私たちプロの塾講師にとっては、「併願校=第一志望校合格のために受験することが必要な学校」です。現実的な中学入試を考えた場合、受験校の選び方の鉄則がいくつかあります。
今回は、その中でも重要な「5つの鉄則」をご紹介しましょう。
中学受験の併願校選びに外せない「5つの鉄則」
- 偏差値前後5ポイントの範囲から受験校を選ぶ
- 4日連続入試になるのは避ける
- 入試問題の出題傾向を考えて、負担が少ない併願校を選ぶ
- 受験生の性格を踏まえた上で、合否が与える影響を考慮して併願校を選ぶ
- できる限り受験時期を分散させる
1. 偏差値前後5ポイントの範囲から受験校を選ぶ
小学6年生の場合は、今の偏差値からプラス5~マイナス5ポイントの範囲から受験校を選びましょう。ただし、偏差値を利用した併願校の選び方は、偏差値帯によって違ってくることに注意してください。例えば、四谷大塚の合不合判定テストの第3回(9月実施回)~第5回(11月実施回)を受験している場合は、3回分の4科偏差値の平均を基準偏差値としますが、基準偏差値が60の生徒と40の生徒では、偏差値帯の実際の厚みが異なります。分かりやすくいえば、偏差値60を偏差値65に引き上げるのはとても大変ですが、偏差値40を偏差値45に上げるのは比較的簡単です。上位層の壁はかなり厚いので、同じプラス5ポイントでも全く違うことを考慮しましょう。
しかし、憧れの第一志望だけはどんなに偏差値が届いていなくても受験するべきだと筆者は考えています。第一志望校に関しては80%合格ライン偏差値ではなく、50%偏差値合格ラインで考えても構いません。何のために中学受験をするのか、という基本に戻って併願パターンを組み立てるべきです。
2. 4日連続入試になるのは避ける
4日間連続入試になる日程は、原則として組まないこともポイントです。これは、小学生の体力・集中力を考慮した経験則です。ただし、合格を獲れていない場合の2月4日入試受験は除きます。同様に、2月1~3日の都内女子校入試の午前・午後の“ダブルヘッダー受験”も、体力や集中力を考慮した上で組む必要があります。3. 入試問題の出題傾向と相性が良い学校を選ぶ
記述型入試問題が得意な受験生と苦手な受験生、思考力型入試問題が得意な受験生と苦手な受験生では、入試問題の出題傾向により得点力が違ってきます。志望校の過去の入試問題を解けば、適性は自ずと見えますので、併願校は偏差値だけで判断せずに、必ず過去問を1~2年分解いて相性を見るようにしましょう。そうすれば受験生の負担を減らすことができます。4. 受験生の性格を踏まえ、合否が与える影響を考慮して併願校を選ぶ
「受験生の性格を踏まえる」とは、入試で落ちた場合にショックを受ける子なのか、発奮して覚醒する子なのか、合格して調子に乗って失敗する子なのか、波に乗る子なのかを見極めるということです。もちろん、本番に強いかどうかなどメンタル要素も非常に含まれます。筆者の経験では、ピアノの発表会などのプレッシャーがかかる場面で失敗する子と集中力が増してうまくいく子では、併願パターンの組み方が変わります。実例を挙げると、早稲田アカデミーに通っていた、ソフトボールでピッチャーをするほど勝気な女子生徒。算数に対する取り組みがイマイチで、第一志望は女子学院。ふわふわした状態で入試初日を迎え、あまり気乗りしなかったお試し受験の1月14日の浦和明の星(1回目)で不合格。
この結果で発奮して、その後は持ち前の気の強さと集中力を発揮して過去問に取り組み、見事女子学院に合格! 早い時期に本番の受験を経験させて、受験生の覚醒を促す目的で1月14日の浦和明の星受験を筆者はすすめたわけです。ご両親は「浦和明の星に落ちて、女子学院に受かるなんてことが本当にあるんですねえ~」とびっくりされていました。リアル「二月の勝者」です。
5. できる限り受験時期を分散させる
インフルエンザ、新型コロナウイルス、ノロウイルスなどの病気にかかって実力が発揮できない場合も想定し、できる限り受験時期を分散させるとより良いでしょう。例えば、SAPIXに通っていた渋谷幕張を第一志望にしていた女子生徒。12月に受けた東葛飾の1次検査は合格したものの、1月初旬から急性胃腸炎にかかって体調を崩してしまい、浦和明の星、市川、東邦大東邦、渋谷幕張が全滅。その後体調が戻って1月30日の東葛飾2次検査には体調が戻り、何とか間に合って合格。2月2日の渋谷幕張2回は残念ながら届かず受験終了となりましたが、受験日程が違う併願パターンを組んでいたから東葛飾には合格できたわけです。
中学受験に「失敗はつきもの」と考えよう
中学受験はしょせん12歳の小学生の受験です。高校受験でも大学受験でもありません。どんなにしっかりした受験生であっても12歳の子どもの受験。うまくいけば御の字。失敗はつきものと思って併願校を選びましょう。筆者が経営する塾では、数回にわたって得心(とくしん)行くまで父母面談をして、受験生本人も家族も納得いく併願校を決めてから入試に臨んでもらいます。もちろん、生徒ひとりひとりの志望校、成績、得意・不得意分野などのファクターを把握し、1~5の全てを考慮した併願パターンを筆者自身が組んで提案します。
受験生本人と保護者と塾の3つのベクトルが一致したときに最大の成果がついてきます。何か気になることがあれば、今からでも遅くはありません。塾に相談の電話をかけてみてください。家族皆が納得できる、悔いのない中学受験ができるように粘り強く頑張りましょう!