佐藤信介監督が語る『今際の国のアリス』シーズン3、撮影現場の裏側
佐藤信介監督にインタビュー。撮影の裏側などについて“ネタバレあり”で語っていただきました。――シーズン3のオリジナルストーリーについて、原作者の麻生羽呂さんから「これだけは守ってほしい」などのリクエストはなかったのでしょうか?
佐藤信介監督(以下、佐藤監督):シーズン1~3それぞれの脚本が仕上がった段階で麻生さんに見ていただき、意見交換をしながら進めていきましたので、特に問題なくスムーズに進めたと思います。
――渋谷の街の巨大セットを作るなど大掛かりな仕掛けが『今際の国のアリス』の魅力でもありますが、シーズン3のセットについて教えてください。
佐藤監督:シーズン3では「ミライすごろく」に登場する特殊な部屋は実際に作りました。もちろん25部屋作ったのではなく、実際には1部屋半です。「このターンでは、アリスはこちらから入って、こちらから出る」など、5×5の部屋と東西南北を想定し、全て計算して撮影を進めました。最初から撮影に関わっていた人物でも混乱してしまうような複雑な撮影でしたね。
――一番大掛かりだったのは「ミライすごろく」ですか?
佐藤監督:ラストの濁流シーンですね。これはかなり大掛かりな撮影になりました。 ――プレイヤーがずぶ濡れになって流されていくシーンですね。
佐藤監督:実際の撮影に加えて、CGも使いましたが、実際にキャストの皆さんはずぶ濡れになり、泥まみれのまま濁流に流されまして。賀来賢人さんも打ち上げで「なんでこんなことをやっているのか、わけが分からなかった!」と笑っていました(笑)。
撮影するにあたっては、スタッフとともに準備を完璧に整えて、安全を確認し、各シーンの設計をして、万全な状態で撮影に臨みましたが、スタッフも大変な作業となり、シーズン3の中で一番大変な撮影でした。
賀来賢人さんと玉城ティナさんの役割について
――シーズン3の重要人物のリュウジは、賀来賢人さんが演じていますが、賀来さんについて教えてください。佐藤監督:リュウジは、原作に登場しない完全オリジナルキャラクターです。マッドサイエンティスト的な存在で、敵か味方かよく分からない、謎めいた立ち位置の人物にしようと考えました。
賀来さんと役についてお話しした際、彼が考えていたリュウジのキャラクターは、僕の考えていたリュウジとマッチしており、キャラクターの内面の把握力が非常に高い方だと思いました。リュウジはとても複雑な思考の持ち主でしたが、その謎めいたキャラクターをリアルに表現していただけたと思っています。 ――リュウジは脚が不自由で、ずっと車椅子に乗っていました。
佐藤監督:リュウジはある事情で車椅子生活をすることになったという設定にしました。かなり動きが制限されるのでやりにくかったとは思います。
また、リュウジは生と死の狭間の世界に捉われてしまい、バンダと恐ろしい契約をしてしまう人物ですが、「今際の国」でのげぇむやプレイヤーとの関係を通して、変化を見せていきます。登場人物の中で一番振り幅が大きい役だと思いますが、賀来さんは本当に素晴らしいお芝居を最後まで見せてくださいました。
――敵か味方が分からない存在といえば、レイ役の玉城ティナさんも印象的でした。
佐藤監督:玉城さんが演じたレイは、シーズン1と2にはいないタイプの人物なんですね。敵か味方か分からない人物で振り切ったキャラクターを想定していました。玉城さんの出演が決まった後、「レイはどういう服装だろうか」とかなり時間をかけてスタッフと考え、あのビジュアルに決まったんです。
「ミライすごろく」で描きたかったこと
――「ミライすごろく」の未来パネルを見て、レイがアニメ好きで、あのような未来を夢見ていたというのが分かり、ふわふわした存在からリアルな女性へと見方が変わりました。あの未来映像は、キャラクターの人物像もよく分かるように作られていますね。佐藤監督:未来モニターに映し出される未来は、明るい未来も最悪な未来も、実際にはまだ発生していないものの、そこに映し出される世界は、それぞれのキャラクターが持っている性格、思考、過去の行動に基づいているんです。人間は誰でも「やりたかったけど諦めたこと」ってあると思うんですよ。そういう部分をそれぞれのキャラクターに当てはめて描きました。
『今際の国のアリス』シーズン1、2では、プレイヤーに意外な過去があったり、複雑な家庭環境だったり、トラウマを抱いていたりなど、その人がたどっていた過去を描きましたが、シーズン3では、過去を踏まえた上で未来を見るという、これまでのシーズンとは違うひねりを加えました。
シーズン1、2の登場人物の復活と意味深なラストシーン
――最後にシーズン1と2で活躍した登場人物が出てきますが、この意図は?佐藤監督:原作コミックを読んだ方は分かると思うのですが、最終巻に街頭インタビューのシーンがあります。「あなたにとって生きることとは」という問いをいろいろな人に聞くのですが、アリスも偶然そのインタビューを受けるんです。
実はプロデューサーがその街頭インタビューのシーンが好きで、「このシーンを描きたいから『今際の国のアリス』を制作したいと思った」と、シーズン1の時に言っていたんです。ただシーズン1、2を作った後に、そういえばインタビューシーンをやらなかったと気付きまして。「シーズン3でやりたい」とずっと考えていました。できれば、視聴者の皆さんが忘れた頃に登場させたかったんです。
そこでインタビューシーンに、シーズン1、2で活躍したキャラクターたちに登場してもらいました。ファンの方にも「チシヤ出なかったな」と思ったら「来た!」と喜んでいただけるのではないかと思ったんです。 ――きっと皆さん喜んでいると思います! またラストシーンが意味深で気になりました。
佐藤監督:そうですね。『今際の国のアリス』は生と死の問題を扱っており、その問題は永遠に終わることはないと思うんです。シーズン3のラストは、きれいに終わるパターンも書いていたのですが、僕はストーリーを考える時、自然と1つのストーリーが、次のストーリーにつながっていくことがよくあり、今回もその流れの中で、世界は続いていく……という終わり方にわりと自然に落ち着いていきました。
――では最後に、これから『今際の国のアリス』を見る方に向けて、メッセージをいただきたいです。
佐藤監督:劇場で見る映画と違い、Netflixなど配信のドラマは、いつでも最初から見ることができるのが魅力だと思います。『今際の国のアリス』シーズン3は、全く新たな物語、先の見えない展開です。ぜひシーズン1、2を見て、その世界を楽しんだ上で、予備知識なしでシーズン3を見ていただきたい。新たなげぇむをぜひ楽しんでください。
>>>佐藤監督がシーズン3を「完全オリジナル物語」にした理由
Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3
2025年9月25日(木)よりNetflixにて世界独占配信シーズン1~2:Netflixにて独占配信中
出演:山崎賢人、土屋太鳳、磯村勇斗、三吉彩花、毎熊克哉、大倉孝二、須藤理彩、池内博之、
玉城ティナ、醍醐虎汰朗、玄理、吉柳咲良、三河悠冴、岩永丞威、池田朱那、賀来賢人
原作:麻生羽呂『今際の国のアリス』(小学館『少年サンデーコミックス』刊)
監督:佐藤信介
脚本:倉光泰子、佐藤信介
音楽:やまだ豊
撮影監督:河津太郎
美術監督:斎藤岩男、中山慎
アクション監督:下村勇二
VFXスーパーバイザー:土井淳
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆
プロデューサー:森井 輝、高瀬大樹
制作協力:株式会社THE SEVEN
企画・制作:株式会社ロボット
©麻生羽呂・小学館/ROBOT
製作:Netflix