人間関係

65歳以上の8人に1人が認知症の時代、それでも「親の介護はしない」と決意する40代女性の声(2ページ目)

厚生労働省の調査によると、65歳以上の8人に1人が認知症であることが判明した。こうなるといつ自分や夫の両親がそうなるとも限らない。実母が認知症の初期段階にある人、母の性格に耐えかね「面倒はみない」と決めている人のケースをみてみよう。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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40歳の決意「親より私自身の家庭が大事」

「ものすごくひどい言い方だし非難されてもしかたないけど、私は親に何があっても抱えこむことはできません。私自身の今の家庭のほうが大事だから」

きっぱりとそう言うのはマイさん(40歳)だ。地方でひとり暮らしをする母は70歳。数年前に同居していたマイさんの兄一家が家を出て行ってしまったのだという。

「母はわがままで他人の言うことを聞かない。実の娘である私でさえ高校を卒業と同時に家を出たくらいですから、義姉が我慢できるはずもないと思っていました」

義姉からはよくマイさんに電話やLINEがやってきた。母は近所の家を訪ねては「うちの嫁がごはんを食べさせてくれないから、ごはん一杯もらえない?」と茶碗を差し出すのだという。食べさせないわけがないと義姉は泣いていたが、マイさんは「それが母のやり方だから。早く別居したほうがいいよ」とアドバイスしていた。

「認知症というわけではないんです、母は。なぜかいつも不機嫌で、他人に意地悪するのが趣味みたいな人。冷静に考えれば、母にもいろいろ傷があるのかもしれません。父との仲もよくなかったから離婚に至ったわけだし。でも私が見た母は、いつでもネガティブな言葉で人を傷つけていた」

「ダメな子」「不細工」と母に言われ育った

小さいころから「おまえはダメな子」「おとうさんに似たんだね、不細工で」「頭も顔も性格も悪い」と言われ続けてきた。マイさん自身、高校時代にうつ病になったほどだ。高校卒業後、父を頼って上京、援助してもらいながら専門学校を卒業した。

「30歳のころようやく母の呪いから抜け出して結婚したんです。今の私にはすべてを知った上で、全部引き受けるからと結婚してくれた夫と、かわいいふたりの子が宝物。母に何があろうと私は面倒を見る気はありません」

兄一家は引っ越し先も告げなかったという。母はかつて、マイさんを「父親側に寝返った女」と批判したが、ひとりになった今はたびたび電話をかけてくるという。

「でも出ないんです、私。電話がかかってくる以上は元気なんだろうと思うから」

彼女の恨みは深いのだろう。それでも親子なんだから……などとはいえない雰囲気がある。

「今後、老いた母が動けなくなったら自治体につなげることはできるかもしれませんが、それ以上のことは私にはできない。そう言おうと思っています」

親子関係は他人にはわからない。マイさんが心の平安を保つために講じている術に、他者がとやかくは言えない。
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