希望通りに退職できるとは限らない
では、退職時に起きうるほかのトラブルについても考えておきたい。2つの事例を紹介しよう。1つは、希望通りの退職が実現しないことである。それにはいくつかのパターンがある。例えば上司が退職を受け付けてくれない事態が起きることだ。退職を切り出したタイミングが、その職場にとって悪いタイミングであるときにそれは起こりやすい。
本来、退職を受け付けないなんてことはあり得ないのだが、上司が少し厄介な人(いろいろな意味で)であると、実際に上司が退職届を受け取らない、もしくはメールをしても返事をくれない、退職日や退職のための手続きを進めてくれないなどという、にわかに信じられないようなことが現実化することがある。この場合は正式な退職日が決まらないで、ずるずると時間が経過してしまう。もちろん会社に人事部があれば相談するべきだ。
一方、オーナー企業でオーナー社長が上司であるような場合は面倒なことになる場合がある。社員が皆、オーナー社長の顔色を見て動き、オーナーがすべてのことを決めているからだ。
要は社長1人が納得してくれないというだけで、ルールは度外視されて会社が退職手続きを進めてくれないことがあるのだ。それが原因で退職を諦めた人もいたかもしれない。これはまさにブラック企業そのものであるが、そうした話は決して珍しいことではない。
退職日までにひどい扱いを受ける
もう1つは、退職日は決まったが、退職する日まで職場でひどい扱いを受けてしまうことである。例えば人間関係が極端に悪化したり、やたらと仕事を回されたりという具合に、辞める日までの会社生活が悲惨な状態になってしまうことだ。これは円満退職からは程遠い状況であり、退職日までに五月病の症状は、さらに悪化しかねない。本来、退職することが決まれば、後任者に仕事を引き継ぐ作業にすぐに取りかかり、退職日までに自分の仕事を減らしたいはずだ。それができないと、働く最終日にまで深夜残業しているような状況に追い込まれてしまうことになる。社員一人ひとりが長時間労働を重ねている余裕のない職場では、このようなことが頻繁に起きている。
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