暴行事件で逮捕されたスズキタゴサクと名乗る男(佐藤二朗)は取調室で「霊感で事件を予知できます。これから3回、次は1時間後に爆発します」と奇妙なことを言い出します。爆発の場所、目的などは語らず、クイズを出して警察関係者をけむに巻くタゴサク。警視庁捜査一課の類家刑事(山田裕貴)は彼から真実を聞き出そうと取り調べを開始するのですが……。
取調室で繰り広げられる男2人の頭脳バトルや、都内に仕掛けられた爆弾を探し、奔走する警察たちの姿が、スリリングかつ熱く描かれるリアルタイムミステリー映画です。まず、お二人に出演を決めた理由についてお伺いしました。
<目次>
映画『爆弾』出演、山田裕貴さん&佐藤二朗さんにインタビュー
――最初に原作や脚本を読まれたときの感想と出演の決め手について教えてください。佐藤二朗さん(以下、佐藤):原作小説を読んだとき、とてつもなく面白い!と思いました。そしてスズキタゴサクと自分には共通点があることに気付いたんです。どこにでもいそうな風ぼう・中年・小太り・シンプルな名前・中日ドラゴンズファン。それで一気に親近感が湧いて、嬉々として出演させていただきたいとお返事をしました。
山田裕貴さん(以下、山田):僕も原作を読んで、めちゃくちゃ面白いと興奮しました。ストーリー、サスペンス、キャラクターなど、エンターテインメントの要素がぎっしり詰まっているので、この原作を2時間の映画に収めるのは大変だなと思ったくらいです。
出演の決め手となったのは、この映画のプロデューサーの言葉です。僕が出演した『東京リベンジャーズ』シリーズと同じ方なのですが、その方から「山田くんのイメージは類家にピッタリだと思ったんだ。だからオファーしたんだよ」と言われまして。確かに類家のような一面があるかもしれないと思い、出演を決めました。
役作りから二朗さんにかなわないと感じた(山田)
――映画『爆弾』は取調室での佐藤さんと山田さんの頭脳戦がとてもスリリングでした。スズキタゴサクも類家も風変わりなキャラクターですが、どのように役を作り上げていきましたか?佐藤:この映画において、スズキタゴサクは悪役カテゴリに入るキャラクターですが、いわゆる “悪のカリスマ” と言われるキャラクターとは違うんです。彼らの多くは悪の哲学を持っています。しかし、タゴサクにはそれがない。さらに特殊能力があるわけでもないし、力が強いわけでもない。彼は誰もが心にふたをしてきた感情を表現しているだけ。それは“悪意”です。
誰もが心の中で小さな悪意を抱く瞬間はあると思うんです。「あなたたちだって同じでしょう」と。彼はそう語っているのではないかと考え、その点を意識して演じました。 ――山田さんはいかがですか?
山田:二朗さんがおっしゃっているように、映画界には魅力的な悪役が多く、そこから学ぶことは多いと思います。しかし、スズキタゴサクのような“普通のおじさん”の悪役はあまりいないので、とても想像力が必要な役だったのではないでしょうか。
タゴサクはおしゃべりで人懐っこさもあるけれど、心の奥底は深くて黒い。そのどん底から光のある場所を求めていると感じました。僕はそんな難役を演じている二朗さんを見ていたら、自分の役作りは二朗さんほどの高みには達していないと感じてしまいました。
類家は天才肌で頭の回転が速いので、早口でセリフを言うことくらいしか役作りをしていなかったかもしれません。しいて言うならペンをくるくる回すシーンで動きを工夫しましたが。まだまだ二朗さんにはかないません。
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