人間関係

「実家がゴミ屋敷に……」夫の一言から15年の結婚生活が一転。いきなりの義母同居に戸惑う日々

43歳で結婚した夫と15年、つかず離れずの気楽な結婚生活を送ってきた女性。ところが一転、夫の一言から義母との同居生活を始めることに。想定を超える日々は「それまでの何もかもが破壊されかねない」大変さだった。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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気楽な15年間の結婚生活に変化が訪れて……※画像出典:PIXTA

気楽な15年間の結婚生活に変化が訪れて……※画像出典:PIXTA

義親との同居は、女性としてはあまり望まないだろう。ところが子どもが少ない今、夫婦どちらかの親の面倒をみることになる可能性は高い。同居の覚悟を決めるのは大変だが、実際に生活してみるともっと大変なことが山積みとなる。

結婚15年、夫婦二人で気楽に暮らしてきた

「うち、晩婚なんですよ。結婚したのは私が43歳、夫が45歳のとき。二人とも初婚です。結婚願望はなかった二人が、友達付き合いを続けた結果、なんとなく結婚しようかということになりました」

サエさんはそう言う。彼が長年住んでいた賃貸マンションが老朽化のため、立ち退きを余儀なくされた。その話を聞いたサエさんが、「探すのも大変よね」と言うと、「いっそのことマンション買うかなあ」と彼がつぶやいた。

「私も賃貸だったので、じゃあ、ルームシェアさせてよと言ったら、『結婚して一緒に住もうか』って。結婚なんてする気がないくせにと言うと、あなたもそうでしょと彼が言って。二人で顔を見合わせて笑ってしまいました。ああ、この人だったら互いにつかず離れず、適当な距離をとりながら楽しく暮らしていけるかもと思ったんです。彼もそう思っていたみたい」

自分たちで購入できる中古マンションを見て歩くのは楽しかった。ここがいいとサエさんが思ったとき、彼が「ここだな」と言った。気が合うのは分かっていたが、やはりうれしかったという。

「それから15年、夫婦二人だけだと寂しいからと、保護猫を2匹迎えて。本当に気楽な生活を送ってきました。二人とも仕事中心、週末は二人で過ごすこともあれば、それぞれが友人と会うこともあったり。何にも縛られない、自由で気楽。でも一人暮らしよりは心強い。私にとってはとても素晴らしい15年間でした」

義母と同居することに

ところが半年ほど前のことだ。実家に戻っていた夫が暗い顔で帰宅した。いったいどうしたのかと思ったら、実家がゴミ屋敷と化していたのだという。

夫の父親が数年前に亡くなってから、義母は一人で暮らしていた。しっかり者で元気な義母だったし、電話をすると元気で張りのある声が変わらなかったので、心配などしたことがなかった。

だが、夫が久しぶりに行ってみると家は汚れ、母は元気ではあったがどこか受け答えもトンチンカンなところがあった。夫が母を病院に連れていくと、軽度認知障害だということだった。

「一人暮らしは難しい。引き取りたい」と夫は言った。

「嫌だとは言えなかった。これまでの15年間と違う生活が始まるとは思ったけど、想定を超えることも多く、さすがにちょっと厳しいなと思うようになってきました」

素直ではない義母

「病院に通って治療を受けていたんですが、ある日突然、もう行かないと言い出した。私はどこも悪くないと。話をしていて通じないことが出てきても、『あなたがおかしい』と言うんですよね。自分が物忘れしても人のせいにする。そういえば、昔から夫が『うちのおふくろは人の言うことをいっさい聞かない。素直じゃないからどんどん意固地になっていく』と聞いたことがあるんですよね。まさにそういう感じでした」

腫れ物に触るような対応をするのもおかしいし、実の親子のように言いたいことを言える関係にもない。15年の間に、サエさんが義母に会ったのは10回に満たない。互いに自分の親のケアは自分でできる限りしようと決めていたからだ。

「うちも母が一人暮らしをしていたんですが、母の妹も夫を亡くして、数年前から姉妹で生活しています。叔母には子どもが四人いて、二人が近所で家庭を持っているので、人手もある。70代の姉妹は楽しくやっているみたい」

夫の方は、本当に母が一人きりになってしまったので、サエさんも手助けできるならと同居に踏み切ったのだが、実際の生活は大変だ。

親が大事なのは分かるけど……

「今まで食事の支度も適当だったんですよ。平日はそれぞれが勝手に食べてくるか、外で待ち合わせて食べることもあった。家で食事をするときは簡単なものばかり。でも義母が一緒に暮らすとなるとそうもいかない」

もちろん要介護の認定を受け、ヘルパーさんも来てくれてはいるが、義母はやってくるヘルパーさんの悪口ばかり言う。夫はあれほどやりがいを持って取り組んでいた仕事を自分から減らし、つい先日、とうとう部署を異動することになった。サエさんに負担をかけ過ぎないよう配慮しているのと、やはり母を放っておけないということなのだろう。

「親が大事なのは分かるけど、仕事を辞めてはダメと私は言っています。家のローンもあるし、仕事を辞めたら夫自身が追いつめられる。冷静に考えれば、義母を施設に入れる手もあるんです。今のところ、義母も夫も施設は考えていないみたいだけど。経済的には大変だけど、義母の年金もあるし、私たち二人で頑張って働けばなんとかなるはず。でも、義母を施設にと私の口からは言えないし……」

つい先日も夫に「お父さんは旅に出てるの?」と言ったらしい。治療をしなくなったため、徐々に認知症が進んでいるのではないかとサエさんは思っている。

「せっかく縁があって一緒になったのだから、なんとか義母ともうまくやっていきたいんですけどね。軽度認知障害って4割程度は元に戻れる可能性があるらしいんです。そのためには本人がきちんと把握して努力しないといけないのですが、義母にその気がない。私は正しいと言い張るばかりで謙虚に事実を受け止めようとしない。こうはなりたくないなと思いつつ、そんなふうに思うことに罪悪感を覚えてしまう……介護って、本当に大変。それまでの何もかもが破壊されかねませんから」

サエさんは、それでも頑張っていくしかないとつぶやいた。
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