赤ちゃんの命名・名づけ

『鬼滅の刃 柱稽古編』に登場する「柱」の名前で使われている漢字の成り立ち【命名研究家が解説】

『鬼滅の刃』といえば、登場人物たちの難しい漢字を使った名前も特徴のうちのひとつ。今回は「柱」たちの名前で使われている漢字の成り立ちを、命名研究家の牧野くにおが紹介します。

牧野 くにお

執筆者:牧野 くにお

赤ちゃんの命名・名づけガイド

5月12日よりスタートした人気テレビシリーズ『鬼滅の刃』の新作『鬼滅の刃 柱稽古編』(全国フジテレビ系列)が6月30日に最終話をむかえます。

柱稽古編では、宿敵・鬼舞辻無惨(きぶすじむざん)との戦いに備えて、鬼殺隊最強の剣士「柱」と鬼殺隊との合同強化訓練「柱稽古」が開催され、炭治郎と柱たちの新たな物語が描かれてきました。

そんな『鬼滅の刃』といえば、登場人物の名前も特徴のうちのひとつ。アニメ作品なので「禰豆子(ねずこ)」「無惨」など現実には見られないような名前もありますが、「義勇(ぎゆう)」など実際に使われている可能性のある名前もあります。

今回は、現役の「柱」の名前で使われている漢字の成り立ちを紹介していきます。
 

【霞柱】時透 無一郎(ときとう むいちろう) 

時透無一郎

「無一郎」で使われている漢字の成り立ち

■無:物不足、あるいは水不足によるお祈りのため、神前で舞いをしている姿を表わすものと思われます。この絵が「舞」「無」の二つの字に変化しました。

■一:文字通り、モノが一つあることを表わします。昔から長男であることを表わす字として使われたほか、最高の目標を目指す、というイメージとともに名前に使われる字です。

■郎:右側のオオザトは、範囲を表わす記号と人が座る姿を描き、一定の場所、範囲を表わします。左側の「良」の古字は何を描いたのかが謎ですが、ものを洗う長方形のフルイとも考えられます。「長い」「より分ける」「まざる」「ぶつかる」などの意味をもち、またより分けられて質がいいという意味でも使われました。

「浪」(ぶつかる波)、「踉」(足がぶつかってよろめく)、「琅」(きれいな宝石)、「娘」(きれいな女性)、「狼」(群れをなすオオカミ)、「朗」(きれいな月)の字が作られています。

「郎」は、長く伸びることを意味する字と思われます。「廊」(長い通路)、「螂」(ウデの長いカマキリ)、「榔」(幹の長いヤシ)の字にも含まれます。

昔から家を存続させる跡継ぎを表わす言葉として使われ、やがて男性の名に多く入れられるようになりました。
 

【恋柱】甘露寺 蜜璃(かんろじみつり) 

『鬼滅の刃』登場キャラの名前の漢字成り立ち甘露寺蜜璃 

「蜜璃」で使われている漢字の成り立ち

■蜜:ウカンムリは屋根を表します。「必」の部分は断定できませんが、水のいっぱい入ったヒシャクの絵のようにも見え、「他のものが入らない」ということを表わし、「必ず」の意味で使われてきました。

「秘」(かくされる)、「密」(囲われて見えない)の字も作られています。

「蜜」はヤネと、必と、ムシを合わせ、ハチが巣の中でつくった液を表わします。

■璃:「王」はつないだ宝石の絵です。「离」は何を描いた絵かは確かではありませんが、鳥と捕獲用のアミである可能性があります。捕まえたり逃げたりすることから、「くっつく」「はなれる」の両方の意味があります。

「璃」の字は、ルリという宝石を意味しますが、いくつもくっついた形で産出することから「くっついた宝石」という意味で作られたと思われます。宝石を表わす字は、変わらぬ美しさを表現する名前に使われます。
 

【蛇柱】伊黒 小芭内(いぐろ おばない) 

『鬼滅の刃』登場キャラの名前の漢字成り立ち伊黒小芭内

「小芭内」で使われている漢字の成り立ち

■小:3つの小さいものを描いていて、繊細なイメージを表現する際に使われます。「雀」(小さいスズメ)の字にも含まれます。

■芭:上側はクサです。下側の巴は、人がものをつかむことを表わします。「把」(つかむ)、「肥」(肉で包まれる)、「琶」(つかんでもつ楽器)、「爬」(地面をつかんで歩く動物)の字に含まれます。

芭は取り巻いて縛ったような形の茎をもつバショウを意味します。

■内:覆いと、入る記号(入の字の古い形)を合わせたもので、覆われた中側を意味します。
 

【風柱】不死川 実弥(しなずがわ さねみ)

『鬼滅の刃』登場キャラの名前の漢字成り立ち不死川実弥

「実弥」で使われている漢字の成り立ち

■実:「実」という漢字は、屋根と田と容器を描いたものと思われ、家の中の容器に穀物が満たされていることを意味します。「たくさん」「多い」というイメージを表現するときに名前に入れられます。

■弥(彌):「弥」の右側「尓」の古い形である「爾」の成り立ちは謎ですが、組紐を描いた絵のようにも見え、「くっつける」「まとめる」ということを表わします。「璽」(くっつけて押す印鑑)、「邇」(近い)の字にも含まれ、禰豆子の「禰」の字にも入っています。

左側の「弓」は曲がることを表わし、「強」(弓を大きく曲げる)、「弧」(曲がった線)、「湾」(曲がった海岸線)などの字にも含まれます。

これらを合わせた「弥」は、大きくかこうこと、果てしなく広いこと、いつまでも続くことを意味します。阿弥陀(あみだ)の言葉にあてられています。

ちなみに名前では、ミよりヤと読まれることのほうが多く、「実弥」と書けば、ほとんどはミヤと読む名ではあります。
 

【岩柱】悲鳴嶼 行冥(ひめじま ぎょうめい)

『鬼滅の刃』登場キャラの名前の漢字成り立ち悲鳴嶼行冥

「行冥」で使われている漢字の成り立ち

■行:「行」という漢字は、交差点を描いた字で、「進む」を意味します。中の部分に他の絵を入れた、「街(まち)」「術(わざ)」「衛(まもる)」などの字も作られました。

■冥:「冥」の上側はヤネ、または覆いです。日は太陽です。六の部分は、ヤネとカベで囲まれた建物を描いたものと思われます。6つの面があることから6という数を表わす字として使われてきました。

冥は、囲まれて日が見えにくい状態を表わし、暗いことを意味します。
 

【蟲柱】胡蝶しのぶ(こちょう しのぶ)

『鬼滅の刃』登場キャラの名前の漢字成り立ち胡蝶しのぶ

『鬼滅の刃』登場キャラの名前の漢字成り立ち胡蝶しのぶ

アニメに登場する蟲柱「胡蝶しのぶ」の名前はひらがなですが、ここでは昔から「しのぶ」という名前で多く使われる「忍」という一文字の漢字について紹介します。

上側の「刃」は、刀の絵に短い線を加えていて、刃の部分を強調したものです。下側は心臓を描いていて、心のうごきを表わします。忍は刃をつきつけられたような、ギリギリの状態のところでとどまっている心を表わします。

以上、現役の柱の名前に使われている漢字の成り立ちについて解説しました。名前に使われている漢字とアニメのストーリーの関係性については、命名研究家である筆者が想像しても、無理なこじつけになるでしょう。例えば、「竈」や「炭」の字は、家の火を絶やさない象徴で、家を大事にする物語とつながるかもしれません。

また「〇ジロウ」という名は、ほとんどが「〇二郎」「〇次郎」という漢字を使っているなか、おさめる意味の「治」をあえて入れたのは、ただ敵を全面否定してせん滅するのではなく、相手の存在も認めるという物語とつながるかもしれませんが、本当のところはわかりません。名前で生き方を予測できないからこそ緊迫感のあるストーリーになる、とも考えられるのではないでしょうか。
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