形の移動」
第9回「円の回転・転がり移動」 → 中1「おうぎ形」
第19回「図形上の点の移動」 → 中1「方程式の利用」
このように、小5上巻で学習する内容は、小4上下で学んだ単元をさらに深く扱うものなので、いきなり難しくなることはありません。
ところが、予習シリーズ小5下巻に進むと、内容が急に難しくなります。
【予習シリーズ小5下巻と中学・高校数学教科書の対応】
第2回「平面図形と比(相似)」 → 中3「相似な図形」
第3回「辺の比と面積比」 → 中3「平行線と線分の比」
第8回「平面図形と比(応用)」 → 高1「チェバ・メネラウスの定理」
第9回「図形の移動」 → 中1「図形の移動」
第14回「立方体・直方体の切断」 → 中1「立体の応用」
第17回「いろいろな立体の求積」 → 中1「立体の応用」
このように、小5下巻では、中学3年の「相似な図形」や高校の「図形の性質」、中1の「空間図形」から「球」「円周角の性質」「三平方の定理」を除いた範囲を学びます。
これらを新しく学ぶ「比」を使って解くため、「比の計算」や「速さと比」などの文章題が一気に増え、急に難度が上がります。ここで成績が下がる生徒や、転塾・中学受験撤退を考える生徒も増えてくるのはこのためです。
予習シリーズ小6:総復習と志望校別演習で完成させる
次は、受験学年である小6についてお伝えします。小6になると、入試問題の総合演習の意味合いが強くなります。難関校の入試問題をレベル別に分類し、解けるようになることが最終目標です。つまり、小6では新しい単元を学ぶのではなく、1年間かけて入試問題演習のレベルを上げていくのです。基本的な新出単元は小5までにすべて学び終え、総復習と特徴的な入試問題演習に集中します。
【予習シリーズ小6上巻と中学・高校数学教科書の対応】
第3回「平面図形(1)」 → 中1・2 全般
第7回「平面図形(2)」 → 中2・3 全般
第11回「立体図形(1)」 → 中1・3 全般
第12回「平面図形(3)」 → 中1~3、高1「図形の性質」
第16回「立体図形(2)」 → 中1・3 全般
入試への総仕上げとなる小6下巻では、「有名校対策」と「難関校対策」という2種類のテキストがレベル別に用意されています。
四谷大塚のコースは、S・C・B・Aの4コースに分かれています。SコースとCコースの生徒向けが「難関校対策」、B・Aコースが「有名校対策」です。テキストも、予習シリーズ、演習問題集、算数・国語の最難関問題集が準備されており、生徒のレベルによって使い分けやすくなっています。
また「四科のまとめ」もあるので、バリエーションはかなり豊富です。週テストがあるため具体的な単元名で判断はつきませんが、教材は四谷大塚の公式Webサイトから購入できますので、本格的な中学受験教材として最適です。
【予習シリーズ小6下巻の主な単元】
第3回「図形(1)」平面図形の基礎
第6回「図形(2)」平面図形の応用
第9回「図形(3)」立体図形の基礎
第12回「図形(4)」立体図形の応用
※これ以上のレベルは「最難関問題集」が対応します
中学・高校数学との関連性を理解して対策を
ここまでの内容をまとめると、中学受験の図形問題は、中学1年~高校1年までの単元から「球」「円の性質」「三平方の定理(答えが平方根になるもの)」を除いた範囲から出題されます。予習シリーズを基本教材として使えば、類題や演習問題も十分にそろっています。週テストの過去問題集も含めて、予習シリーズ関連だけで中学入試の対策は十分可能です。
しかし、こうした教材を全て使いこなすのは、現実的には難しいものです。そこで筆者が運営する柏の塾では、予習シリーズの算数の全単元について「補強プリント」というオリジナル教材を作成し、単元ごとに重要なエッセンスだけを効率よく学べるようにしています。
大手書店の学習参考書売り場には大学入試向け数学教材が多数並び、レベルやパターンもさまざまです。そのため、本人が自分のレベルに合った問題集を選ぶ分にはよいですが、保護者が子どもに合う教材を選ぶのは大変です。中学入試の算数には線分図や面積図など独特な解法もあり、家庭で教えるのも難しくなっています。
以上をふまえると、ピッタリ合う教材選びはたしかに難しいですが、図形分野は中学・高校内容を小学生向けにアレンジしたものが多いため、本記事を参考に、ぜひお子さんの学習に役立てていただければ幸いです。








