脳科学・脳の健康

Q. 子どもの甲高い声が苦手で、うるさく感じてしまいます

【脳科学者が解説】「子どもの声」に関しては、トラブルの原因になったり、苦情から議論が起こったりと、しばしば問題になります。しかし、生物として子どもの声の質は非常に合理的なものなのです。わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q. 子どもの高い声が苦手で、うるさいと思ってしまいます

遊ぶ子供たち

かわいいはずの子どもの声。「うるさく感じる」人がいるのは、なぜ?


Q. 「子どもの声は、なぜあんなに高いのでしょうか? 親戚の子ども同士が集まって話しているだけでも、声の質自体が苦手です。うるさく感じて、気に障ります。子ども相手に、あまりイライラしたくないのですが、何かいい方法はないでしょうか?」
 

A. 子どもが「うるさく感じる声」なのは、生物としてまっとうな理由があります

数年前、横浜で「子どもの声がうるさい」と、小学校に包丁を持った男が侵入する事件がありました。そこまでの事件に発展しなくても、日常的な電車や飛行機の中などで「赤ちゃんの泣き声がうるさい」「子どもたちの声がうるさい」といった声はよく聞かれ、殺伐とした議論になることは珍しくありません。

なぜ、子どもの声が気になる人が多いのでしょうか? 実は科学的にも、赤ちゃんや子どもの声は、大人の声とは違い、大人には「甲高くうるさく聞こえる」ものなのです。子どもは「近くに散乱しやすい性質の声を出す」ものだからです。これには、生物学的な理由があります。

子どもの声質を変えることはできませんが、生物としての理由や仕組みが理解できれば、少しはイライラしなくて済むかもしれません。わかりやすく解説してみたいと思います。

そもそも声は、空気の振動によって生じる「音波」の一種です。その特性は、下図のように波の振幅と波長によって決まります。
音波,振幅,波長

音波の特性は主に振幅と波長で決まる


音波の「振幅」は、音(声)の大きさを反映します。一方の「波長」は、音(声)の高低に反映されます。具体的には、波長が短いほど、音は高く聞こえます。子どもの声が甲高く聞こえるのは、大人の声よりも、音波の波長が短いためです。そして、波長が短いということは、細かい波なので、空気中の様々な分子にぶつかりやすく、まっすぐに進みにくく、音源の近くで「散乱しやすい」という性質があります。甲高い子どもの声が近くで響くのは、音波の物理的性質を反映しているのです。

では、なぜ子どもは、そのような声を出すのでしょうか? それは、赤ちゃんや子どもが「未熟だから」です。まだ一人では生きていく力がないからです。そのため、必要なときに周囲の大人に自分の存在を知らしめ、助けを求める必要があります。子どもたちは意識的に高い声を出しているわけではありませんが、高い声を持っていることで、近くにいる大人に伝わりやすい声が出せ、必要なときに危険からより助けてもらいやすくなるのです。

そういった生き物としての合理的な性質を知れば、「うるさい」という気持ちが少しは薄れるのではないでしょうか。それに、私たち大人でも、誰しも、赤ちゃんや子どものときに、甲高い声を出して周囲に助けを求めてきたはずです。自分自身がやってきて許されていたことを、他人がやるのは許せないというのは、了見が狭いことだと筆者は思います。

成長とともに声は少しずつ低くなり、響きにくくなっていきます。子どもたちを温かい目で見守ってあげようではありませんか。
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