特急のボックス席が取れず、夫はキレる
「うちも近場の観光地に2泊3日で行ったんですが、悲惨でした。夫は文句ばっかりだし、何もかもが私のせいになるし」憤りを隠せない様子で話してくれたマリエさん(43歳)。10歳のひとり娘と夫と3人で出かけたのだが、行きの電車の中から夫はすでに不機嫌だった。
「ギリギリで特急券を予約したのでボックス席がとれなかったんです。ふたりとひとりに席が分かれた。娘がふたりがけのほうに『ママと座る』と言ったのでそうしたのですが、夫は『誰が払ったと思ってるんだ』とブツブツ。うちは共働きだから、必ずしも夫の稼ぎがすべてではないんですが、それでも夫はいつもそういう態度をとる。はっきり言ってこなかった私も悪いんですが」
マリエさんは結婚後も「夫の理解のもと、働かせてもらっている」と認識していたそうだ。最近になって友人から指摘され、そこまで夫の顔色をうかがう必要はないと理解はしたが、長年の力関係を変える勇気は出ないまま。こういった家庭は案外多いのではないだろうか。
「夫を立てておけば平穏だということもありますから……。現地に着いて、まずは旅館に行って荷物を置き、レンタカーを借りていたので遊びに行くつもりだったんです。すると夫は『今日は疲れた。レンタカーはキャンセルしよう』と。娘はそれを聞いて泣き出してしまった。彼女は行きたいところがあったんですよ。
だから娘をがっかりさせないでよと小声で言ったら『おまえが連れていけばいいだろ』って。私はペーパードライバーに近いので怖くて無理。わかっていながらそういうことを言うから『お願いします』と言うしかない」
娘と一緒に夫のご機嫌をとるのは「うんざり」
いくらか機嫌を直した夫は、娘に「ごめんごめん、行こうね。パパ、疲れてるけど頑張って運転するから」と恩を着せた。「娘は『パパ、大丈夫? ありがとう』と抱きついていました。それで夫が満足ならよしとするしかない。いつもこのパターンだなと思いながらも、夫が連れていってくれるという形を壊せない。その後も、娘と私が夫にいちいち感謝しながら、なんとか無事に旅が終わりました。
正直言えば、もううんざり。娘のためにと思ってきたけど、今回、娘にも些細なことでいちいち感謝を求める夫を見ていたら、こうやって知らず知らずのうちに娘を洗脳しているのは私の責任も大きいのかもしれないと反省したんです。今後のことをもう少しちゃんと考えたほうがよさそうです」
いつもモヤモヤしていたものが、今回の旅行ではっきりとわかった。もう見て見ぬふりをしてはいけないような気がするとマリエさんは真顔になった。
「幼稚な夫」と割り切って付き合っていけるなら、それもいいかもしれない。だがマリエさんは「もう自分の許容範囲を超えている」と感じたという。娘のことを最優先しながら、今後を具体的に考えていくようだ。