「同担拒否」の立場として
「私は同担拒否してます。ファン同士で話しても、偽の情報が出回ったり相手を出し抜くために情報を混乱させようとしたりする人がいるから」ひとりで某アイドルを追いかけているカヨさん(40歳)はそう言う。若くして高校時代の同級生と結婚、一人息子はすでに20歳になる。彼が高校生のころからカヨさんは、推し活にいそしむようになった。
「もともと夫が居職なので、私は夜、近所のスナックを手伝っていたんです。8年前にそのスナックのママが病に倒れて、私に店を継いでくれないかという話があって。結局、話し合って店を買い取って商売を続けています。家のことはほとんど夫がやってくれてる。
そんなときに推し活をするようになって、店が終わって仮眠をとってから出かけたり、週末は推しを追いかけて地方へ行ったり。夫も息子も『それで楽しいならどうぞ』という感じですね。最初は遠慮しながらだったんだけど、今では『週末は大阪に行ってきまーす』とこちらもオープンに話しています」
仕事と推し活が多忙で疲労のあまり倒れたこともあるカヨさん。そのときばかりは夫と息子に怒られたと舌を出した。
「本当は、推しについて語り合える人がほしいと思うこともあるんです。何人かと接点をもったこともあるけど、あまりいい思いをしなかった。いつも見かける他のファンのことを悪く言ったりする人も多くて。疲れてしまうので、今は顔見知りとあいさつする程度の関係にとどめています。目的は推しなので、それ以外で労力を使いたくない」
単独の推し活は「妙な目で見られる」ことも
単独で行動していると、同担歓迎派から妙な目で見られることもある。だが、ファン同士の諍いに巻き込まれるのも嫌だと彼女は言う。「以前、イベントで推しが不当に軽く扱われたことがあったんです。少なくともファンの目からはそう見えた。そのとき、同担歓迎派のグループがこぞって主催者に文句を言いに言ったんですよ。それを客観的に、なんだか見苦しいなと思ってしまった。あの輪には入りたくない、と。だからそれ以来、私は単独で動くようになった。同担拒否という強い言葉より、むしろ単独派なんですけどね」
自分が一番、というタイプの同担拒否ではないとカヨさんは言う。淡々と粛々と一人で推しを応援しているだけだ、と。
同担歓迎でも同担拒否でも、その人なりの「ファンとしての」プライドはあるはず。問題を起こせば、一番大事な推しに迷惑がかかる。その一点さえ守っていれば、立場はどちらでもかまわないはずだ。嫉妬や憎悪は無用、推し活は純粋に楽しむだけでいい。