芝居は俳優同士のセッションの場でもある(佐藤)
――取調室でのタゴサクと類家のバトルはかなり壮絶な頭脳戦でしたが、例えば撮影合間など、敵役の俳優さんとは会話をしないようにするなど、意識したことはありますか?佐藤:僕は敵対する相手を演じる俳優さんとも撮影合間にはよく話します。もちろん役の関係性を考えて、できるだけ話さないようにする俳優さんもいらっしゃいますし、人によってやり方があると思いますが、僕と裕貴は、この映画のリハーサルや撮影を通してたくさん話をしました。
芝居は、どのようなシーンでも、基本は俳優同士のセッションだと思うんです。特にこの映画におけるスズキタゴサクと類家の関係性はくせ者同士の対決でもありますが、互いに共鳴している一面もあります。 ――確かに、取調室のシーンは、周りの人は口を挟めない、2人だけの精神的にギリギリの戦いという印象がありました。
佐藤:類家と僕が笑い合うシーンがあるのですが、台本には「笑う」とは書かれていないんです。裕貴が笑ったので、僕も笑いながら言った。そこには2人にしか分からない通じ合う瞬間がありました。これぞセッションの醍醐味(だいごみ)ではないかと。こういう芝居は互いに信頼がないと生まれないと思います。
山田:二朗さんとはさまざまなお話をしましたね。撮影合間に一度「二朗さんは自分のお芝居がつまらないと思ったことありますか?」と聞いたことがありました。
佐藤:撮影の直前にね。いきなり何を言い出すのかと(笑)。
山田:僕は最近、自分の芝居に満足できないんです……など、個人的な会話を交わした後、すぐ本番に入り、僕らはタゴサクと類家になり、監督のカットがかかった瞬間、また元に戻りました。撮影現場では、そんなふうに自分と役のスイッチを切り替えながら会話をしていましたね。
佐藤二朗という俳優のすごさを目の前で感じた(山田)
――取調室で対峙(たいじ)するシーンで、お互いの芝居を受け止めて、改めて感じたことはありますか?佐藤:取調室のシーンは、裕貴だけではなく、染谷将太さん、渡部篤郎さんという素晴らしい俳優らとも芝居をしています。タゴサクは刑事を翻弄し、刑事はタゴサクから爆発する場所を聞き出そうとし、そのやりとりはかなり白熱するのですが、演じている僕としては、芝居対決している意識はなく、一緒に高みに登っていくという感覚でした。
スタッフとキャストが一丸になって作り上げていく撮影の現場では、1人の俳優だけがうまくてもダメなんです。俳優同士が一緒に高いところを目指さないと。この映画の場合「このメンバーなら絶対に大丈夫!」と確信して撮影に臨みました。毎日充実しており、妻に「今日も楽しかったよ」と報告するほどでしたね(笑)。 山田:二朗さんは多くの悪役のスタイルを理解した上で、タゴサクを綿密に分析して表現していました。でも二朗さんは「タゴサクのことがよく分からなかった。分かってはいけないと思った」とおっしゃっていて「分からなくてもあの素晴らしいお芝居ができるのか」と驚きました。
――確かにタゴサクは何を言い出すか分からない、予測不可能な人物ですよね。
山田:二朗さんの表現はとても細かいんですよ。ウワーと大きな声を出したと思ったら、両手で顔を覆ってみたりするなど、細かいこだわりが詰まっています。独特なセリフ回しも含めて、二朗さんの絶妙な芝居を目の前で拝見できて、改めてすごい俳優だと思いました。
佐藤:僕は褒められるのが大好きなので、裕貴、僕を褒めるのに遠慮はいらないよ、どんどん話して(笑)。
>次ページ:永井聡監督を手こずらせた山田裕貴!?











