人間関係

「カスハラが怖い」だけではない、現役バス運転士に聞いた「若手が運転士を回避する」理由(2ページ目)

路線バスは地域住民にとって不可欠な移動手段だが、運転士不足を理由に減便するケースもあるという。また、カスハラ(=カスタマーハラスメント)が怖いといって辞める人も。現役のバス運転士に話を聞いた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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カスハラで心折れ、休職から退職へ

運転士は、日々、イラつくことが多いとコウイチさんは言う。

「高齢者だけが動作が遅いと思われがちだけど、若い人でも多いんですよ。うちのバスは後ろ乗り前降りなんだけど、降りるときになってやっと財布を出してコインを1枚1枚つまみ出す人、
カードにチャージするなら乗車中の停止している時にと言っているのに降りる段になってチャージしようとしてお札をなかなか入れられないとか。

後ろに並んでいる人たちがイライラしているのを感じるから、こっちもイラつく。こういうのが積もり積もって、メンタルがやられていく運転士もいるんだろうと思いますよ」

実際、メンタルがもたなくなって休職から退職に追い込まれたのは、サヤさん(38歳)の弟のヒロシさん(36歳)だ。

「弟はトラックの運転をしていたんですが、生活を安定させたいと32歳でバスの運転士に転職しました。最初はバスは楽しいと言っていましたが、だんだん『お客さんが怖い』と言うようになって……。

特にバスが停止する前に立ち上がって転んでしまったお客さんがいて、ほんのかすり傷だったんですが『運転手さんのせいだからね』と言われたことでショックを受けたようです」

些細なクレームをつけてくる客は、どの業界でも問題になっている。前述のコウイチさんも、

「停留所から離れたところにいるからバス待ちの客じゃないと思っていたら、乗りたかったのに行ってしまったと会社に通報されたり。後ろ乗りに合わせて停止するんですが、前で待っていたから歩かされたと文句を言われたり。いちいち気にしていたらメンタルやられますから、その場で流すしかないんですが、それができないとつらいですね」

と言う。

「お客様は神様」と会社は言うけれど

ヒロシさんの場合、会社にささやかながらもクレームが入ると、会社から「お客様は神様なんだから」と注意を受けた。それが積み重なったところにお客さんが転んでしまったので、怖くなって会社に行けなくなった。

「弟はもともと繊細なところがあるから、気にしすぎたんでしょう。結局、会社は後ろ盾になってくれない。だったら独立したドライバーだったトラックのほうがよかったと、バスは2年で辞めたようです。子どもができたから安定した生活をと思っていたのに」

会社としてはケガ人を出した以上、注意をするのは当然なのだが、注意の仕方が問題だったのか、あるいはヒロシさんが過剰に反応しすぎたのか。責任感が強い人ほどメンタルは削られていくのかもしれない。

どんな客商売もカスハラに遭う可能性がある。どう対処するかを完全にマニュアル化できないところもあるだろう。今の時代、みんなイライラしているし、何かあればすぐSNSで晒されて叩かれる。だが、他人の命を乗せて走るドライバーのメンタルを守らない限り、客は安心して乗り物に乗れない。
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