名所・旧跡

奈良のお寺で見つけた「あじさいの絶景」5選! “花の御寺”長谷寺、“あじさいだらけ”の矢田寺など

古刹が集まる奈良では、梅雨時に美しいあじさいが咲き誇ります。「大和観音 あぢさゐ回廊」参加寺院や「あじさい寺」など、奈良のお寺で楽しめる多彩なあじさいの風景をご紹介します。※画像:筆者撮影

村田 博之

執筆者:村田 博之

名所・旧跡ガイド

平城京や藤原京などの都が置かれた奈良には、いにしえから続くお寺が多く集まります。その中には、毎年梅雨の時期になると境内にあじさいが咲き誇り、参拝者の目を楽しませてくれるお寺も数多くあります。

今回は奈良のお寺で鑑賞できるすてきなあじさいの風景をご紹介します。あじさいが主役となるイベント「大和観音 あぢさゐ回廊」を開催するお寺や、「あじさい寺」として親しまれるお寺など、バラエティー豊かなあじさいの名所を巡ります。
<目次>

【長谷寺】長い石段にあじさいがずらりと並ぶ「花の御寺」

長谷寺・嵐の坂のあじさい(1)

【長谷寺】あぢさゐ回廊・嵐の坂のあじさいを見上げる(2024年6月8日撮影)※2025年は嵐の坂があじさいで埋め尽くされて、人の通り抜けはできなくなりました

奈良のお寺でカラフルなあじさい巡り、最初にご紹介するのは長谷寺(はせでら)です。
長谷寺・本堂

【長谷寺】本堂(2024年6月8日撮影)

長谷寺は、奈良県桜井市にある真言宗の寺院で、創建は藤原京・平城京に都が置かれる前の飛鳥時代に遡り、1300年以上の歴史を誇ります。

ご本尊は十一面観世音菩薩立像で、西国三十三所観音霊場では第八番札所に指定されています。春の桜、牡丹、秋の紅葉など、四季折々の花の風景が美しいことから、「花の御寺」として一年を通じて多くの参拝者が訪れます。

山の斜面に沿うように本堂や五重塔などが建立されており、仁王門から399段の登廊(のぼりろう)を登りながら、移り変わる風景を楽しむことができます。
長谷寺・嵐の坂のあじさい(2)

【長谷寺】あぢさゐ回廊・嵐の坂のあじさい(2024年6月8日撮影)※2025年は嵐の坂があじさいで埋め尽くされて、人の通り抜けはできなくなりました

長谷寺は、あじさいを主役としたイベント「大和観音 あぢさゐ回廊」に参加しています。この時期には、登廊から開山堂へ続くショートカットの石段「嵐の坂」を埋め尽くすように、色とりどりのあじさいの鉢植えが並べられます。

石段を覆い尽くすあじさいの花々が織りなす風景は、まさに壮観です。傾斜のきつい「嵐の坂」を下から見上げると、石段の両脇に自生するあじさいと重なり、まるであじさいの川が流れているかのような幻想的な錯覚に包まれます。
長谷寺・嵐の坂のあじさい(3)

【長谷寺】あぢさゐ回廊・嵐の坂のあじさいを上から望む(2024年6月8日撮影)※2025年は嵐の坂があじさいで埋め尽くされて、人の通り抜けはできなくなりました

「嵐の坂」のあじさいを撮影できるスポットはスペースが狭く、順番待ちの行列が登廊の下まで伸びて1時間以上待つこともあるのですが、長谷寺の時間をたっぷり確保してあじさい鑑賞を楽しむと良いでしょう。

また「嵐の坂」以外の境内でもさまざまなあじさいの風景が楽しめますので、お気に入りのポイントを見つけてみてください。
長谷寺・本堂の花手水を飾るあじさい

【長谷寺】本堂の手水鉢をあじさいの花が彩る(2024年6月8日撮影)

【アクセス】
<鉄道>
近鉄大阪線 長谷寺駅から徒歩15分。長谷寺駅には普通・準急・区間準急・急行が停車します。
また「桜井駅」北口から桜井市コミュニティバス「吉隠柳口(よなばりやなぎぐち)」行きに乗車し、「長谷寺参道口」バス停で下車する方法もあります。ただし、バスの運行本数が少ないため、利用される際は桜井市の公式Webサイトなどで事前に時刻表をご確認ください。

<車>
西名阪道・名阪国道 天理インターチェンジから、国道169号線を桜井方面へ進みます。桜井からは国道165号線を宇陀(うだ)方面に進み、長谷寺への案内に従ってください。
また京奈和道 橿原北インターチェンジ・国道24号線経由や、大阪方面から阪和道・南阪奈道路・大和高田バイパスを経由して国道165号線に入るルートもあります。国道から入った先の道路は道幅が狭く、渋滞しやすい傾向があります。そのため、時間に余裕を持ってお出かけください。

【岡寺】日本最初の厄除け道場をカラフルなあじさいが彩る

岡寺のあじさい(1)

【岡寺】あぢさゐ回廊・仁王門から本堂へ上がる石段にて。あちらこちらにあじさいの花が置かれています(2024年6月8日撮影)

奈良のお寺でカラフルなあじさい巡り、続いてご紹介するのは岡寺(おかでら)です。
岡寺・本堂

【岡寺】本堂と境内(2024年6月8日撮影)

岡寺は奈良県明日香村にある真言宗のお寺で、創建は1300年以上前の飛鳥時代にまで遡ります。

ご本尊は如意輪観音座像で、西国三十三所観音霊場では第七番札所に指定されています。また、日本最初の厄除け道場が設けられた地としても知られています。境内は本堂と複数の書院、三重宝塔が配置されたコンパクトな造りです。
岡寺のあじさい(2)

【岡寺】あぢさゐ回廊・本堂から奥之院へ向かう通路の両脇をカラフルなあじさいが彩ります(2024年6月8日撮影)

岡寺も「大和観音 あぢさゐ回廊」に参加するお寺の1つ。仁王門から本堂へ上がる石段の両脇や本堂から奥之院へ向かう通路など、さまざまな場所でカラフルなあじさいが彩りを添えています。
岡寺のあじさい(3)

【岡寺】あぢさゐ回廊・本堂から奥之院へ向かう通路にて。カラフルなあじさいを楽しむかのように小さなお地蔵さまがいらっしゃいます(2024年6月8日撮影)

あじさいに囲まれた小さなお地蔵さまや、あじさいが川のように流れているような風景など、思わず足を止めて見たくなる風景が境内のあちこちに点在しているので、ゆっくり歩いて楽しみましょう。
岡寺のあじさい(4)

【岡寺】あぢさゐ回廊・本堂から奥之院へ向かう通路にて。あじさいの花が川のように見えています(2024年6月8日撮影)

【アクセス】
<鉄道>

近鉄南大阪線・橿原線「橿原神宮前駅」で下車し、東口より奈良交通バス「明日香周遊バス・赤かめ」に乗車。「岡寺前」バス停下車後、徒歩10分です。近鉄吉野線「飛鳥駅」からも「明日香周遊バス・赤かめ」に乗車できます。
※なお、近鉄吉野線「岡寺駅」は最寄り駅ではありませんのでご注意ください。

<車>
西名阪道・名阪国道 天理インターチェンジから、国道169号線にて桜井方面へ。桜井からは県道15号線で明日香村方面に進みます。
岡寺の正面側にも駐車場はありますが、駐車場までの道幅が狭いため、裏側にあたる県道15号線沿いの有料駐車場のご利用をおすすめします。

【壷阪寺】大仏さまとあじさいの花々が織りなす絶景!

壺阪寺のあじさい(1)

【壺阪寺】あぢさゐ回廊・大仏さまとカラフルなあじさいの花々。大仏さまもあじさいの花を持っていらっしゃいます(2024年6月8日撮影)

奈良のお寺でカラフルなあじさい巡り、続いてご紹介するのは壷阪寺(つぼさかでら)です。
壺阪寺・仁王門

【壺阪寺】仁王門(2024年6月8日撮影)

壺阪寺は、奈良県高取町にある真言宗のお寺。創建は飛鳥時代と伝えられている古刹です。

街道筋から離れた壺阪山の中腹に位置するこの寺院には、本堂や三重塔などの伽藍が配されています。また、昭和後期から続くインドとの交流によってこの地にもたらされた大仏さまや涅槃仏なども見どころです。

西国三十三所観音霊場の第六番札所にも指定されており、十一面千手観音菩薩像であるご本尊は、「眼の観音さま」として多くの方に親しまれています。
壺阪寺のあじさい(2)

【壺阪寺】あぢさゐ回廊・大仏さまの正面を彩るカラフルなあじさいの花々(2024年6月8日撮影)

壷阪寺も「大和観音 あぢさゐ回廊」に参加するお寺の1つです。ここでは、大仏さま(天竺渡来 大釈迦如来石像)の正面や、その横にある大石堂などにカラフルなあじさいの鉢植えが並べられます。これにより、大仏さまとあじさいの花々が織りなす、この上なくすてきなコラボレーションを堪能できます。
壺阪寺のあじさい(3)

【壺阪寺】あぢさゐ回廊・ガラスボウルにあじさいの花を詰めた飾り付け(2024年6月8日撮影)

大仏さまの後ろには自生のあじさいが咲き誇り、また受付からすぐの大講堂前では、あじさいの花をガラスボウルに詰めた美しい飾り付けが施されています。このように、壷阪寺では趣の異なるさまざまなあじさいの風景を楽しむことができます。
壺阪寺のあじさい(4)

【壺阪寺】あぢさゐ回廊・大仏さまとカラフルなあじさい。大仏さまもあじさいの花々を愛でていらっしゃるのでしょうか(2024年6月8日撮影)

【アクセス】
<鉄道>

近鉄吉野線「壺阪山駅」から徒歩約4km(上り坂で1時間強)、またはタクシー利用。土日祝日のみ「壺阪山駅」から壷阪寺行きの奈良交通バスが運行します。

<車>
西名阪道・名阪国道 天理インターチェンジから、国道169号線を桜井、橿原市を経て吉野・大淀方面へ進みます。高取町内で壷阪寺への案内に従って走行してください。
または、京奈和道 御所(ごせ)インターチェンジから高取方面へ向かい、県道118号線、県道35号線を経て国道169号線に合流する方法もあります。
壷阪寺までは一本道のため、駐車場が満車になると長い入場待ちの渋滞が発生することがあります。そのため、時間に余裕を持って訪れるようにしましょう。

【室生寺】女人高野の古刹で「仁王門×あじさい」の風景を愛でる

室生寺のあじさい(1)

【室生寺】あぢさゐ回廊・仁王門とカラフルなあじさい(2024年6月9日撮影)

奈良のお寺でカラフルなあじさい巡り、続いてご紹介するのは室生寺(むろうじ)。
室生寺・五重塔

【室生寺】国宝に指定されている五重塔(2024年6月9日撮影)

室生寺は、奈良県宇陀(うだ)市にある真言宗のお寺です。奈良時代の創建とされ、修験道の開祖である役行者小角(えんのぎょうじゃおづぬ)によって建立されたと伝えられています。

ご本尊は如意輪観音菩薩像で、国宝にも指定されている五重塔が特に有名ですが、本堂や金堂などの伽藍も風情のある建物です。

明治時代後半まで高野山が女人禁制だった頃、女性は「女人高野」と呼ばれる寺院に参拝することで、高野山への参拝と同等のご利益が得られるとされていました。室生寺はその「女人高野」の1つに数えられています。
室生寺のあじさい(2)

【室生寺】あぢさゐ回廊・カラフルなあじさいの後ろにある「バン字池」では、モリアオガエルの大合唱が聞こえてくることも(2024年6月9日撮影)

室生寺も「大和観音 あぢさゐ回廊」に参加するお寺の1つです。仁王門から鎧坂へ至る道の脇にある「バン字池」の周辺や、金堂から本堂へ向かう石段沿いには、色とりどりのあじさいが美しく飾られています。

バン字池には、天然記念物のモリアオガエルが生息しており、運がよければ、カエルの大合唱を耳にしながらあじさいを愛でるという、趣深い体験もできます。
室生寺のあじさい(3)

【室生寺】あぢさゐ回廊・お地蔵さまのまわりをあじさいが囲むすてきなシーン(2024年6月9日撮影)

かわいらしいお地蔵さまの周囲もカラフルなあじさいで彩られています。

仁王門とあじさいの組み合わせなど、魅力的な撮影ポイントは限られています。他の方も気持ちよく鑑賞できるよう、譲り合って撮影するようにしましょう。
室生寺のあじさい(5)

【室生寺】あぢさゐ回廊・バン字池周辺のあじさい(2024年6月9日撮影)

【アクセス】
<鉄道>

近鉄大阪線「室生口大野駅」から奈良交通バス「室生寺・室生龍穴神社」行きに乗車し、「室生寺」バス停下車。

<車>
名阪国道 針インターチェンジから、国道369号線を吉野・榛原(はいばら)・室生方面へ進みます。その後、室生寺への案内に従って県道28号線へ左折し、室生寺へ。
桜井方面からは、国道165号線で名張方面に向かい、室生寺への案内に従って県道28号線に入ります。

【矢田寺】あじさい寺で「あじさいだらけ」の風景を楽しむ

矢田寺のあじさい(1)

【矢田寺】本堂と鐘楼とあじさい(2024年6月9日撮影)

奈良のお寺でカラフルなあじさい巡り、最後にご紹介するのは矢田寺(やたでら)です。
矢田寺・本堂

【矢田寺】本堂と鐘楼(2024年6月9日撮影)

奈良県大和郡山市に位置する矢田寺は、後に天武天皇となる大海人皇子(おおあまのみこ)にゆかりが深い、飛鳥時代に創建された真言宗のお寺です。

ご本尊は地蔵菩薩立像で、矢田寺は日本の地蔵信仰発祥の霊場の1つに数えられています。
矢田寺のあじさい(2)

【矢田寺】南僧坊と蓮花池の前に咲くあじさい(2024年6月9日撮影)

高台にある境内は、本堂と僧侶が暮らす複数の僧坊があるコンパクトなもの。境内の一部はあじさい園となっており、たくさんのあじさいが咲く中を散策できます。
矢田寺のあじさい(3)

【矢田寺】あじさい園で見られる紫と青のあじさいたち(2024年6月9日撮影)

あじさい園に咲くあじさいの数は実に60種類、1万株にものぼることから、矢田寺には「あじさい寺」の異名があります。

多種多様なあじさいは、それぞれ開花時期が異なるため、訪れるたびに異なる風景を楽しむことができます。自分だけのお気に入りのあじさいの景色を探してみてはいかがでしょうか。
矢田寺のあじさい(4)

【矢田寺】本堂へ向かう参道の両脇にもあじさいが彩りを添えてくれます(2024年6月9日撮影)

【アクセス】
<鉄道>

近鉄橿原線「近鉄郡山駅」で下車し、奈良交通バス「大和小泉駅」東口行きに乗車。「横山口」バス停から徒歩15分で矢田寺の山門前に到着します。
JR大和路線「大和小泉駅」からは、奈良交通バス「近鉄郡山駅」行きに乗車し、「横山口」バス停で下車してください。
あじさいの見頃の時期の土日には、矢田寺の山門前まで直接アクセスできる奈良交通バスの臨時便が運行されます。
あじさいが咲く境内へは、山門から石段を登る必要があります。

<車>
西名阪道 大和まほろばスマートインターチェンジから、県道108号線を生駒方面へ進み、そのまま県道249号線に入ります。その後、「田中町北」交差点を左折し、矢田方面へ。
または第二阪奈道路 中町インターチェンジから、矢田・矢田寺への案内に従います。

ここまで、奈良のお寺で楽しめる美しいあじさいの名所を5カ所ご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

あじさいが咲くこの時期は、雨が多くて外出をためらいがちになるかもしれません。ですが、この季節にしか出会えない、雨に濡れて一層輝くあじさいの風景は格別です。ぜひ、奈良ならではのあじさいの景色を求めて、お出かけを楽しんでみてくださいね。

【地図】
カラフルなあじさいが楽しめる奈良のお寺の位置関係

カラフルなあじさいが楽しめる奈良のお寺の位置関係

・長谷寺:Googleマップ
・岡寺:Googleマップ
・壺阪寺:Googleマップ
・室生寺:Googleマップ
・矢田寺:Googleマップ

【関連サイト】
長谷寺
岡寺
壷阪寺
室生寺
矢田寺

「関西の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで関西の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。
「夏の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで夏の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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