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Q. 「CBD」とは、要は大麻なのでしょうか? CBD入り製品はなぜ違法ではないのですか?

【薬学博士、麻薬研究者が回答】CBD製品は大麻草を原料に製造されていますが、THCを含まなければ違法ではありません。ただし効果や安全性は未解明ですので、使用は自己責任になります。分かりやすく解説します。

阿部 和穂

阿部 和穂

脳科学・医薬 ガイド

東京大学薬学部卒業、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員、星薬科大学講師を経て、武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳科学と医薬。

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Q. 「CBD」とは、要は大麻なのでしょうか? CBD入り製品はなぜ違法ではないのですか?

CBD

大麻草を原料とする化合物「CBD」。よく見かける製品に、違法性は? ※画像:Shutterstock.com


Q. 「最近『CBD』という成分名をよく耳にしますが、要は大麻の成分なのでしょうか? 大麻だとすると、『CBDオイル』や『CBDサプリ』などは、なぜ違法ではないのですか? 普通に売られているようですが、危険で有害だと考えた方がいいのでしょうか?」

A. 大麻草を原料とする化合物で違法性はありません。一方で、安全性は未解明です

CBDとは「カンナビジオール」の略で、大麻草を原料とする化合物ですが、大麻ではありません。

少し複雑なので、丁寧に解説しましょう。

大麻草由来の成分として注目される主な化合物には、CBD以外に、テトラヒドロカンナビノール(THC)があります。いわゆる規制薬物としての大麻を使用した際に問題となる精神作用に関与しているのは、THCの方であり、CBDには精神作用はほとんどありません。そのため、THCは「麻薬」として規制されていますが、CBDは何ら規制対象になっていないのです。

なお、一般にはあまり認識されていないかもしれませんが、実はTHCもCBDも自然の大麻草には含まれていません。生の大麻草が含んでいるのは、「テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)」と「カンナビジオール酸(CBDA)」です。大麻草を採取した後、乾燥・貯蔵・加工を経ているうちに、光、熱、空気(酸素)によって化学変化が起こり、THCAとCBDAから二酸化炭素(CO2)がとれて(この過程を「脱炭酸」と言う)、それぞれTHCとCBDに変化するのです。つまり、THCもCBDも、自然に存在するものではなく、人間が手を加えることによって作り出した成分と言えます。

そして、THCとCBDの元になるTHCAとCBDAは、大麻草の体内で分布が異なります。THCAは、葉や花穂(特に雌花)に多く含まれていますので、これらの部位を採取して加工するとTHCを含むドラッグとしての「大麻」になります。一方、成熟した茎や種子は、CBDAを含みますが、THCAがほとんど存在せず、単純な加工(大きな化学変化を起こすような操作は除く)だけではTHCは生じません。法律で大麻を「大麻草(その種子及び成熟した茎を除く。)及びその製品(大麻草としての形状を有しないものを除く。)をいう」と定義しているのは、このためです。

現在市販されているCBDオイルやCBDサプリなどの製品の多くは、法律上の大麻に該当しない大麻草の種子(いわゆる麻の実)を原料にして製造されています。THCが混入していなければ、個人の自由として購入・使用しても違法性はありません。海外ではCBDを有効成分とする医薬品が一部承認され、日本でも治験が始まっています。

ただし、CBDを含む製品は、自然素材であるがゆえに品質が一定せず、中にはわずかながらTHCが混入していることもあります。知らなかったとしても、そのような製品を所持または使用すれば、違法になります。また、リラックス効果や不眠改善効果などをうたって販売されているものもありますが、本当にそのような効果があるのかのエビデンスは乏しいです。加えて、医薬品として認可されているわけでもないのに効果・効能をうたうことは、法的に問題があると思われます。

さらに、CBDを大量摂取した場合には、肝障害、胎児や乳児への影響、男性不妊の可能性、体内脂肪組織への蓄積性などが指摘されています。

規制対象外であるからと言って、有効性や安全性が認められていると誤解してはいけません。現状では自己責任での使用が前提となるため、違法でないなら「安全」と安易に考えるのではなく、未解明のリスクを理解した上で扱うことが大切です。

さらに詳しく知りたいかたは「麻薬研究者が解説する『CBD』とは何か…効果と注意点」をあわせてご覧ください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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