「選定療養」とは……10月から先発医薬品に割り増し料金が加算

【薬学部教授が解説】2024年10月から「選定療養」という新しい制度がスタートします。ジェネリック医薬品があるのに先発医薬品を希望する場合、割り増し料金を支払わなくてはなりません。わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

家計に悩む女性

10月から一部の薬が割増料金になる? 新たに始まる「選定療養」制度とは


病院や薬局で支払う薬代に対して、令和6年10月から「選定療養」という新しい制度が始まります。「選定療養」とは、先発医薬品の処方を希望する場合に、患者が特別な割り増し料金を支払わなければならないという決まりです。
 

「先発医薬品」と「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」に違いはあるのか

医薬品が発売されるときに、特許が有効な間は、その特許権者(通常はその薬を最初に見つけて研究開発した製造販売業者)が独占的に製造販売できる権利を有します。これが「先発医薬品」です。特許期間が満了すると、その薬は国民の共有財産となるため、最初に薬を開発したメーカー以外も、その薬を製造販売できるようになります。そして、そうした薬を他のメーカーが作ろうと計画して申請し、承認された後に実際に販売されるようになったものが「後発医薬品」です。「一般的である」という意味で「ジェネリック医薬品」とも呼ばれます。

先発医薬品とジェネリック医薬品は、同じ有効成分で作られています。違いがあるとすれば、有効成分以外の添加剤の種類や、製剤の大きさ、形状などだけで、決して先発品に劣ることはありません。しかし、ジェネリック医薬品は、先発品のような開発費がかかっていませんから、価格が安く設定されて売られています。そのためか、「ジェネリックは安かろう悪かろう」という印象をもつ方も少なくないようです。「ジェネリックは嫌」「飲みなれている薬から変えたくない」と主張し、薬局の窓口でジェネリックへの切り替えを拒む方もいます。
 

選定療養制度の目的は、深刻な医療費の増加をジェネリックで抑制すること

国としては、年々増加する国民医療費を抑制するために、先発とジェネリックの両方がある薬については、できるだけジェネリックを使うことを推奨してきました。そのかいあって、ジェネリックの普及率は80%を超える水準まで高まってきました。しかし、国は80%ではまだ不十分で、できる限り100%に近づけたいと考えているのでしょう。次の一手として出してきたのが、今回の「選定療養」の制度です。

令和6年10月からこの制度がスタートすると、ジェネリック医薬品があるのに先発医薬品の処方を希望する場合には、「特別料金」を支払うことになります。端的に言うと、価格が抑えられていることで医療費抑制につながるジェネリックではなく、高額で医療費を圧迫する先発医薬品を希望すると「ペナルティーが科される」ともいえます。
 

先発医薬品を選ぶ場合、負担しなくてはならない割り増し金額の目安

具体的な料金の目安は、先発医薬品とジェネリック医薬品の価格差の4分の1相当です。例えば、先発医薬品の価格が1錠100円、後発医薬品の価格が1錠60円の場合、差額40円の4分の1である10円を、通常の1~3割の患者負担とは別に特別徴収されることになります。なお、価格が異なるジェネリック医薬品が複数ある場合には、価格が一番高いジェネリック医薬品と先発医薬品の差で計算します。

1錠単位では微々たる金額かもしれませんが、多くの人がジェネリック医薬品を選択する中で、「何となくジェネリックは嫌」といった理由だけで切り替えを拒んでいると、余計な特別料金を自腹で支払わなくてはなりません。しかも特別料金は課税対象です。消費税も上乗せされるため、上の例のように特別料金が10円と計算される場合、窓口で実際に徴収されるのは「11円」になります。

科学的な理由に基づかない「何となく」といった気分的な理由で、余分な出費を続けるのは、もったいないことです。選定療養の対象にならないよう、ジェネリックへの切り替えを検討するのによいタイミングではないかと思います。

それでもジェネリック医薬品は何となく不安だという方は、「『安くて質が悪い』は大間違い!実績あるジェネリック医薬品を選ぶメリット」をあわせてご覧ください。
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