「SE530」 肝心の音質は?!
「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」(XRCD版) |
まず最初に感じたのは、「感度の良さ」。 音の立ち上がりを鋭く捉え、厚みが有り、余韻も繊細に再現します。 総じて、鮮度が高く、「リアル感」は圧巻です。
直感的に、楽器の音色が聴いてみたくなり、普段、ガイド鴻池が愛聴している、高音質なジャズ(XRCD)を試してみました。 選んだ曲は、演奏の素晴らしさに加え、優秀録音、高音質版として知られる、アート・ペッパーの「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」(XRCD版)から、1曲目の「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」。
高音域では、ハイハットの微妙な「アタックの違い」が分かるほど鮮烈で、余韻が透き通るように美しい様は、ハイハットだけ追って聴きたくなるほど感動的です。 低音域では、サックスがグッと低音域に移った時、粒立ちを伴った胴鳴りの深みが感じられ、特筆に値します。 また、非常な低域まで余裕と安定感があり、心地良い空気感もポイントです。 ゴツゴツ、ドカドカとした騒音的な低音でなく、奥行きや距離感など、臨場感を醸し出す上質な低音は、USブランドの力量を感じます。
これらは、ダイアフラム(発音部)を小さなピンで振動させ、音声信号の変化に対して俊敏かつダイナミックに反応できる、「バランスド・アーマチュア型ドライバ」の特長が活きているようで、技術面でも納得が行きます。 また、SE530では、ドライバを低域用に2基、高域用に1基採用するという、贅沢な構造も見逃せません。
ボーカルの再現性も文句なし!
こうなると、気になるのが「人間の声」。 高音質なボーカルメインのCDで試してみました。 曲は、Tracy Chapmanのアルバム「Tracy Chapman」の4曲目、「BEHIND THE WALL」。
ボーカル一本で、音に着色が無く、通常は、息が詰まるほど「生々しい声」が印象的なこの曲ですが、「SE530PTH」で聴くと、声帯や気道によるものと思われる微かな余韻まで聞き取れ、ボディーやマイクとの距離感さえも見えてくるように感じます。
オーディオ的な表現を離れると、英語の発音に、「感度の良さ」を見いだす事ができます。 普段、何を言っているのか分からない英語の歌詞が、耳を疑うほど聞き取れるんです! 例えば"lost"の「st」の部分など、発音が弱くて聞き落とすような所も、しっかり聞き取れ、リスニング能力が向上したかのような錯覚に陥る程です。
全てのCDを聴き直したくなる、独自の世界
手持ちのどのCDを聴いても、「あー本当はこういう音だったんだ・・・」、と、新たな発見があるのが面白く、全てのCDを聴き直したくなりました。 「イヤホンで聴く」のも、リスニングスタイルの一種として成立するのではないでしょうか?
この発見の源は、感度の良さ、俊敏さにつきると思います。 ヘッドフォンやスピーカーに比べて、発音部の小さな「イヤホン」ならではの利点に、「バランスド・アーマチュア型ドライバ」を絶妙に組み合わせた結果と言えるでしょう。