確かに「老害」はあるけれど
もちろん職場内で「老害認定」される人もいる。エミカさん(38歳)の職場では、隣の部の部長が“認定”されている。エミカさんの部署とも仕事のつながりがあるだけに、とにかく面倒なのだ。「まずは根回し。彼は自分が真っ先に話を聞かなければ納得しない。時には企画自体がつぶされる。長年、そうやって仕事をしてきたんでしょうね。これぞ老害という感じ。しかも彼は社長の腰巾着なので、何かあると針小棒大に社長に言いつける。ところが2年前、社長が引退して息子が引き継いだんですよ。そうしたら組織ががらりと変わりました」
新社長は、前社長のやり方を一掃し、効率重視を打ち出した。エミカさんの隣の部署の部長は閑職に追いやられた。リストラも進んだ。仕事がしやすくなった一方で、社内が妙に殺伐としていった。
「新社長は50代ですが、これはこれで新しいものにかぶれた“老害”だとみんな言っています。前社長とは180度変わったけど、うちの社風には合っていない。合わないものは去れということなんでしょうけど、そのせいで優秀な人たちが一気にいなくなった。劇的な改革をしたかったのはわかる。でもやり方を間違えたみたいです。私たちも前社長時代は、よく老害だよねと言っていたけど、そういう言葉を安易に使うわけにはいかないと思うようになりました」
年齢だけで「老害」とくくるのは差別的
前社長はコネだの自分への服従度などで人を測る人だった。そんな体制に今どきの社員はついていかない。だが新社長は効率を重視するあまり、人の心を読まなかった。それもまた人はついていけない。そしてどちらも「老害」とくくられることで、本質が見えなくなる。年代ですべてを斬るのは「差別」に近い。小学生にぶつかられてケガをした80代女性が裁判に訴えた件の事件も、単純に「老害」と片づけていいのか、当時の事情を知った上で判断するべきだろう。