心也の父(安田顕)が運営する「子ども食堂」にたびたび来ていた夕花。複雑な家庭環境の夕花にとって、心也と過ごす時間だけは笑顔があふれていたけれど……。
心也と夕花が悩みや苦しみを抱えながらも、周囲への感謝と優しさを忘れずに成長していく姿がみずみずしく描かれています。
本作が劇場映画初主演の長尾謙杜さんに撮影の裏話や俳優としての未来についてお話を伺いました。
<目次>
『おいしくて泣くとき』主演、長尾謙杜さんにインタビュー
――『おいしくて泣くとき』は、長尾さんの劇場映画初主演作ですが、撮影前、プレッシャーはありましたか?長尾謙杜さん(以下、長尾):特に感じなかったです。主演映画だからといって特別なことをしようという気持ちはありませんでした。僕の性格的にも「みんなをリードしなくては」と思うタイプではないので。キャストのみんなで横一列になって、協力しながら歩んでいきたいという気持ちで臨みました。
キャストやスタッフの皆さんにお力を貸していただきながら撮影をしていました。なので主演らしいことは全然していなかったと思います。
――長尾さんが演じた心也は、けがで大好きなサッカーを続けられなくなり、無気力になってしまったけれど、夕花との交流で少しずつ変化していきます。長尾さん自身は心也のキャラクターをどのように考えていましたか?
長尾:脚本を読んだときに感じたのは“強い男の子”。サッカー部のエースだったけれど、けがで離脱してしまう。本人はショックを受けているけれど、みんなをまとめる力もあるし、正義感も強いし、相手を思いやる気持ちもしっかり持っている人だと思いました。
サッカーができなくなって、夕花に誘われて「ひま部」を結成して過ごすうちに、最初は弱々しいイメージの夕花がタフになっていき、心也は逆に弱い気持ちを吐露するようになっていく……というようなことを考えながら演じていました。
――横尾初喜監督からはどのようなアドバイスがありましたか?
長尾:横尾監督からは最初に「旅をしましょう」と言われました。劇中で心也と夕花が、逃避行をするようなシーンがあるのですが、そのエピソードに重ねて「旅の準備をして、旅をしましょう」と。その旅のシーンが、2人の30年後に大きく関わってくるので、彼らの30年後の人生も大切にしながら撮影に臨みました。
――心也はいわゆる普通の男の子なので、逆に個性を際立たせるのが難しい役なのではないかと思いましたが、演じていていかがでしたか?
長尾:そうですね、僕も心也のような男の子はどこにでもいると思います。なので特に色をつけようとは考えませんでした。心也の目線は、おそらく映画を見てくださる方たちと同じ目線だと思ったので、あえて個性を意識せずに演じました。
TEAM NACSのメンバーと立て続けに共演!
――映画『室町無頼』では大泉洋さん、本作では安田顕さんがお父さん役ということで、TEAM NACSのメンバーとの共演が続きましたね。安田顕さんとの共演はいかがでしたか?長尾:『室町無頼』での大泉さんと僕は役柄上、師弟関係だったので、ときには厳しくご指導いただきながらも、楽しく演じることができました。
本作での安田さんと僕は父と息子の関係。多少シリアスなシーンもあったのですが、安田さんは現場で常にお父さんでいてくださったので安心して演じることができました。大泉さんも安田さんも、僕にとっては幼いころからずっとテレビで見てきたスターたちなので、共演できて本当にうれしかったです。なんだか普通のファンのようなことを言っていますね(笑)。
――夕花を演じた當真あみさんとの共演はいかがでしたか? 最も共演シーンが多かったですよね。
長尾:映画やドラマにたくさん出演されているので當真さんのことはもちろん知っていました。僕より4つ年下ということもあり、お若いイメージがあったのですが、お会いしてびっくり。すごくしっかりしていて、精神年齢は僕より上なのではないかと(笑)。僕が當真さんと同じ年くらいのときは何をしていたんだろう……と考えてしまいました(笑)。
ただ、ピュアで何色にも染まっていない感じや、守ってあげたくなるはかない部分もあって、そんな當真さんの魅力が夕花とリンクしていました。
>次ページ:積極的にスタッフ、キャストと会話する理由