そんなトランスフォーマーをはじめ、数々の人気ロボットにインスパイアされ、廃材を利用してロボットを作っている人がいました。ポーランド南西部オポレ県を拠点に活動するアーティスト、セバスチャン・クハルスキ氏です。
今回プレスツアーで訪れたオポレ県では、このロボットミュージアムをはじめ、99本の塔を持つホグワーツ城のような宮殿、蜂サウナや花の道など、個性的な体験スポットを巡ってきました。
廃材がトランスフォーマー風ロボットに変身!
クハルスキ氏が捨ててあった車の廃材などを見つけてロボット作りをスタートしたのは2012年のこと。最初は自宅ガレージで趣味として始め、その後2016年にモシュナの村に工房兼ミュージアムをオープンさせています。館内で目を引いたのが巨大な作品の数々。例えば、トランスフォーマーにインスパイアされたロボットは高さ3m、重さ630kg、制作時間は760時間にも及ぶもの。ほかにも『スター・ウォーズ』『プレデター』『ウォーリー』『ターミネーター』など、数々のSF映画から刺激を受けて制作した廃材ロボットが並んでいました。 そうかと思えば、ミニオンのような愛嬌(あいきょう)あるキャラクターもあって和みます。 材料は全て自動車のスクラップや鉄鋼廃棄物といったリサイクル品。なかにはスキー板の金具や鍋のふたなど、意外なものが再利用されているので、じっくり観察すると、面白い発見があります。
その独創性から過去にはディズニーやスターウォーズの関係者からコンタクトもあったそうですが、当時は建築関係の本業があり、仕事にはつながらなかったとのこと。
その後、仕事としてロボット制作の注文も受け付けるようになり、いまはベルギーやドバイなどポーランド国外からの依頼もきているそう。価格は作品によって幅がありますが、なかには数万ユーロ(数百万円)のものも!
ちなみにクハルスキ氏はコレクターとしての一面もあり、ミュージアムには『プレデター』3作目で実際に使われた本物の剣や、『ターミネーター』T-800を動かしたバッテリーや水素燃料電池も展示されていました。映画ファンなら見逃せません。 そのほか手のひらサイズの作品や、LEDを仕込んだり動きや音を加えたりしたインタラクティブな作品もあります。取材時はクハルスキ氏自ら作品を説明してくれたのですが、創作が楽しくてたまらない様子が伝わってきました。
創作の原点は子どもの頃から廃材で遊んでいたこと、そしてロボットが好きなことだそう。趣味で始めたロボット作りがいつしか世界各地にファンを作るようになるなんて実に夢のある話です。
ミュージアムは2019年にはオポレ県の観光商品コンペで「最優秀観光商品賞」を獲得。また、2024年にはナショナルジオグラフィックに「ポーランドの奇跡」と紹介されるなど高く評価されています。
まるでホグワーツ城! 99本の塔と365の部屋を持つ泊まれる城
ロボットミュージアムのすぐそばに建つモシュナ城もお見逃しなく。99本の塔と365の部屋を持つ姿は、まるで童話の世界。ネオゴシック、ネオバロック、ネオルネサンスが混在する折衷様式で、『ハリー・ポッター』に登場するホグワーツ城に似ていると話題に。 もともとは18世紀に建てられた狩猟用邸宅で、19世紀末に火災で焼失したものの、当時の大富豪ティーレ=ヴィンクラー家によって再建されました。戦後はソ連軍に接収され、1960年代からは精神病院として利用されていた時代もあったそうです。 現在は修復が進み、ホテルやレストランを備えた泊まれるお城として人気を集めています。 内部は見学が可能。オフィスとして使われていた部屋には当時のピアノが現存。ほかにチャペルのステンドグラスや図書室の本棚なども当時のまま保存されています。 ちなみに周囲に広がる庭園とあわせて、ウエディングフォトの撮影地として使われることもあります。お城でウエディングフォトなんて、なんともロマンチックです。宮殿レストランに蜂サウナ! まだまだある個性派スポット
実はモシュナ城以外にもポーランド国内には泊まれるお城や宮殿がたくさんあります。オポレ近郊のヴィエクシツェ宮殿も、落ち着いた外観が印象的な歴史的建築。現在はレストランとして営業しており、優雅な気分で食事を楽しめます。 取材時にいただいたのは地域の伝統料理。日曜や祝日に親しまれるスープ「ロスウ」をはじめ、豚肉のカツレツ、春キャベツ、ポテトなど、どれも家庭的な味わいの料理です。宮殿のクラシカルな雰囲気と素朴な料理という意外性が心地よい組み合わせでした。オポレ郊外にはほかにもユニークな体験スポットが点在しています。養蜂場「パシエカ・グーチョ」もその1つ。ここではちょっと変わった健康法「アピセラピー(蜂療法)」を体験できます。 アピセラピーとは蜂の巣箱を小屋の下に設置し、そこから立ち上る温かい空気や香り、羽音に包まれながらリラックスするというもの。呼吸器の不調やストレス緩和に効果があるとされています。
実際に木造の小屋に入ってみると、足元の巣箱から28~30度の温かい空気がじんわりと流れてきました。自然の力をまるごと体感できる、いわば蜂のサウナ。初めての不思議な安らぎでした。 生産している蜂蜜の種類も豊富で、アカシア、菜の花、ミックスなど多彩なラインアップです。 もし、聖体節(コープス・クリスティ)の時期に訪れるなら、ザレシェ・シロンスキェなどの村々で見られる「花の道」も必見。色とりどりの花びらで道を埋め尽くすこの伝統は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。村人総出で早朝から花を敷き詰める光景や正装した家族が厳かに行進する姿に、深い信仰心や脈々と受け継がれてきた文化の重みを感じずにはいられません。
ユニークな体験が目白押しのポーランド・オポレ地方。個性豊かな格別の非日常感を味わえるエリアです。
取材協力:ポーランド政府観光局






















