長回しの緊張感がすごかった!
――『朽ちないサクラ』の富樫役は派手なアクションがあるわけではなく、ヒロインの森口と対峙したり、じっと何かを考えていたり、静かだけどすごみを感じさせる役でした。とても難しい役ではないかと思ったのですが、撮影はいかがでしたか?安田:長回しの撮影もありましたから、緊張感はありました。1シーン撮り終わって、スタッフの方に「外で休憩してください」と言われて、外に出たらえずいちゃって……というのは嘘ですが(笑)、いい意味での緊張感はあったと思います。
――原監督とは役についてディスカッションはされましたか?
安田:監督とは常にコミュニケーションを取っていました。昨日行ったサウナの話から、撮影の段取りまで、さまざまな会話をしながら各シーンを構築していきました。
――撮影で印象に残っていることはありますか?
安田:被害者の母親を演じた藤田朋子さんとは初めてのお仕事だったので、お葬式シーンのリハーサルのときに「初めまして安田と申します」とあいさつをしたんです。でも藤田さんは娘を亡くした母親として芝居に入り込んでいたので、ゆっくりあいさつをする余裕はありませんでした。
――撮影中はタイミングを図るのが難しそうですね。
安田:でも、藤田さんと僕は熱狂的なザ・ビートルズファンという共通点があり、お互いにそのことを知っていたので、藤田さんは目を真っ赤にしながら「撮影が終わったら話そうね」と言ってくださって。そして撮影の後、藤田さんとビートルズの話で盛り上がりました。楽しかったですね。
俳優業は社会と自分をつないでいる唯一のもの
――安田さんに俳優のお仕事との向き合い方について伺いたいです。お芝居の魅力、演じる醍醐味(だいごみ)はどういうところにありますか?安田:演技の醍醐味(だいごみ)ということとは、ずれているかもしれないのですが、僕にとっては俳優の仕事は社会とつながることができている唯一のものだと思っています。
これまでキャリアを積み重ねてきて思うのは、演技の仕事を今も続けていられることへのありがたさです。だからこそ、1つひとつの仕事に真摯(しんし)に向き合おうと常に思いながら取り組んでいます。それから周囲への感謝も忘れません。
映画、ドラマ、舞台、いずれも多くのスタッフが関わっています。監督の演出、脚本家の書くセリフ、撮影監督、美術さん、衣装さん、そういう方々がいないと俳優は仕事ができません。それはいつも念頭に置いておこうと思っています。 ――作品ごとにチームがあって、俳優もそのチームのひとりという意識でいらっしゃるんですね。
安田:そういう意識をしていないと、独りよがりになっちゃいますからね。
――将来的に俳優として、こうありたいという青写真はありますか?
安田:僕は常に転機が訪れていると考えています。『朽ちないサクラ』も転機のひとつだと思いますし、今後、作品に呼んでいただけるのなら、その現場ごとに自分のキャリアの転機が訪れると信じています。そう考えた方が精神的にもいい状態で仕事に臨めるので。
でも、ここを見出しにしないでくださいね、「何カッコつけているんだ」と思われちゃうんで(笑)。
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