飛騨のロケ撮影でどっぷり役に染まれた!
――飛騨でのロケ撮影は、いかがでしたか? 大変だったのでしょうか?坂東:飛騨の空気のおいしさ、食事のおいしさは格別でした。東京で撮影したパートは美紀を失ったシーンなので精神的にもつらかったのですが、昴の故郷、飛騨に来てからは、気持ちを切り替えることができたし、「いい映画にするぞ」とスタッフとキャストが改めて一丸となって臨めたのはよかったと思います。
――いい環境で撮影できたんですね。
坂東:主演ということもあり出演シーンが多い中で、共演の俳優さんたちといい関係を作っていこうと意識していました。最初は、やはり主演が一番全体を客観的に見ないといけないのではないかと思っていたんです。
ただ作道監督から客観的に考えることはやめてほしいと言われました。監督はずっと「主観的でいい」と。周りの人のことは気を使わなくていい、「赤ちゃんのような存在でいてほしい。迷惑をかけてもいい、甘えてもいいから、ずっと真っすぐに昴のことだけ考えて演じてほしい」と言われました。
――ずっと昴のことを考えるということは、場合によっては気持ちが落ちていくこともあると思うのですが。
坂東:そうですね……。「昴の気持ちと一緒になっていていいから」と言われたので、その通りに芝居をしていったら、どんどん昴に引き込まれていきました。混乱したときは監督に自分が感じた気持ちをぶつけて、話し合いながら撮影していました。
――昴の負の感情を撮影が終わっても引きずることはなかったのでしょうか?
坂東:僕は引きずっているつもりはなかったのですが、作道監督から、撮影中、感情の浮き沈みが激しかったと言われました。確かに昴の感情と自分の感情が重なる瞬間があったかもしれない。でもそれは役に入り込んでいたということなのかもしれません。僕はあまりそういう経験がないのですが。
――珍しいことなのですね。
坂東:やはり飛騨に1カ月滞在して、寝ても覚めてもスタッフ、キャストと一緒にこの映画の撮影に没頭していたので、どっぷり昴の気持ちになれたんだと思います。ご飯もおいしくて、飛騨牛の焼肉が最高でしたし(笑)。素に戻ったときは、いい感じにリフレッシュもできました。
やはり現場の雰囲気は、作品を作る上でとても大切だと思うので、そのような意味でもこの映画の現場は最高でした。みんなプロ意識が高くて、意見交換も活発で、いろいろな映画制作の現場で腕を磨いてきたスタッフの皆さんがしっかり支えてくれたので、僕は単独初主演作でも安心して全力で演じることができました。
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