感染症

Q. 妊婦がりんご病に感染すると、どんなリスクがありますか?

【小児科医が解説】「りんご病」と呼ばれる「伝染性紅斑」は、子どもに多い病気ですが、大人にうつる可能性もあります。特に胎児の命に関わるケースもあるため、妊娠中は十分な注意が必要です。わかりやすく解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

Q. 妊婦です。「りんご病」感染で赤ちゃんへのリスクは?

妊婦とりんご病

「りんご病」の流行で不安……妊娠中、感染予防でできることは?


Q. 「妊娠7カ月の妊婦です。妊娠中にかかると危険な『りんご病』が流行しているというニュースを見ました。もし感染してしまった場合、赤ちゃんにはどんなリスクがあるのでしょうか?」
 

A. 重症化すると流産や胎児貧血などのリスクがあります。十分に注意してください

「りんご病」は、医学的には「伝染性紅斑」という病気です。頬がりんごのように赤くなるのが特徴で、子どもに多い病気です。りんご病は一度かかると、通常は再感染することはなく、成人の60~70%は抗体を持っています。しかし、大人になってから感染する可能性もあります。現在妊娠中で、感染が不安な場合は、まずは昔感染したことがないかを確認しましょう。

妊娠中にりんご病に感染して重症化してしまった場合、母子感染によって胎児に異常が起こり、流産や胎児貧血、胎児水腫などの深刻な状況を招くリスクがあります。妊娠初期を含む、妊娠前半の感染に特に注意が促されていますが、妊娠後期(妊娠28週以降)であれば、胎児⽔腫、死産の確率は低くなります。胎児貧血、胎児水腫は、感染した妊婦の約4%にみられ、感染してから数週間で発症するとされています。

胎児水腫になると、赤ちゃんのおなかや胸、皮膚などに水が溜まり、全身がむくんだ状態になります。むくみは、心臓の機能が低下し、体への血液循環がうまくいかなくなって起こるのですが、命に関わることもあります。筆者はNICUで勤務していた際に、胎児水腫の治療経験がありますが、非常に難渋しました。母体内の胎児に対して治療を行うこともありますが、こちらも非常に難しい治療です。

りんご病は5~9歳の子どもに多いため、特にリスクが高い妊娠初期は、その年頃の子どもとの接触を極力避けることが大切です。りんご病は飛沫感染と接触感染でうつり、感染力が最も強いのは、頬が赤くなる紅斑が出る1週間前です。10~20日ほどの潜伏期間がありますので、リスクの高い接触自体を避けるのが一番です。

妊娠中にりんご病になったからといって、必ずしも胎児水腫や流産につながるわけではありませんが、もしもりんご病らしき症状が見られた場合には、すぐに受診し、早期治療を開始することが重要です。紅斑が出た場合、妊娠中であれば保険診療内で血液検査を受けられます。

さらに詳しく知りたい方は、「りんご病(伝染性紅斑)の治療法・予防法・合併症」「りんご病の症状…大人への感染・妊婦から胎児への母子感染も」をあわせてご覧ください。
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