「知的な方は違う」「とってもきれい」って……
「褒める」という行動も、やりすぎると引かれる原因になりかねないが……
最初は悪い気はしなかったけど、とにかく顔を見ると褒めまくる。仕事が忙しくて疲労がたまり、目の下にクマをつくっていたときでさえ、『キャリアウーマンって、どんなときもお肌の手入れも欠かさないんでしょう。とってもきれい』って。いや、このクマが見えないのかとツッコみたくなったくらいです」
着ているもの、外見、さらに持ち物まで毎度褒めまくられると、会うのがうっとうしくなっていったという。
「娘のことも夫のことも褒めまくる。うちなんて、ごく普通の共働き夫婦で、ふたりで働いたって収入もたかが知れてる。それなのに『親御さんの社会的地位が高いと、娘さんも立派に育つのね』って。ほとんど嫌味に近くなりますよね、それって(笑)」
褒めハラに引かれて謎行動に出た
ところがリナさんには、皮肉を言っている気配はない。本気で、いつでも褒めなければと思っているようなのだ。だからかえって、リナさんの本音が読めない。「防御のように褒め言葉を繰り出すのは、彼女自身が心を開いてないからなんでしょう。それがわかるから、徐々にママ友が引いていく。そうするとさらに焦ったリナさんは、いろんな人に物をあげるという行為に出ています。
私もある日突然、真っ白なカシミヤのマフラーをもらったんですよ。『私がするより、あなたのほうが似合うと思う』って。そんなものをもらう理由がないと返したんですが、ママ友の中には『ある日突然、キャビアをもらった』『もらいものなんだけどと、行列しないと買えない店のクッキーを持ってきた』と高級品で攻めまくられた人もいます。もらう人もいれば、私のように返す人もいるみたいだけど、いったい彼女は何がしたいのかともっぱら噂だけが一人歩きしてる」
このままだと彼女の孤独は深まるばかり。褒めても褒めても、人の心がつかめるわけではないと言いたいのだが、それが彼女を傷つけるのではないかとエリカさんは心配になって何も言えずにいるそうだ。
「何人かのママ友と、このままじゃまずいよねと言いつつ、どうしたらわかってもらえるかで頭を悩ませています。中には、『言葉や物で人の心を支配しようとしている』と言い出している人もいるから、放置しておいていいとは思ってないんですが」
自分が自分であるままに人付き合いをすればいいのにとエリカさんは思う。だが、そうでない人がいるのを目の当たりにすると、説教くさいことを言うわけにもいかない。頭が痛いですよと、エリカさんは苦笑した。