この時期は季節の変わり目である。長袖と半袖のシャツを1日の間で着替えるほど、1日の気温差が大きい日もある。体も心も変化への対応に大忙しだ。季節の変化に順応するだけでもしんどいものだが、さらに職場では仕事の内容や仕事をする相手が変わる時期である。私たちは変化への対応で多忙を極めている。忙しすぎて変化自体に気付かないこともある。ゆえに体と心はダメージを受けているかもしれない。
不調な状態をうまく乗り越えられる人もいるだろう。不調を感じても「一過性じゃないか」「時間がたてばよくなるはずだ」と言い聞かせて何とか耐えている人もいるかもしれない。
一方、今回注目したいのは、「会社を去る決断に至った人」である。理由は人それぞれいろいろあるにしても、もう会社を辞めることを決めた人には前進してほしい。そのためには会社を辞める過程で、周りとの不要なトラブルを避けなければならない。どうしたら“円満”に退職できるのか、そのチェックポイントについて考えてみよう。
<目次>
円満退職を実現するためのポイントは2つ
円満退職をどう定義するか、まずはその確認から始めよう。「円満」という言葉は「物事がうまくいっている状態」や「満足している状態」を指す言葉である。ゆえに円満退職とは、会社と退職する社員の双方にとって「退職に伴う各種手続きがうまくいっている状態」が必要だ。その結果、「会社と退職する本人の双方が満足している状態」にあれば円満退職は実現する。円満退職を実現するために、もっとも大事なのは退職理由とその伝え方である。退職理由は人それぞれであるだろうが、本当の理由(主に不満)が言いづらいときは、会社が引き止めにくい理由を探して言うのが正解である。
例えば別にやりたいことがある(それは今の会社にいては実現できない)、家族の都合で働き方を変える必要がある(働く時間や、フリーランスになる)などの理由だ。確かにこれらの退職理由は引き止めにくさではトップクラスではあるが、職場の上司や同僚が納得してくれるかどうか、そこが問題である。
それには、あなたの退職前3カ月間の言動が鍵となる。あなたの退職理由が、過去のあなたの言動から類推できるかどうかが大事である。取ってつけたような退職理由の創作だと思われないように、用意周到に準備しておくのである。
退職を伝えるタイミングも大事だ。業務が多忙な時期や他の人が退職した直後で人手不足になっているときなどは、タイミングがあまりよくない。できれば辞めるタイミングは繁忙期を避けるのが望ましい。このことは可能な限り意識しておいたほうがいいだろう。
流行りの「退職代行サービス」の利用で円満退職はできるか?
昨今「退職代行サービス」が流行しているが、これは円満退職をする自信がないことの表れかもしれない。なぜ人は自ら会社の上司に退職を告げず、他の人に退職を告げてもらいたいのか。退職理由の信ぴょう性や妥当性が職場の上司に疑われないか、退職を告げるタイミングは大丈夫だろうか、さらに職場の人間関係に自信がないなど、いわゆる“三重苦”の状態を持つ人が、特に若い世代に多く生まれているのだろう。こうした状況下で、特に五月病が原因でこのタイミングで退社を決断する人は、自分の力だけで「会社の上司を満足させること」に自信が持てないでいるのではないだろうか。会社の上司がどのような人物か、それは日ごろから観察しているゆえによく知っているはずだ。さまざまな職場のハラスメントが指摘されているなかで、悩みを抱えてしまったのだろう。
実際、たいていどんなことでも他人が間に介在することで、物事がうまく運ぶことがある。車の事故を起こしてしまったときが、そのよい例だ。保険会社が間に立ち、相手とのトラブルを解決してくれるからだ。同じように、自分が退職することに満足しない上司から直接攻撃されないよう、退職代行業者はあなたの防波堤になってくれるかもしれない。
まだサービスが世の中に出てきて日が浅いので、退職代行業者もサービスの高度化に向けた課題はいろいろありそうだが、退職を切り出すことで上司を満足させることに自信が持てない人は、退職代行業者を使うことをまずは考えてもいいのではないだろうか。そうすることが、誰にとっても普通である(合理的である)とみなされる世の中が、近い将来には来るような気がする。
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