「介護の敵」ではなく「人生の敵」では
マスオさんのように、親の介護についてきょうだい間でトラブルになるのはよくあることです。まずマスオさんに強く伝えたいことは、現状のままでの同居はありえないということ。
お姉さんたちは「介護の敵」というより、もはや「人生の敵」ではないでしょうか。子どものころからのトラウマがあるかもしれませんが、このまま敵の言いなりになって自分の家族や自分自身を犠牲にするのは間違いだと思います。いかにお姉さんたちと戦うかが大事になってくるはずです。
また、もしも両親から過剰な期待をされているのであれば、なるべく早くに「同居は無理」「要介護度が高くなったら施設介護以外の選択肢はない」などと伝えてしまいましょう。
親と同居した場合、扶養の責任範囲が大きくなるだけでなく、介護離職に至る可能性も格段に高くなってしまいます。介護目的で同居するのはとてもリスクが高い行為なので、筆者はおすすめしていません。
「すべてをかなえよう」「全部100点を目指そう」と思うから破綻を招くわけです。無理なことは無理としっかり伝えて割り切るのが大事。介護期間が1~2カ月で確実に終わるならともかく、数年、場合によっては10年、20年とかかることもある以上、無理せず持続できる方法を見つけるしかありません。心身共に適切な距離を保ち、できることだけをやりましょう。
何を守りたいのか、優先順位付けを
では具体的にはどのようなことをしたらいいのか。まずは実家近くの地域包括支援センターに足を運び、現状について話をしておきましょう。「親の介護について親や姉とまったく話が合わない」「自分はこれ以上サポートできない」などと伝えておくと、何かの支えになるかもしれません。そして、少々強引な方法に感じるかもしれませんが、どうしてもお姉さんたちに口で勝てないのであれば、実家へ帰るのをやめ、電話もやめて、連絡はLINEのみにする……それくらい思い切って距離を置いてみてはいかがでしょうか。
テキスト上のやり取りならゆっくり自分で考えて思いを伝えることができるはず。口達者なお姉さんたちと同じ土俵に立たないことが重要です。
また、「うちの長男は優しいから甘えておけばいいや」と思ってしまっている両親に問題意識を持ってもらうことも忘れてはいけません。認知機能の低下が見られ、今後判断力が衰えていくであろう両親に最終的な意思決定をまかせるのは危険です。
「認知症の検査や要介護認定を受け入れないなら、今後自分は一切サポートしない」「仕送りも止める」「姉さんたちに世話を頼んで」と伝えてしまっていいのではないでしょうか。
なお、当面の介護や施設にかかる手間や費用については、LINEなどテキストでお姉さんたちに相談しましょう。もしも彼女たちが親の介護に協力しないなら相続放棄するように要求したいところ。弁護士などに依頼して親族間扶養公正証書などを作成し、話し合った内容を文書化しておくことはとても大事だと思います。
「妻や子どもを犠牲にしたくない」という思いは素晴らしいものです。ただし、奥さんやお子さんも、そんなお父さんが犠牲になるのはイヤだと思うのでは。なので、何を守るのか、優先順位を付けてほしいのです。もちろん親もきょうだいも大事。でも、妻子と自身以上に大切なものはないはずです。