昔から「女」を前面に出す母だった
「もともと母とは折り合いが悪かったんです。母親という役割より、自らの“女”を前面に出す人で、私が小学生だったころ、担任の先生に色っぽく近寄っていく母を見て、ものすごい嫌悪感を抱きました。当時の母がどういうつもりだったのかはわかりません。本人としてはただ気さくな雰囲気を出したかっただけかもしれない。でも子どもの目には嫌らしく映りましたね」タカコさん(40歳)は、眉間にしわを寄せてそう言った。早く離れたくて、大学を卒業して就職と同時に家を出た。勤務先は実家からそう遠いわけではなかったが、あえてアパートを借りて自立した。それ以降、父とは連絡をとっていたが、母とはめったに会わなかった。
5年前、定年退職して別の会社に勤めていた父が大病を患って入院した。当時、父は65歳、母は60歳だった。
「父が手術を控えているのに、私が見舞いに行くと、母は同室の他の患者さんと軽口を叩いてキャアキャア言って。医師が入ってくると、『せーんせ』と寄っていく。変わらないなあ、この人はと思いました。男性を見ると、なんだかうれしくなっちゃう体質なんですかね。父はそんな母に文句も言わなかった」
母の不倫を知ってしまった
父は手術をし、その後、1カ月ほど入院していた。タカコさんは足繁く父を見舞ったが、ある日、父は「最近、母さんが来ないんだ」と愚痴った。彼女は母の代わりに父の洗濯物を持って帰ろうと紙袋に詰め込んだ。病院を出たところで、すぐそばに車が止まり、母が降りてきた。薄暮のころだったので、母だというのは「またね~」と車に手を振る声でわかった。
「何やってんのよ、お父さんが最近お母さんが来ないって言ってたよというと、母は『だって病院って嫌いなのよ、陰気で』と。そりゃ病人がいるところなんだからしかたがないでしょ、それよりお父さんに寂しい思いをさせないでよと言いました。母は仏頂面で病院に入っていきましたが、車に乗っていたのは母より若い男性だった。私はしっかり見ていたんです」
父の闘病中に男とデートをするなんて、とタカコさんはイラッとした。
>妻で母なのに「ふしだら」で嫌だ