
「元々の性格だから治らない」……うつ病の治療中、諦めの気持ちを変える第一歩とは?
朝から気持ちがさえず、1人になると不安が押し寄せてくる……。そのような心の不調は、誰にでも起こりうるものです。学校や職場に行くのがつらくなったとき、精神科への受診を考える方もいますが、実際には「ハードルが高い」と感じてしまう人も少なくありません。
そうした中、周囲の人が心配して背中を押してくれたことをきっかけに来院する患者さんもいます。筆者もそうしたケースを何度も経験してきました。
外来での通院中、患者さんの口から「気持ちが落ち込んでいるのが自分の普通」といった言葉が出ることがあります。そうした様子を見て、「もしかして、うつ病は治療では治せないと思っていませんか?」と尋ねると、決まりの悪い苦笑いが返ってくることも少なくありません。
しかし「うつ病=性格の問題」ではありません。
うつ病治療のカギは「理解」と「継続」
うつ病を克服するためには、治療の仕組みを正しく理解することが欠かせません。治療効果を信じられないと、薬の飲み忘れが増えたり、通院が面倒になったりして、回復が遅れてしまうことがあるためです。うつ病の治療のポイントは、大きく2つあります。まずは、しっかりと休養を取ること。そして、医師の指示通りに毎日決まった時間に薬を服用することです。
抗うつ薬は即効性のある薬ではありません。効果が現れるまでに1カ月ほどかかることが一般的で、初診時の症状が落ち着くまでにはおおよそ3カ月の時間を要します。
見方を変えれば、うつ病は適切な精神科治療を受けることで、3カ月ほどで改善する可能性のある“治せる病気”なのです。途中で自己判断で薬をやめないことが大切です。
「変な落ち込み」がなくなることが回復のサイン
実際、初診時に「1人になると涙が止まりません」と話していた患者さんが、治療開始から3カ月ほどたった頃に「先生、もう変な落ち込みはなくなりました」と話してくれたことがありました。この言葉の通り、抗うつ薬は「元気にする薬」というよりも、「不自然な落ち込みを取り除く薬」といえます。どうか、「憂鬱(ゆううつ)な気持ちは治らない」と決めつけず、焦らずゆっくりと治療を続けてみてください。諦めない気持ちこそが、回復への第一歩です。