元彼とのことを夫には秘密にする理由
タケシさんとのことをユリさんは夫に話していない。「話してもいいし紹介してもいいんだけど、夫の心が微妙に揺れたら嫌だなと思って。秘密というほどのことでもないんですけど、私の友人関係をすべて夫に話す必要もないというだけのことです」
やましい気持ちがあるから隠しているわけではない。それは本当なのだろう。ただ、邪推や嫉妬が夫の心に芽生えたら困る。それだけのことだとユリさんは強調した。
「タケシに対して恋愛感情はありません。ただ、恋愛感情の残滓みたいなものはある。それでお互いに優しく寛容になれるんだと思う。タケシが言ったんですよ。『ユリが本当に困ったとき、オレ、絶対に駆けつけるから』と。私も彼に対して同じような思いがあります」
昔の恋人だから、単なる男友だちとは違う。恋愛感情の残滓に火がつくことはないとわかっているが、自分の心の中でその残滓を愛おしがることはできる。それが優しさを生むとユリさんは微笑んだ。
「色っぽい関係になろうと思えばなれるんだろうけど、なったところで何も生まれない。もう終わった関係ですから。だったら友情を育てていったほうがおもしろい。私が30代だったら焼けぼっくいに火がつくこともあるのかもしれないけど、今はそれより大事な関係があるような気がします」
人とのつながりは広く深くオープンに
タケシさんの息子は現在、中学生。反抗期で困っていると聞いたとき、ユリさんは自らの体験を話した。お互いにそうやって「親」として助け合うこともできる。「職場の先輩が以前、40代後半になってから、かつての恋人たちが友人として戻ってきたと言っていたことがあるんです。なにげに自慢しているのかなと思っていたけど、こういうことだったんだなとわかるようになりました。もともとの男友だち、元カレの男友だち、みんな友だちでいいじゃない。今はそんな感じです」
夫の元カノと会ってみたいと思うが、夫はそれほどオープンな性格ではないので、様子を見ながら検討したいとユリさんは笑った。
人とのつながりは広く深くオープンであるほど楽しい。それに気づくことができるのは、40代後半、自らも人生経験を積んでからなのかもしれない。