いまは、一人暮らしを謳歌(おうか)できているが……
いつまでも健康でいたいと願うのは当然だが、いずれ誰かの世話にならなければいけないという覚悟も必要なのかもしれない。
一人で生活していきたい
還暦を迎えて、さすがに「この先」を考えるようになったとカナコさん(63歳)は言う。40代でモラハラ夫と離婚、小学生だったひとり娘は27歳になった。「さっさと自立しなさいと、3年前に追い出しました(笑)。就職したら自立してほしかった。定年を機に私も一人で暮らしたかったし。娘は冷たいと恨み言を言ってましたけど」
定年後もグループ会社で働いてはいるが、さすがに「老い」を感じるようになってきたとカナコさんは言う。もちろん、そんなことは娘には言わないが。
「なるべく歩くようにしているしヨガもやったりしていますが、それだけでは追いつかないほど疲労が残ります。60代になると、周りでも病気をしたり体調を崩したりする人が増えていく。疲労回復が遅れるからなのかなと私も実感がありますね」
一人暮らしは「寂しいでしょう」と言われる
それでも一人暮らしは快適だとカナコさんは言う。娘がいたら、「疲れた」と愚痴ってしまうだろうが、一人なら愚痴らない。一人だけの夕飯も「別に寂しくはない」ときっぱり。「栄養に気をつけて自分が食べたいものをちゃちゃっと調理して食べています。娘の食べたいものを考えなくても済むし、すべてが自分だけのための生活って、なかなか気持ちのいいものですよ」友人からは「一人って寂しいでしょう」と言われるが、自分のためだけに時間が使えるのは、むしろ楽しいと彼女は言う。
「仕事帰りに映画を観ても誰にも何も言われない。そのままどこかで簡単に夕食をとってもいいし、テイクアウトでもいいし、簡単なものを自分で作ってもいい。一人だと選択肢が増えるんです。それが快適。寂しいと思ったことはないですね」
いざとなれば娘がいるとは思っているが、今のところ「いざというときも娘を頼るつもりはない」そうだ。
>いざとなっても、娘を頼る気持ちは無い