「ダウンタイム」には2種類ある
製造業では、「ダウンタイム」には、「計画ダウンタイム」と「計画外ダウンタイム」の2種類がある。「計画ダウンタイム」は、設備の効率を保ちつつ故障を予防するため、事前に計画されたタイミングで一時的に生産ラインなどを停止させること。それを人に置き換えると、前もって休みを取る日程を決めておくことなどだ。休日を心身のメンテナンスや点検、健康やモチベーションの管理などのアップグレードに充てることができるだろう。
一方、「計画外ダウンタイム」は、予期しない状況によって起こる生産ラインや設備の一時的な停止をいう。機器の故障や部品不足、電力問題などが直接的な原因となり、生産効率の低下やコスト増加をもたらすことがあるのだ。
実際、計画外ダウンタイムが発生すると、製造業であれば生産量の減産に、サービス業であればサービスの提供不足に直結する。労働時間が増え、時間が浪費され、コスト増加にもつながる。さらに、顧客の不満や不信感が増大することも想定できる。
リスクが多岐にわたる「計画外ダウンタイム」
「計画外ダウンタイム」のリスクは多岐にわたり、その影響は長期化してしまうことがある。製造業の機械や機器などの不具合が、私たち自身の心身の不調に相当する。これは自分だけの問題にとどまらず、職場の同僚が心身の不調を訴えると、自分に影響が及ぶこともある。ほかにも悪天候や感染症の流行などがサプライチェーン(物の供給や物流)に影響をもたらすことがある。これまでに水害や新型コロナウイルスがもたらした影響を思い起こせば、自由な移動に制限が加えられた生活を送ったが、何と不便だったことか。
また、ヒューマンエラーにも注目しておきたい。人間による判断ミスや見落としなども、「ダウンタイム」をもたらす原因である。さまざまな「ダウンタイム」のリスクを考慮すれば、いかに定期的に力を抜くことや、休みを取ることが重要であるか明白である。ではどうすれば、うまく力を抜くことができるのだろうか。
責任感の競争から今すぐ降りる
筆者は「責任感の競争から今すぐ降りる」ことを提案したい。責任感というのはポジティブな意味で使われることの方が多いが、それも度が過ぎると長時間労働や心身の不調などにつながりやすい。特に責任感の自己基準を他人に押し付けることが横行すると、それは古い言葉で言えば、年功序列色が強い、いわゆるパワハラ気質な職場環境をつくりかねない。言うまでもなく「責任感の強さ」は日本人の美徳であるだろう。実際、筆者は東南アジアで6年間勤務し、国内でも、米国企業の日本法人で多国籍の人たちと共に長年働いた経験がある。その時、日本人の仕事への責任感はどこの国の人よりも強いと感じた。もちろんこれは個人の主観に過ぎない話だが、共感する人は多いのではないだろうか。
これは国民性と言ってもいいのかもしれない。責任感の強さは、企業の事業活動にとどまらず、現に国際レベルのスポーツ大会で優れた成果を出している。
行き過ぎると責任感の競争に……
しかし、それが行き過ぎるとプレッシャーとなる場合もある。日本人の責任感の強さを逆手に取れば、不当に高いノルマを現場に押し付ける会社も出てくるだろう。品質管理の厳しさの陰で現場にプレッシャーがかかり、数字の偽装などが発生した事例も事欠かない。いわば「責任感の競争状態」が生まれがちであり、その過程で必要以上に仕事に時間をかけることはないだろうか。日本人の残業時間は、世界でも突出して長いと言われている。特別に日本人の生産性が低いわけではないだろうから、職場が責任感の過度な競争状態にないかどうか、一度注目してみてもいいだろう。
「なるようになる」自らを解き放つ
責任感の競争から解放されることで、私たちはもっと気楽に力を抜き、休む時間を増やすことができるのではないだろうか。ちなみに責任感の競争から降りるからといって、それは「無責任になる」ということではないので、そこは誤解がないようにしてほしい。適度な責任感を持ち、仕事へのコミットメントやモチベーションを発揮することで、私たちは十分に会社や取引先などとの信頼関係を築けるはずだ。「なるようになる」「しばらく寝かしてみる」「人に任せてみる」「ほどほどにする」……。過度なプレッシャーから自らを解き放つために有効な言葉がたくさんある。気持ちが穏やかに落ち着く言葉をいろいろと探してみると、私たちはうまく充電し、自らの「ダウンタイム」から早期回復できるのではないだろうか。








