Q. 「寛解(かんかい)」というのは、「完治」「全治」と同じ意味でしょうか?

医師が使う「寛解」という言葉。「完治」と考えるのは間違い?
Q. 「親が闘病していたのですが、最近医師から『寛解です』と言われたそうです。寛解というのはあまり聞き慣れない言葉ですが、要は『完治した』『全治した』と捉えてようのでしょうか?」
A. 「寛解」と「完治」「全治」は、全て意味が異なります
日本では、国民の2人に1人が「がん」になる時代。医師が説明で使う言葉には耳慣れないものもあり、戸惑う方もいるようです。「完治」「全治」「寛解」にはそれぞれ明確な違いがあり、医療従事者を始め、私たち専門家は区別して使っています。分かりやすく解説しましょう。「完治」とは、文字通り「完全に治って、前の状態にまで戻った」状態です。
「全治」も似たニュアンスですが、厳密に言うと少し違います。「もう治療の必要がなくなり、普通に生活できるようになった状態」を指しますが、必ずしも「完治」には至っていない状態のときに使います。例えば、けがをして入院したときに「全治3週間の見込みです」という風に使われますが、これは「3週間もすれば、入院や通院の必要はなくなり、自力で日常生活が可能になりますよ」という意味です。入院や通院が不要とは言え、完全に以前の状態まで戻っているとは限りません。
そして「寛解」は、病気に伴う症状が最悪の状態を乗り越えて改善に向かい、症状が抑えられた状態です。悪い症状は落ち着いたものの、あくまで「一時的に」治ったような状態を指し、「まだ再発する可能性がある」場合に使う表現です。
さらに分かりやすく区別するなら、「外部的な要因」によって起きた病気やけがは、「完治」や「全治」することができます。その要因がもはや存在せず、体の自然治癒力によって元の状態に戻れば、再発することは考えられません。たとえば、何かにぶつかって大けがをしたとしましょう。傷口がふさがり、折れた骨がつながれば、その後、何もしていないのに再び同じ傷ができたり、骨が折れてしまったりすることはまずありえません。ですから「完治した」と言えるのです。
しかし、がんや、うつ病などの精神疾患、関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの免疫疾患などの場合は、その患者さんの体内で起きた異常、つまり「内部的な要因」で発症します。手術や薬などの処置によって症状が改善に向かい、再び日常生活が送れるようになったとしても、体内で起りうる異常が再燃する可能性は残っています。たとえ完全に治っているように見えても、「もう二度と発症しない」とは断言できないのです。そのため、「寛解」という別の表現が用いられます。
「寛」という漢字には、「広い」「ゆったりしている」という意味があります。「寛解」は、「ゆったり落ち着いた状態になり、危機的状況からは解放された」というニュアンスです。もし医療者からそう伝えられた場合は、「まずは峠を乗り越えてよかった」「再び悪くならないように注意しましょう」という意味と捉えましょう。