森崎さんの演じる沢田の同僚モーは、アーティストの沢田ではなく、コンビニ店員の沢田と接するミャンマーの青年です。まずはモー役についてお話を伺いました。
外国から日本に来た自分だからこそ分かるモーの気持ち
――荻上監督の最新作『まる』への出演の経緯とモーの役作りについて教えてください。森崎ウィンさん(以下、森崎):プロデューサーの方から「森崎くんにお願いしたいので、ミャンマーの青年という設定にします」とおっしゃっていただいたんです。とてもうれしかったし、ミャンマー人の僕にしかできない表現があると思いました。
モーは日本に留学生として来て、外国人としての生きにくさや理不尽な思いも経験します。ただ、マイナスなことが起こってもそれにいちいち反応していたらやっていけないよね、という彼のポジティブなマインドや彼が背負う悲しみなどは、僕も外国から来たのでよく理解できるんです。なので彼のバックボーンを自分の中で膨らませて演じました。 ――撮影では自分の中で膨らませたものを監督と相談しながら表現していったのですか?
森崎:そうですね。僕が考えたモー役に関するアイデアなどを荻上監督にお話しして、演じてみるという感じでした。モーという名前も僕がつけました。モーはミャンマーの言葉で「雨」という意味があるんです。劇中のセリフで「雨の中を飛ぶ鳥」について話すシーンがあるので「そのセリフとモーという名前が実は関連していたら面白いんじゃないですか?」と僕が監督に提案させていただきました。
長回しのシーンは、役として生きることを考える
――素敵なエピソードですね! 森崎さんは荻上監督作への出演は初めてだと思いますが、荻上組の撮影はいかがでした?森崎:荻上監督の演出はとても丁寧なんです。僕が一番好きだったのは、長回し(※)の撮影です。僕は長回しが大好きなんです。その長いワンシーンの中で役としていかに生きるか……ということを考えさせてくれるので。なので、荻上監督とお仕事をすることができて最高の気持ちでした。
※カットせずに長時間カメラを回し続けること ――この作品はデジタルではなくフィルムで撮影されていますが、その点について撮影現場で演者として違いを感じることはありましたか?
森崎:先輩俳優の方から「昔はフィルム撮影だったから、撮り直しなんて何度もできなかった。NGなんか出せなかったんだぞ」と聞いたことがあったので、フィルム撮影は本番一発に懸ける思いが強いのかもしれないと思っていました。
フィルムだから芝居への向き合い方が変わるということはありませんが、先輩方が体験してきたフィルム撮影を実際に体験できたことはとてもうれしかったです。
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