「面接で落ちる学生」と聞くと、多くの人は「口下手な学生」や「人前で緊張してしまう学生」を連想するかもしれないが、決してそういった学生だけではない。むしろ就活への意欲も高く「話すのが上手な学生」や「人前でも堂々としている学生」にもかかわらず面接で落ち続けてしまうという現象がよく起きる。
もちろん面接では「第一印象」やあいさつなども含めた「マナー」も大切な要素ではあるが、今回はあえてESと面接でのコミュニケーションスタイルの違いに着目し、面接で落ちてしまう学生が無意識にやってしまっている3つのことについて解説する。
特徴その1:とにかく話が長い
これは日本中の新卒採用担当者に共通する「面接あるある」と言ってもよいだろう。とにかく選考を受け始めたばかりの就活生は「話が長い」のだ。ESであれば文字数制限があるため、その文字数内で伝えたいことをまとめようとするが、面接では全体の面接時間は決まっていても、質問に答える際の話す時間は決まっていないことが多い。
すると多くの就活生はその1回の質問でなんとか自分のことをアピールしようとするので、話が延々と長くなってしまう。結局たくさん話したが、面接官が聞きたかったことを伝えられずに、評価されず不合格となってしまうことはよくある。
ESは決められた文字数で文章にまとめて1回で自分について伝えるコミュニケーション機会だが、面接は口頭で質問と回答を複数回繰り返しながら伝えることができる。そのためESのように無理して1回の質問の回答で自分を伝え切ろうとしなくてもいい。
面接では面接官との「キャッチボール(双方向型のコミュニケーション)」を意識して、最初はできるだけ簡潔に自分を伝え、相手の質問に答えながら自分のことを理解してもらえるように努めよう。
特徴その2:研究内容や活動の説明に終始してしまう
これは「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」の質問でよく多発する。話が長くなる理由の一つでもあるのだが、自身の活動内容や所属団体の説明に終始してしまうのだ。ガクチカで採用担当者が知りたいことは何か? それはその学生が学生時代に力を入れた経験から、その学生の行動特性や価値観を知り、自社の仕事で活躍できる人材かどうかである。
しかし学生はそんなことよりも、自分が力を入れた活動について必死に伝えようとする。理系学生であれば研究内容、サークルやアルバイトをしていた学生は、そのサークル団体やアルバイト先の業務や店舗についても、事細かく説明してくれる。しかし採用担当者はその研究や経験を通じて、その学生が「何を考えて、どう動いたのか」を知りたいのだ。
採用担当者が求める情報を面接で伝えるためには、1つの経験に対して「自分の外のこと(活動内容や団体について)」と、「自分自身のこと(行動や思考)」をバランスよく伝える意識を持つことが重要だ。
どうしても自分の頑張った活動や成果をまず詳しく伝えたくなってしまいがちだが、活動内容や研究内容についてもっと知りたい場合は面接官は追加で質問してくれる。
ぜひ面接でガクチカについて話すときは、活動内容の説明は必要最低限にして、自分自身がその経験を通じて考えたことや実際に動いたことについて伝えるようにしよう。
特徴その3:台本通りの受け答えしかできない
これは残念ながら面接の準備を一生懸命やった学生ほど発生しやすい。就活初期は自分の憧れの業界や第一志望の有名企業を受けることが多い。当然企業研究は徹底的に行い、面接での想定質問については、学生によっては返答する内容も事前に文章に起こして丸暗記して臨む。しかし、面接準備においてはこの「丸暗記」が逆効果となることが多い。
暗記した文章を頭の中で思い起こして話すのは、よほど練習していないと棒読みになりやすいし、内容を忘れてしまったときや想定外の質問が来たときに慌ててしまう。
ビジネスシーンにおいても、暗記した内容をそのまま質問の答えとして伝える場面はほぼない。大体は持っている知識と経験から、その場で自分なりに必要な情報を選んで伝える。たとえ情報が多少不十分でも、話すときに言い間違えてしまっても、その場で補足や訂正をしながらやりとりするのが仕事におけるコミュニケーションだ。
企業の採用担当者は、仕事の場面における対応力や人柄を知りたいのであって、準備してきた内容を一字一句正確に伝えることを求めているわけではない。
そういう意味で、面接での言い間違いなどの小さなミスは全く気にする必要はない。想定質問に対して準備しておくことは大切であるが、すべて暗記しようとは思わないほうがいい。
面接とは「面接官との協働作業である」という意識を持つこと
過去に学生の就職支援をしてきた筆者の経験上、学生の面接意識が変わり結果が出始めるときは、学生にとって面接が「個人戦」から「面接官との協働作業」という感覚に変わってきたときである。面接官は合否を出す評価者であるが決して敵ではない。むしろ目の前の学生のよいところを見つけて評価する「仕事」をしている。その仕事を一緒に協力しながらやる意識を持てると面接でのスタンスや面接官とのやりとりも変わってくるはずだ。
今までは限られた面接時間の中で自分のやってきたことを必死にアピールしようとしていた意識から、面接官の聞きたいことに答えようと意識を変えることで、「一方的な長い話」は解消され「キャッチボール型」のコミュニケーションになる。面接官とも雑談できる余裕も出てくるかもしれない。
ぜひ面接はさまざまな会社の人と対話をしながら自分のことを知ってもらう機会として、面接官とのコミュニケーションを楽しんでほしい。