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コンビニ配送ドライバーの給料事情!営業職から転職した50代男性のリアル「正直とても厳しいですが…」

いつでもどこでも必要なものを購入できるコンビニへ途切れることなく商品供給を担うのは、夜間に走る配送ドライバー。物流の2024年問題が社会課題となる中、コンビニ配送ドライバーの給与事情と仕事のリアルについて物流ライターの蜂巣稔が取材しました。

執筆者:All About 編集部

コンビニの配送ドライバーのイメージ

私たちの生活になくてはならないインターネットショッピングもコンビニも、“物流”という側面から支えてくれている人たちがいる ※画像はイメージ

EC物流のリアルとサスペンスを絡めた映画『ラストマイル』が大ヒットしています。大手EC会社によって、運送会社や宅配ドライバーなど物流の担い手が過酷な状況に追い込まれるストーリーは、物流の2024年問題とともに、これからの物流の在り方を考え直すきっかけになるかもしれません。

一方、私たちの便利な生活を支えるコンビニの配送でも課題が。いつでもどこでも必要なものを購入できる、もはや生活のインフラともいえるコンビニへ途切れることなく商品供給を担うのは、夜間に走る配送ドライバーです。物流の2024年問題が社会課題となる中、コンビニの配送ドライバーの給与事情と仕事のリアルについて取材しました。
 

ノルマが厳しい営業職→コンビニ配送のドライバーへ

お話を伺ったのは山本さん(仮名)、50代の男性です。山本さんの自宅は関東地方の郊外にあり、妻と子ども2人の4人家族。上のお子さんは社会人になりましたが、下のお子さんはまだ大学生だそう。あと数年は私立大学の学費が必要だそうです。約20年前に新築した一戸建て住宅のローンもまだまだ残っています。

山本さんは同じ県内の勤務先に、片道約1時間をかけてスクーターで通勤しています。まずはお仕事の内容を伺いました。

「コンビニの店舗に商品を配送しています。大学を卒業後、何度か転職をして今の会社に正社員として採用されました。前職はまったく別の業界の営業職でしたが、ノルマがきつく、心も体もボロボロになりました。なかなか売り上げを伸ばすことができず、おまけに給与は歩合制だったので、家族を養うにはとても苦しかったですね。子どもたちの学費もかかり、いつも収入のことが気がかりでした。

今の会社ではノルマに追われることがなく、月の給与額が決まっているので、前職よりも安定しています。50代になり体力的にきつくなってきましたが、配送ドライバーとして毎日ハンドルを握っています」

そんな山本さんに、一日のスケジュールと仕事の内容についてお聞きしました。

「お昼の0時ごろに出勤し、配送が終わって配送センターに戻るのが夜中の1時ごろです。それから帰宅します。家に着くのは真夜中の2時ごろ。街も家も寝静まっていますね。一眠りするとすぐに出勤時間が来てしまいます。

運転するのは4トンのドライ(常温)の中型トラックです。お弁当や冷凍食品を運ぶ冷蔵・冷凍トラックもありますが、私は常温輸送の担当です」

配送する商品は清涼飲料水やビールなどの飲料、お菓子やインスタントラーメン、雑貨など。一番重いのは飲料だとか。500mlのペットボトル飲料は1ケース24本入り、1箱当たり12kgを超えます。今では600ml入りの商品もあるので、1ケース当たり15kgを超えることも増えたそうです。一日に1店舗当たり約40ケースを、5~6店舗へ合計約200ケースを配送しているといいます。

続いて、山本さんに配送の流れについても伺いました。

「配送は一日に2回転します。1回転目で5店舗分の商品を積み込み、配送センターを出発します。5店舗分の配送には約5時間かかります。これが完了したら、配送センターに戻ります。

休憩を取った後、再び5店舗分の商品を積み込み、2回転目の配送に出発します。こちらも5時間ほどかけて店舗への配送を行い、配送センターに戻るのが夜中1時ごろですね。私の担当エリアは店舗間の距離があるので、移動時間がかかります。同じ地域に複数店舗が集中している都内とは、配送時間が異なるかもしれません」
 

大きな負担は荷物の積み降ろし

配送する商品は、トラックの荷室に直接積み込みます。店舗で荷降ろしをするときは台車に載せてから納品するそうです。これを1回転で5店舗分、コンビニ各店舗のバックヤードに商品を納めます。

スーパーなどで見かけるカゴ車(車輪がついた背の高い金属製のカゴ。商品を積んだまま運べる)があれば、荷降ろしの負担と作業時間が減るのですが、なぜ使わないのでしょうか。筆者の疑問に山本さんは次のように答えてくれました。

「私が担当する配送では、カゴ車は使われていません。カゴ車を使う場合は、トラックに『テールゲートリフター』と呼ばれる昇降機が必要になるんです。これはトラックの後部についている、鉄板が上下するエレベーターのような機械です。この機械を使うと、商品をカゴ車に入れたまま積み降ろしができます。

一方で、テールゲートリフター付きのトラックは、1台当たりで配送できる重量が減ってしまいます。テールゲートリフター自体の重量があること、空荷の状態でも30kg~40kgあるカゴ車を何台も使うことで、トラックに積める荷物の積載量が減ってしまうのです」

どうやら一筋縄ではいかない事情がありそうです。山本さんは、さらに詳しく説明してくれました。

「トラックは、橋などを安全に走行できるように、法律で車両の『総重量』が決められています。総重量とは、トラック本体やドライバー、積載する荷物などすべての合計重量を定めたもので、これを超えることはできません。積み降ろしが楽になる昇降機やカゴ車などの重量が増えると、その代わりに運べる荷物の重量が減ってしまう。ドライバーの負担軽減と引き換えに運べる量が減ってしまうのです」

配送の現場では「どれだけ多く運べるか」と「ドライバーの積み降ろしの負担をいかに減らせるか」の綱引きが発生していました。効率アップと利益追求が必要な企業側と、物流の担い手との間には相反する課題がありそうです。

ドライバーへの大きな負担と長い拘束時間は、物流の2024年問題でも大きな課題となっています。担い手不足が深刻化し、ドライバーの負担軽減を求められる中、納品先の荷主側の事情もありました。山本さんは続けます。

「仮にカゴ車が使えたとしても、コンビニの店舗にカゴ車の置き場所があるとは限りません。バックヤードは狭く、カゴ車の場合は商品を荷降ろしするコンビニ店員さんの作業が必要になるのです。なので、こちらの都合だけでやり方を変えるのは難しいです」

>次ページ:コンビニの配送ドライバーのリアルな給与事情
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