ポーランド

廃材が巨大トランスフォーマー風に! ポーランドで日本ルーツのロボットを生む「たった1人」の夢工場

廃材で巨大ロボットを作るポーランドのアーティストが世界で注目されています。人気ロボットにインスパイアされた作品は海外からも注文が。ミュージアムがあるオポレ県には、99本の塔を持つ泊まれる城や蜂サウナなど、ユニークなスポットが点在しています。

古屋 江美子

古屋 江美子

旅行 ガイド

ライター。旅行やグルメを中心にWebや雑誌など様々な媒体で活躍。これまでに訪れた国は約40ヶ国。出産後は育児ジャンルにも活動の場を広げ、出身地である山梨県の「やまなし大使」としても様々な情報を発信中。現在は神奈川県在住。

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車の廃材などを使ったロボットを作るアーティスト、セバスチャン・クハルスキ氏。トランスフォーマーにインスパイアされた作品の前で

車の廃材などを使ったロボットを作るアーティスト、セバスチャン・クハルスキ氏。トランスフォーマーにインスパイアされた作品の前で

トランスフォーマーといえば、タカラ(現タカラトミー)が1970年代に展開していた「ミクロマン」や「ダイアクロン」シリーズをルーツに、1984年にアメリカで誕生した変身ロボット。いまや世界的人気を誇ります。

そんなトランスフォーマーをはじめ、数々の人気ロボットにインスパイアされ、廃材を利用してロボットを作っている人がいました。ポーランド南西部オポレ県を拠点に活動するアーティスト、セバスチャン・クハルスキ氏です。

今回プレスツアーで訪れたオポレ県では、このロボットミュージアムをはじめ、99本の塔を持つホグワーツ城のような宮殿、蜂サウナや花の道など、個性的な体験スポットを巡ってきました。
<目次>

廃材がトランスフォーマー風ロボットに変身!

モシュナにあるロボットミュージアム

モシュナにあるロボットミュージアム。外からは中の様子はうかがえない

クハルスキ氏が捨ててあった車の廃材などを見つけてロボット作りをスタートしたのは2012年のこと。最初は自宅ガレージで趣味として始め、その後2016年にモシュナの村に工房兼ミュージアムをオープンさせています。

館内で目を引いたのが巨大な作品の数々。例えば、トランスフォーマーにインスパイアされたロボットは高さ3m、重さ630kg、制作時間は760時間にも及ぶもの。ほかにも『スター・ウォーズ』『プレデター』『ウォーリー』『ターミネーター』など、数々のSF映画から刺激を受けて制作した廃材ロボットが並んでいました。
かわいいミニオン風ロボットがお出迎え

かわいいミニオン風ロボットがお出迎え

そうかと思えば、ミニオンのような愛嬌(あいきょう)あるキャラクターもあって和みます。
セバスチャン・クハルスキ氏の廃材アート

間近で見ることができるのでどんなものが使われているか観察も楽しい

材料は全て自動車のスクラップや鉄鋼廃棄物といったリサイクル品。なかにはスキー板の金具や鍋のふたなど、意外なものが再利用されているので、じっくり観察すると、面白い発見があります。
 
その独創性から過去にはディズニーやスターウォーズの関係者からコンタクトもあったそうですが、当時は建築関係の本業があり、仕事にはつながらなかったとのこと。

その後、仕事としてロボット制作の注文も受け付けるようになり、いまはベルギーやドバイなどポーランド国外からの依頼もきているそう。価格は作品によって幅がありますが、なかには数万ユーロ(数百万円)のものも!
  
ちなみにクハルスキ氏はコレクターとしての一面もあり、ミュージアムには『プレデター』3作目で実際に使われた本物の剣や、『ターミネーター』T-800を動かしたバッテリーや水素燃料電池も展示されていました。映画ファンなら見逃せません。
セバスチャン・クハルスキ氏(写真:升谷 玲子)

セバスチャン・クハルスキ氏。本人自ら説明してくれることも(写真:升谷 玲子)

そのほか手のひらサイズの作品や、LEDを仕込んだり動きや音を加えたりしたインタラクティブな作品もあります。取材時はクハルスキ氏自ら作品を説明してくれたのですが、創作が楽しくてたまらない様子が伝わってきました。

創作の原点は子どもの頃から廃材で遊んでいたこと、そしてロボットが好きなことだそう。趣味で始めたロボット作りがいつしか世界各地にファンを作るようになるなんて実に夢のある話です。

ミュージアムは2019年にはオポレ県の観光商品コンペで「最優秀観光商品賞」を獲得。また、2024年にはナショナルジオグラフィックに「ポーランドの奇跡」と紹介されるなど高く評価されています。

まるでホグワーツ城! 99本の塔と365の部屋を持つ泊まれる城 

ポーランドのモシュナ城

モシュナ城。ロボットミュージアムのすぐ近くにある

ロボットミュージアムのすぐそばに建つモシュナ城もお見逃しなく。99本の塔と365の部屋を持つ姿は、まるで童話の世界。ネオゴシック、ネオバロック、ネオルネサンスが混在する折衷様式で、『ハリー・ポッター』に登場するホグワーツ城に似ていると話題に。
なんと魔法の冒険をテーマにしたプログラムが開催されることも

なんと魔法の冒険をテーマにしたプログラムが開催されることも

もともとは18世紀に建てられた狩猟用邸宅で、19世紀末に火災で焼失したものの、当時の大富豪ティーレ=ヴィンクラー家によって再建されました。戦後はソ連軍に接収され、1960年代からは精神病院として利用されていた時代もあったそうです。
モシュナ城の客室

部屋のタイプはいろいろ。時期にもよるがリーズナブルな部屋なら1室1万円台で泊まれることも

現在は修復が進み、ホテルやレストランを備えた泊まれるお城として人気を集めています。
伯爵のオフィスだった部屋

伯爵のオフィスだった部屋。階段や大理石の柱で区切られている

内部は見学が可能。オフィスとして使われていた部屋には当時のピアノが現存。ほかにチャペルのステンドグラスや図書室の本棚なども当時のまま保存されています。
モシュナ城のカフェ

カフェで一休みするのもいい記念に。ほかにレストランもある

ちなみに周囲に広がる庭園とあわせて、ウエディングフォトの撮影地として使われることもあります。お城でウエディングフォトなんて、なんともロマンチックです。

宮殿レストランに蜂サウナ! まだまだある個性派スポット

ヴィエクシツェ宮殿

ヴィエクシツェ宮殿。かわいらしい内装のレストランになっている

実はモシュナ城以外にもポーランド国内には泊まれるお城や宮殿がたくさんあります。オポレ近郊のヴィエクシツェ宮殿も、落ち着いた外観が印象的な歴史的建築。現在はレストランとして営業しており、優雅な気分で食事を楽しめます。
ポーランドのスープの一つ、パスタ入りコンソメスープ「ロスウ」

ほっとする味わいの「ロスウ」。ポーランドはスープの国で種類は多彩

取材時にいただいたのは地域の伝統料理。日曜や祝日に親しまれるスープ「ロスウ」をはじめ、豚肉のカツレツ、春キャベツ、ポテトなど、どれも家庭的な味わいの料理です。宮殿のクラシカルな雰囲気と素朴な料理という意外性が心地よい組み合わせでした。

オポレ郊外にはほかにもユニークな体験スポットが点在しています。養蜂場「パシエカ・グーチョ」もその1つ。ここではちょっと変わった健康法「アピセラピー(蜂療法)」を体験できます。
アピセラピーのための小屋。ベンチの下にハチがいる(通常は右のようにフタをして使う)

アピセラピーのための小屋。ベンチの下にハチがいる(通常は右のようにふたをして使う)

アピセラピーとは蜂の巣箱を小屋の下に設置し、そこから立ち上る温かい空気や香り、羽音に包まれながらリラックスするというもの。呼吸器の不調やストレス緩和に効果があるとされています。

実際に木造の小屋に入ってみると、足元の巣箱から28~30度の温かい空気がじんわりと流れてきました。自然の力をまるごと体感できる、いわば蜂のサウナ。初めての不思議な安らぎでした。
ハチミツ各種

ハチミツは瓶詰め前に24時間寝かせて泡を落ち着かせるなど、ひと手間かけた丁寧な製法で作られている

生産している蜂蜜の種類も豊富で、アカシア、菜の花、ミックスなど多彩なラインアップです。
ザレシェ・シロンスキェの聖体節の花の道(写真:升谷 玲子)

ザレシェ・シロンスキェの聖体節の花の道(写真:升谷 玲子)

もし、聖体節(コープス・クリスティ)の時期に訪れるなら、ザレシェ・シロンスキェなどの村々で見られる「花の道」も必見。色とりどりの花びらで道を埋め尽くすこの伝統は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。村人総出で早朝から花を敷き詰める光景や正装した家族が厳かに行進する姿に、深い信仰心や脈々と受け継がれてきた文化の重みを感じずにはいられません。
 
ユニークな体験が目白押しのポーランド・オポレ地方。個性豊かな格別の非日常感を味わえるエリアです。

取材協力:ポーランド政府観光局
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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